ゴールド、エクスタシー
「前の車のタイヤはまるで溶けたみたいにペシャンコだ」
と、ジョンRBは現金輸送車の中で揺られながらに、そう思った。
彼の乗る車は、約2トンもの現金、およそ400万ドルもの大金を運んでいる最中だった。
しかし、その車は、現金輸送車であるが、同時に現金強奪車でもあった。
それは、ジョンRB含め、16人ものギャングスター達が、スイス銀行から強奪した金を運ぶ、裏社会のドン御用達のクレイジービークル。
ジョンRBは、そんな大仕事に関われることに対して激しく高揚し、舞い上がってしまっていた。
メンバーの中で、最も若く未熟なジョンRBは、その日はあまりの興奮故に、彼は少しばかり理性というものを失っていた。
つまりは、正常ではなかったという事だ。
正常ではないという事は、異常という事であり、異常という事は現場においては緊急事態だ。
冷静な判断力の無い者は、いずれメンバーの足を引っ張る。
無知性の人間は、常に自分の利益しか考えていない。
現金強盗とは、究極のチームワークだ。
連携が上手くいかなければ、メンバー全員の命を危険に晒すこととなる。
それだけは絶対に避けたい。
そう思った、組織のメンバーたちは、容赦なくジョンRBを車内から路上へと、何の躊躇も無しに追い出した。
そして、突如として、渇いたハイウェイへと投げ出されることとなったジョンRBは、自らのその死の瀬戸際に対して、不本意ながらにこう思った。
すべてが憎い...... と。