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羊羹と谷崎潤一郎

最近、羊羹にハマっています。
理由は安価で脂質が低くて美味しいから。なんといってもあんこが好きな私にぴったりです。冷やしても超美味しい。
スーパーなら1本(10個分)で200円程度だったり、コンビニでも100円以下で買えます。ありがとう。

■羊羹(100g)
・エネルギー 107kcal 
・タンパク質 1.96g
・脂質 0.12g
・炭水化物 25.44g

https://calorie.slism.jp/201571/  より


そして羊羹と共にイメージされるのは、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』です。
私は高校の授業で習い、当時は衝撃でした。取り扱ってない学校も多そうですよね(知らない)。

かつて漱石先生は「草枕」の中で羊羹の色を讃美しておられたことがあったが、そう云えばあの色などはやはり瞑想的ではないか。

玉のように半透明に曇った肌が、奥の方まで日の光りを吸い取って夢みる如きほの明るさを啣んでいる感じ、あの色あいの深さ、複雑さは、西洋の菓子には絶対に見られない。 クリームなどはあれに比べると何と云う浅はかさ、単純さであろう。だがその羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。

人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』

https://www.aozora.gr.jp/cards/001383/files/56642_59575.html


こちらの食器の話も好きです。
当時の現代文の先生は「私の家は山崎春のパン祭りの皿ばかりですが、それでは良さがないということなんだよね~」などと言って笑った記憶があります。

事実、「闇」を条件に入れなければ漆器の美しさは考えられないと云っていゝ。今日では白漆と云うようなものも出来たけれども、昔からある漆器の肌は、黒か、茶か、赤であって、それは幾重もの「闇」が堆積した色であり、周囲を包む暗黒の中から必然的に生れ出たもののように思える。
(中略)
つまり金蒔絵は明るい所で一度にぱっとその全体を見るものではなく、暗い所でいろ/\の部分がとき/″\少しずつ底光りするのを見るように出来ているのであって、豪華絢爛な模様の大半を闇に隠してしまっているのが、云い知れぬ餘情を催すのである。
そして、あのピカピカ光る肌のつやも、暗い所に置いてみると、それがともし火の穂のゆらめきを映し、静かな部屋にもおり/\風のおとずれのあることを教えて、そゞろに人を瞑想に誘い込む。もしあの陰鬱な室内に漆器と云うものがなかったなら、蝋燭や燈明の醸し出す怪しい光りの夢の世界が、その灯のはためきが打っている夜の脈搏が、どんなに魅力を減殺されることであろう。

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』

日本の魅力を見事に言語化した作品で、なんだか官能的でもあります。
こちらのサイトで全文見れます。ありがたい。


みなさんも羊羹、久々に食べてみてくださいね~


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