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退職を決めた部下への対処法
部下が辞めたい(退職したい)と言ってきたとします。
どう対処しますか?
もちろん、辞めてくれてよかった…という気持ちがあるのならば、悩む必要はないですよね。
では、辞めてほしくない人材なのだとしたら?
そういう人材なのだとしたら、おそらく優秀な部下なんでしょうね。
はっきり言います。
優秀な部下が出した決断ならば、今の職場は彼にとって、能力に見合うレベルの職場ではなかった…
優秀な部下が、実力を発揮してやりがいを感じさせてあげられるだけの職場づくり、組織づくりができていなかったのだと上司は反省すべきです。
とはいえ…
今後のことも考えると、部下を手放したくない…
では、どう声をかければいいのでしょう?
結論から言うと、プロ野球選手のような古典的な一方的雇用関係にある業界でさえ、辞める自由は認められています。
つまり、辞める権利は、あらゆる雇用形態でも認められている自己決定権です。
なので、本人の決意をコントロールしよう…などと考えることは論外です。
じゃあ、慰留説得すべきじゃないのか…というと、そうでもないと僕は思っています。
僕は退職を決断した人の心理のほとんどは、新たなやりたいことが見つかった、別の夢がある…という方も含めて、今のポジションに“居場所がない”あるいは“居場所じゃない”と感じていることが共通項じゃないかと思っています。
これは自分では気づいていないことも多く、「向いていないから」「妻が辞めろというから」「他にやりたいことがあるから」「給料が安いから」「休みが少ないから」など、いろんな理由を言いますが、深層には、“居場所なし”にいきつきます。
これに気づかず、言葉のままに受け止めている上司も多いです。
それから、
まれに数%は、できれば辞めたくないけど辞めざるを得ない
大好きで離れたくない職場だけど、それ以上に魅力があることがある
という方も当然いるとは思いますが、そういう方には、もはや応援するしかない!と諦めるだけです。
さて
だとすれば、そのマジョリティの退職表明者に対して、どう対処するか…
それは自尊心をくすぐることです。
職場にとって、組織にとって、あなたはどれほど貢献しているのか、
あなたがいることによって、どれぐらい助かっているのか
どれぐらい必要とされてきたのか
そして、それは本人のどういう能力が優れていたからなのか…
これを上司が語ることです。
もちろんその能力とは、部下自身がプライドとしている、自信を持っていると思われることでないと意味がありません。
存在意義が感じられると、人はそこにいたくなるんです。
なぜなら
居心地がいい
から。
存在意義(存在価値といってもいい)とは、自分を認めてくれていると感じられることです。
自分が自信を持っていること、こだわっていることを認めてくれていると感じられることです。
無意味なのは、「あなたがいなくなると残念だ」、「寂しくなる」、「もっと一緒に働きたかった」…などといった情に訴えるような説得をする人がいますが、これはダメです。
これは、感動はするかもしれませんが、自尊心をくすぐりません。
なぜなら、他人の感情が寂しかろうが、残念がろうが、自分にとってはなんのメリットもないからです。
こうした情に訴える言葉は、友だちや同僚がすべきであって、上司の言葉としては薄っぺらく感じられるので注意しましょう。
また、退職した後、どんなことをしようと考えているのか、何がしたいのか…をしっかりと聴いてやるということも大切です。
退職を決意したということは、なかなかの覚悟のはずです。
つまり、そこに至るまでにたくさんの不安や悩みを乗り越えた思考過程があったはず。
これは、聴いてくれると嬉しいはずです。
言いたいはずなんです。
上司が、自分のことをやっと真剣に聴いてくれた…
この経験が、心を動かすきっかけになったりするものです。
もちろん、本人に退職を決意させるまでに、本人の異変に気付いたり、いやその前から、日常的に部下の話を聴き、承認する関係性をつくっていれば、“居場所を奪う”(と感じさせてしまう)ことのリスクヘッジにはなっていたはずです。
いずれにしても、最終判断は本人自身なので、自己決定権を奪うものであってはいけないし、考えを正そうとすべきではありません。
ですが、去ってもらうにしろ、気持ちよく分かれたいし、退職後もパートナー関係をつくったり、ここで働いたことを後悔してほしくはないですよね。
そのためにも、誠実に部下に向き合うこと、誠実な向き合い方をしてあげてほしいと思います。