【例題と解説つき】パンシェルジュ検定1級(マスター)に1週間の学習で一発合格した話
※ 本記事で掲載している問題は、テキスト及び過去問などを参考に作成した模擬問題です。
合格までの流れ
バックグラウンド
2019年から大手料理教室に通い始め、そこで初めてパン作りに出会いました。それ以来、趣味でパンを作るようになり、数年後には次第に仕事でもパンを作る業務(ベーカリーではない)に携わるようになり、現在に至ります。2022年にパンシェルジュ検定を3級(ベーシック)ではなく2級(プロフェッショナル)から受験し、100点中70点以上で合格のところを79点で一発合格しました。この時に費やした学習期間は2週間程度でした。
それから2年弱が経ち2024年に入って間もなく、パン作りを生業として続けている状況で、そろそろ級を上げないといけない頃なのではと思い、1級(マスター)の受験を決意しました。
試験前後のスケジュール
2024年2月中旬 テキストを買う
2024年2月下旬 何もせずにベッドの上でくねくねする
2024年3月上旬 さすがにやばいと思ってようやくテキストを読み始める
2024年3月中旬 試験当日
2024年4月中旬 結果が届く
テキストを買ってからというものの、綺麗にそれを自室に積み上げ、「明日から頑張る~」とか調子をこき続けて、直前期になって慌てて読み始めるという体たらくでした。最終的に学習に費やした期間は、1週間でした。
学習方法
テキストで学習した内容を集約したレジュメをWordで作成しました。テキストは全6章で構成されていて、1日1章のペースで、各章の内容をA4用紙1枚の片面に纏めていきました。ちなみに、両面ではなく片面にしたのは、その方が参照が楽だからです(両面にしてしまうと、裏面を見るためにわざわざ紙を裏返すという負荷の掛かる動作を行うことになる)。
レジュメの最後には、レポート問題の原稿も書きました。原稿は、一言一句を覚えるのではなく、採点者に伝えたいポイントを意識しながら、口頭でも自分の言葉で同じ内容が説明できるように覚えました。
こうして出来上がった計6枚のレジュメは、いつでも携帯して、隙間時間にどこでも眺めるようにしました。テキストを片手に一度に一気に覚えるのではなく、同じ情報を何度も繰り返し反復して目に入れることで、脳が「重要な情報だ」と勘違いして覚えていき、結果として記憶の定着率が高まります。
レポート課題
レポート課題については、公式のWebサイトやテキストに解答例や採点基準などの情報が掲載されていなかったため、展開や構成も含めて自分で最初から考える必要がありました。とは言っても、大きく分けて〈主張〉〈理由〉〈具体例〉の3部構成で論述すれば、どのテーマでも攻略できるのではないかと感じました。
提示されるテーマは3つですが、そのうちの1つは「レシピ開発」系のテーマであることが多いです。過去の試験を見てみても、形を変えて、あるいはまったく同じ形で何度も登場しており、今後も引き続き出題されることが予想されます。今回の試験では、「おすすめのサンドウィッチの具材」という趣旨のテーマが採択されており、私はこれを選択しました。
〈理由〉のセクションでは、単に「好きだから」「美味しいから」といった主観的な(opinion=人によって感想や評価が分かれる)理由ではなく、主に「栄養価」や「利便性」などの面から論じました。客観的な(fact=証明が可能な事実である)根拠を複数挙げられると、説得力が増します。そして、〈具体例〉のセクションでは、レシピを記述しました。レシピは、誰がこれを読んでもまず同じものが出来上がるような再現性を担保することを心掛けました。作りやすい分量で、材料をどのくらい使用するのかについてもg(グラム)や小さじ・大さじなどの分量の表現も用いながら、詳細に示しました。また、今回はそれほど凝った調理を要する具材ではないため、食パンだけではなく全粒粉パンやライ麦パンなど、パンのバリエーションに合わせた味付けのアレンジについても説明を加えました。
試験当日
試験会場に向かう途中の電車の中でも会場に到着した後の試験室の中でも、とにかくギリギリまでレジュメに目を通して最終確認を行いました。
結果
1級は100点中80点以上で合格ですが、89点で合格でした。受験後に公開された解答をもとに自己採点を行ったら、レポート課題を除く客観式問題の80点のうち71点(9問ミス)だったので、そこから逆算すると、レポート課題で18点を取ったことになります。
問題演習を通しての所感
”Bench Time”も飛ばさずに読む
テキストには”Bench Time”と称したミニコラムが、ページの随所に登場します。ただのおまけコーナーのような顔をしていますが、実際にはここに書かれている内容も、普通にちゃんと出題されます。そのため、テキストを通読する際には、読み飛ばさずにしっかりと目を通しておく必要があります。
以下は、”Bench Time”で紹介されている内容についての例題です。
正解は④です。駅伝フリークであれば難なく答えられるかもしれませんが、知らない人にとっては普通に迷ってしまう問題です。
正解は③”boulangerie”です。①”panetteria”はイタリア語、②”Bäckerei”はドイツ語、④”panaderia”はスペイン語です。一応、ヨーロッパ諸言語の初級レベルの学習者であれば容易に答えられる問題ですし、多くのパン屋が出店している現代でこそ②と③は聞いたことがある人も多いかもしれません。
正解は②です。米粉のカロリーは、小麦粉に比べて低いです。近年のヘルシー志向も相まって、カロリーの低さが米粉パン人気の一因になっているのかもしれません。
正解は①です。暗記が曖昧だと①と②で迷うかもしれません。ちなみに②のブルターニュは、「クイニーアマン」kouign amann や「ガレット・ブルトンヌ」galette bretonne の発祥です。
数字に気をつけろ
データや指標としての数字が記述されている箇所は、出題される傾向が高いため、確実に覚えておきたいところです。例えば、「2012年にロンドンオリンピックが開催された」という事実は、「ロンドンオリンピックが開催された年はいつか」などの形で問うことができます。数字が絡んでくる事項は、その数字を変えるだけで作問できてしまうという特質があるため、出題の格好の的になります。
正解は③です。テル・ムレイビト遺跡からはムギの粒だけでなく石臼などの道具も発見されており、このことから、既にこの時代には小麦を食すためにこれが製粉されていたということが想定できます。
これと併せて、小麦の最古の原産地であると推測されているイスラエルのジェリコ遺跡はが約8500年前の遺跡であることも確認しておきましょう。
正解は③です。くるみは約2/3が脂質であるためカロリーは高めですが、ビタミンEやカリウムなども含まれているため、適量を進んで摂取していきたい食材です。
なお、これは1級の内容になりますが、ナッツ類に含まれる脂肪分は体内では生成することが出来ない必須脂肪酸で、良質な植物性脂肪です。くるみにはコレステロールを下げるなどの効果があるリノール酸とα-リノレン酸が、アーモンドやヘーゼルナッツには悪玉コレステロール(LDL)の上昇を抑制するオレイン酸が含まれていることも押さえておきましょう。
正解は②です。HbA1cは、赤血球中の色素であるヘモグロビンのうち、糖と結合している割合を示す検査値です。つまり、血糖値が高い(高血糖状態により血管にダメージを与え続けている)と、それに比例してHbA1cも高くなります。HbA1cが6.5以上の場合には、糖尿病と診断されます。
この他にも、「パンと健康」の章では、栄養価の比較表、推定エネルギー必要量、BMIの正常値、食事バランスガイドのサービングなどの項も、よく確認しておきましょう(当然ですが、数字が絡んでいない内容も重要なので覚えること)。なお、HbA1cは、”Bench Time”で説明されている内容です。
正解は②です。小麦の栽培における年間降水量の限界は500mmです。つまり、年間降水量が500mmを下回ると、小麦などの栽培を行う畑作が困難になります。しかし、小麦は乾燥に対する耐性が比較的あるため、乾燥地帯でも灌漑設備を利用すれば栽培が可能です。
ちなみに、年間降水量が1000mmを下回ると、稲作が困難になります(コメが主にアジアで栽培され主食とされている理由です)。
正解は①です。家賃(とパン作りの敷居)は低ければ低いほど良いですが、せめて15%は超過しないようにしたいところです。
ちなみに、原価率は30%以下を目指し、従業員に対する経費は売上総利益の45%前後に設定するのが適正であると考えられます。
考えながらパン作りをしている人は強い
2級にも1級にも「パンづくりの工程」という章がありますが、普段からパン作りをしている人であれば学習しやすい範囲です。ただ、単にパンを作っているのではなく、製パンで用いる道具や材料の性質、操作や工程の意味、つまるところ、パン作りにおいて「何故それが必要なのか」という視点で考える癖がついている人は、はるかに理解度は大きくなりますし、問題の正答率も高いです。言うまでも無く、パンのレシピを独自に開発している人であれば、なおのことそうです。
答えは③です。生イーストは、文字通り乾燥させていない生の状態のイーストで、ドライイーストを使用したパンと比べて窯伸びと香りに優れているという特徴があります。しかし、生イーストは約70%が水分であるため、保存期間が2週間と短いというデメリットもあります。レシピによっては生イーストを使用しているものがあるため、ドライイーストで代用する場合には使用する分量を換算する必要があります。生イーストの代わりにドライイーストを使う場合は、レシピに記載されている生イーストの1/3量をドライイーストに置き換えます。例えば、9gの生イーストを使うレシピであれば、3gのドライイーストで代替すれば良いことになります。今回はこの逆を考えれば良いわけですから、3倍量が適正となります。数字絡みの事項でもありましたね。
答えは①です。テキストを読んでいなくても、イーストの性質やパン作りにでどのように扱えば良いかを知っていれば、消去法で導出できる問題です。
生地作りの段階においては、まずはイーストをしっかりと仕込み水に溶かすことが重要です。溶けきっていないイーストに油脂が触れると、イーストの表面に油膜が張ってしまい、どれだけ捏ねても溶けなくなります。
また、イーストにとっては、糖分である砂糖は「エサ」で、殺菌作用がある塩は「天敵」となる材料ですから、理論上では、これらをボウルに入れる際にはイーストと砂糖を互いに近い位置に、そして塩を離れた位置に入れるのが望ましいです(ただ、仕込み水を加えてしまえばイーストも砂糖も塩もすぐに水に混ざって溶けていくため、実際にはイーストと塩を離しておくことの重要性は低く、あまり意味が無いとする見方もあります)。
以上のことを知っていれば、②と④は誤りであり、また、イーストと塩を互いに離すのであればまだしも、③のように砂糖と塩を互いに離すのはナンセンスであり、正しい操作を説明しているものは①であると判断できます。
答えは③です。この問題も、テキストを読んでいなくても、食パンを含めた様々な種類のパンを作っていれば、経験則で答えをひとつに絞れます。
①は温度が低すぎます。白パンなどの、あまり生地の表面に焼き色を付けたくない時の温度設定です。②は焼成時間が短すぎます。丸パンなどの体積が比較的小さい生地であれば、生地の表面から中心までの距離が短いので、15分も焼けば十分でしょう。しかし、食パン型などの大容量の型に入れた生地だと、15分程度では中心部まで火が通らず、生焼けになってしまいます。④は焼きすぎ。220℃以上となると、普通はバゲットやカンパーニュのようにハード系のパンに仕上げたい時の温度になりますが、ハードトーストにしたいのであればこの温度でも構いません。問題は、220℃という高温に対して35~40分という焼成時間の長さ。こんなに焼いてしまうと、クラスト、特に上部は真っ黒に焦げてしまうし、クラムは水分が飛びすぎて食感がパサパサになります。
答えは③です。この問題は、実はベーグルの作り方を知っていれば正答が導けます。
ベーグルは生地を焼成する前に「ケトリング」(英 kettling)と呼ばれる工程を経ます。ケトリングとは、モラセス(糖蜜)や蜂蜜を加えた90℃前後の熱湯で生地を茹でることです。生地を茹でることで、表面部分がでんぷんの糊化(α化)により硬化し、これが焼成時の生地の膨らみを抑え、もちもちとした食感の詰まったクラム(内相)とバリッとして艶のあるクラスト(表皮)に仕上がる原因になります。
さて、ケトリングでは熱湯を使うわけですが、水は1気圧下では温度は100℃までしか上昇しません。また、でんぷんの糊化(α化)は70℃前後以上で起こります。これらを知っていれば、150℃になって糊化(α化)が開始するという選択肢は不適であると判断できるはずです。
答えは③です。ハード系のパンを作ったことがある人ならすぐ分かるでしょう。多くの人は、ハード系の生地にしたい場合には、生地作りの段階で砂糖を加えずにモルトパウダーを加える人が多いと思います。
①の蜂蜜は、糖の中でも単糖類に分類されるものです。上白糖などの二糖類と比べて保水性が高く、パン生地に加えることでしっとりとしたテクスチャーが増強すると考えられています(個人的には食パンの生地に加えるのがオススメ)。②のホップと言えば、大半の人はビールを思い浮かべるかもしれませんが、パン酵母の一種として液種に培養して使われることがあります。④のビタミンCは、だれやすいフランスパンの生地を引き締めてガスの保持力を強化する(その結果として、焼成時の窯伸びが向上する)働きがあります。レシピによっては生地にごく少量のレモン果汁を加えているものがありますが、これは前述の効果を狙ったものです。
ちなみに、インスタントドライイーストのシリーズのひとつである「青サフ」は、ビタミンCが添加されていない(「赤サフ」からビタミンCを除去した)インスタントドライイーストで、製パン上級者向けのアイテムです。
答えは③です。バゲットやリュスティックなどのフランスパンを普段からよく作っている人であればすぐに答えられます。
フランスパンの生地は、1次発酵後に成形をし、畝取りをしたキャンバス地に乗せ、常温で最終発酵に掛けます。発酵器やオーブンに入れての焙炉(ホイロ)は、ないわけではないですが、メジャーな方法ではありません。この問題では、常温と看做される温度帯が記述されているものを選べばよくて、解答を導くためにわざわざ湿度や時間などのパラメーターまで見る必要はありません。常温と言うには①は寒すぎ(冬か?)、②は涼しすぎ、③は暑すぎ(夏か?)です。
答えは④です。クロワッサンの要となる材料であるバターの性質を理解しているでしょうか。可塑性やショートニング性も抑えておきたいところですが、ここで知っておくべきポイントは融点です。
バターの融点は28℃前後です。1次発酵は自然発酵でもオーブン発酵でもどちらでも構わないと思いますが(テキストでは湯煎での自然発酵の方法を採っています)、いずれにせよ、1次発酵から上がった生地の温度は、バターの融点に近いかそれ以上です。まだ温かい状態の生地でシート状の冷えたバターを包んでしまうと、あっという間にバターが溶けてしまい、ほぼ確実に、折り込み(ロールイン、フイユタージュ)に失敗します。バターの折り込みを行う際には、冷やしたバターシートが溶けないように、まずは生地の温度を下げる必要があります。使う材料の特性を知っていれば、各工程の操作の意味がより理解できるはずです。
①は、仕込み水を残しておくべきで、この時点で小麦粉を残しておく準備は意味不明です。②は、最悪の工程です。愚行です。人間は愚か。固形油脂を投入するタイミングは、イーストが仕込み水に完全に溶けてから、あるいは、生地がほとんど繋がってひとまとまりになるまで捏ねてからになります。③は、1次発酵の時間が10分ではあまりにも短すぎます(ベンチタイムと同じぐらいの時間しか取っていない)。
答えは④です。生地を入れるための籐で出来た発酵籠を「シンペル」と言います(ドイツ語であるとされていますが、私の調べた限りでは語源が見当たらず、詳細は不明です)。「コルプ」(独:Korb)や「バヌトン」(仏:banneton)とも呼ばれ、バヌトンと言うと内側に布が張ってあるものを指すことが多いです。ひとつで数千円は下らない高価な道具なので、麻布を敷いたボウルで代用する人もいます。実はこのシンペルは、キャンバス地と同じ効果を発揮する性質を持ち合わせています。
フランスパンの生地は、キャンバス地に乗せて二次発酵させますが、この時にキャンバス地がパン生地に含まれる余分な水分を取り除いてくれるので、焼成すると外側がバリッとした焼き上がりになります。キャンバス地を使わなくても一応は作れますが、完成品のテクスチャーには差が生まれてきます。シンペルについても、これと同じ効果を発揮してくれます。キャンバス地とシンペルはどちらも、大きな柔らかいパン生地の形を保ちながら、通気性と吸湿性に優れているという性質を活かしてパン生地の余分な水分を取り除いてくれるという共通の利点を兼ね備えているのです。
ちなみに、②の「生地の火通りが良くなる」は、生地に深いクープを入れた場合に期待される効果です。
見たことがないものは画像を検索する
馴染みのない固有名詞を言語だけで操作する、つまり、見たり食べたりといった体験を伴わない学習は、記憶に残りにくく定着しにくいです。例えば、「『ドレッジ』は、製パンの時に生地を切ったり移動させたりするために使われます」と言われて、「ドレッジ」を見たことも触ったこともない場合と使ったことがある場合では、明らかに後者が「ドレッジ」が何たるかを知覚しています。
未知のシニフィアン(仏 signifiant:記号表現)に遭遇した時に、単にそのまま詰め込むだけで、そのシニフィエ(仏 signifié:記号内容)と連結できなければ、知識として使い物になりません(念のために言っておくと、今は「シニフィアン・シニフィエ」の屋号を冠したベーカリーの話をしているのではありません)。テキストの学習中に知らない単語に出会って、それが何たるかを具体的に想像できない場合は、Googleなどの検索エンジンの画像検索を活用して、写真を確認してみましょう。
正解は③です。マネケン manneken に訪れたことがある人であれば即答できる問題です。もし、マネケンを知らない、聞いてもピンと来ないという方は、Googleの画像検索で「マネケン」と検索してください。ベルギーワッフルの写真が一面に表示されるはずです。ちなみに、④のミニクロワッサンは、DONQ(ドンク)のブランドであるMini One(ミニワン)が有名です。
正解は④です。ナパージュ(仏 nappage) は、透明あるいは黄色み掛かった半透明のゲル状の液体になっています。ナパージュを買ったり使ったりした経験があれば、①②③の原材料で作られているとは到底考えられないはずです(もし①②③が原料として使われていれば、色は透明にならずに混濁を呈するはずです)。「ナパージュ」と言われてもそれが何なのかが分からなければ、画像を検索してみてください。どんな色をしているでしょうか。
正解は②です。①は底のある円形、③はリング形、④は背の高い円筒形です。それぞれの選択肢を見聞きして、どのような型であるかをイメージできるでしょうか。思い浮かばなければ、画像を調べて覚えましょう。
正解は②です。この黒土は「チェルノーゼム」(露:чернозём)と呼ばれ、有機質が多く含まれており、水分保持能力や栄養分が豊富な、肥沃な土壌です。Googleで「チェルノーゼム」を検索すると、黒色を呈する土の写真が表示されます。しっかりと黒いです。
外国語の知識が役に立つ
パンシェルジュ検定においては、外国語の知識は大いに役立ちます。英語はもちろんのことですが、特にヨーロッパの主要言語、具体的にはイタリア語、ドイツ語、フランス語の知識があると、かなり助かります。Eテレの語学番組などで複数の言語に普段から触れていたり、大学で新修外国語として既習しその素地を持ち合わせていたりする人にとっては、テキストで学習を進めていく際に内容をスムーズに理解できたり、問題を解答する際により高い精度で正答が選択できるようになるという点で、相当なアドバンテージとなります。
答えは②です。英語のイディオムで”make ____ from scratch”(~をゼロから作る)という表現があります。これを知っていれば、学習の際に「スクラッチ方式」が意味するところをすぐに把握できます。
答えは③です。”crease”(折り目)という英単語を知っていれば導出が可能です。ファッションの分野では、スラックスなどのパンツに付いた折り目のことを「クリース」と呼びます。ちなみに、②はフランス語の”coupe”で「切れ目」を意味し、「クープナイフ」と呼ばれる剃刀のような道具で焼成前のパン生地に切り込みを入れることを意味します。
正解は①“panettone”です。イタリア語は開音節言語(単語の音節が常に母音で終わる言語)です。言語学に触れたことが無くても、イタリア語に少しずつ触れていく中で「『アイウエオ』の音の癖がやたらと強いな」という印象を抱いていれば、①に絞れそうな気もします。
②“Stollen”はドイツの伝統的な菓子パン、③“kouglof”はフランスのアルザス地方を発祥としてオーストリアやスイスでも見られる菓子パン、④“roscón de Reyes”はスペインでクリスマスに食される伝統的なリング状の菓子パンです。ちなみに、①は母音の[ e ]で、②③④はいずれも子音の[ n ][ f ][ s ]で終わっています(「母音で終わればイタリア語である」ではなく「イタリア語であれば母音で終わる」ですので、必要条件と十分条件を間違わないように注意してください)。
正解は①(ペルシア語)です。②は「火で焼いたもの」を意味するイタリア語の”focaccia”、③は「球」を意味するフランス語の”boule”、④は「小さいパン」を意味するドイツ語の”Brötchen”です。それぞれの意味が分からなくても、ヨーロッパの諸言語に触れていれば、言語と国を推定して消去法で解答することが可能です。もっとも、フォカッチャもブールもブレッチェンも、パンが好きでパン屋巡りを趣味としている程の人であれば、言語学的な知識と関係なく知っているかもしれませんが……。
正解は④です。「クロックムッシュ」croque-monsieur 自体を知らなくても「ムッシュ」がフランス語であると気付ければ、それだけでも正解を選べます。「クロックムッシュ」が何なのかが分からなければ、ついでに検索して写真を確認しておきましょう。ちなみに、「クロックマダム」croque-madame というバリエーションも存在します。
正解は②です。①はイタリア語の”grissini”、③はフランス語の”pain d'épices”(「スパイスのパン」という意味)、④はドイツ語の”Brezel”です(日本では「プレッツェル」と表記されることが多いが、より忠実な発音としては「ブレーツェル」と言ってほしいところ)。「アフタヌーンティーと言えばスコーン」という連想は、「お正月と言えばおせち」ぐらいに当たり前のもので、問題としてもかなり簡単な部類であるため、即答できてしまいます。それでも、ヨーロッパ言語を知っていれば確実に正答を選ぶための、自分の身を助けてくれるヒントになり得ます。
正解は②です。冷静に考えて、料理とパンの相性を考える際には、奇を衒った斬新さを狙わない限り、基本的には互いに同郷のものが合わせられるはずです。この問題ではイタリアの料理に合わせたいのですから、イタリアのパン、つまりイタリア語のみが書かれている選択肢を選べばいいわけです。
①はフランス語”coupé”とドイツ語”Pumpernickel”、②はどちらもイタリア語の”focaccia”と”ciabatta”、③はフランス語”flute”とイタリア語”grissini”、④はドイツ語”Brötchen”とイタリア語”rosetta”です。①はどちらもイタリア語ではない時点でドボンなので、選んだら最悪です。
正解は①です。サルティンボッカという名前はイタリア語で saltimbocca と書き、”salt”(飛び込む)、”im”(~中に)、”bocca”(口)という語から構成されています(フランス語だとそれぞれ、”saute”、”dans”、”bouche” になりますが、綴りが何となく似ていますね)。そして、サルティンボッカに使われるハーブは、セージです。ローズマリーは、南仏料理のラタトゥイユなどに使われます。サルティンボッカの写真はテキストにも掲載されていますが、ぜひ画像検索でも調べてみてください。
ちなみに、④のバーニャカウダ(bagna càuda)は、「熱いソース」という意味です(「バーニャ」が「ソース」、「カウダ」が「熱い」)。
正解は②です。そもそも「ファイゲヌス」とは、いちじくを意味する「ファイゲン」”Feigen”とナッツを意味する「ヌス」”Nuss”を組み合わせた語ですから、②以外はあり得ません。ただ、個人的には、より正確な発音と表記である「ファイゲンヌスブロート」”Feigen-Nuss-Brot”を公式テキストには採用してほしかったところですが……(Googleで「ファイゲヌス」や”Feigenuss”と入力して検索しても、当該のパンはまずヒットしません)。
正解は③です。遺伝子組み換え作物は英語で Genetically Modified Organisms(直訳すると「遺伝子的に修正された有機物」)と言い、これのイニシャリズムでGMOと呼ばれます。略語が出てきた際には、それが何の略なのかを調べておくと、より覚えやすいです。
ちなみに、①は body mass index(ボディマス指数)、②は Food and Agriculture Organization of the United Nations(国連食糧農業機関)、④は Trans-Pacific Partnership(環太平洋パートナーシップ)です。
おわりに
パンシェルジュ検定の1級を取得しましたが、学習から合格まで、それなりに楽しんでやることが出来ました。この検定自体が測定するものは、「パンについてどれだけ理解しているか」というよりも、「パンにまつわることについてどれだけ精通しているか」になっているように思えます。
パンシェルジュ検定では、パンの製法以外にも、歴史や文化、健康や衛生に関することなども含めて総合的に学ぶ必要があります。具体的には、2級では「コーヒー、紅茶、ワインなどの飲み物とのコンビネーション」、1級では「経営」や「サービス」といった、パンとの直接的な関係がやや希薄な事柄が登場します。内容としては確かに興味深いのですが、純粋にパンそのものに対する理解を深めたい人にとっては、「なんでこんなことまで勉強しないといけないのか?」と疑問に思うかもしれません。そのため、パンについての知識を問う試験で果たしてこれらの事項が少なくない割合で出題されても良いのか、という気持ちは多少あり、あります。
しかし、パンシェルジュ検定というものが、私たちが日常生活、引いては仕事の中でパンという食品に少しでも携わることになる、というところまで射程に入れ、この理念を元に設計されている以上、一見するとパンとはあまり関係のないように思える事柄にも目を向けることの重要性をメッセージとして伝えているのではないかと思います。私たちが、単にパンのことだけでなくパンにまつわることについても知ることで、パンを基軸としながら俯瞰的に、立体的に、複眼的に、私たちとパンの間にある様々な関係性について考えられるようになる ―― やや大袈裟に聞こえるかもしれませんが、パンシェルジュ検定に臨む際には、そう考えれば良いのではないかと思っています。
履歴書には、書いて良いと思います(私は書いています)。
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