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20210506


全然書いていないけれど、その間ももくもくと本は読み続けている。読んで、読んで、週末は散歩して、そういう風に今は生きている。
誕生日の三日前に目の調子がおかしくて眼科へ行き、一日三回目薬をさしている。誕生日の前日は年に一度か二度くらい起こる猛烈な胃腸の崩壊で嘔吐し、誕生日当日は粥を食べた。落ち着いたらケーキを、と話していたけれどいまだに食べていない。誕生日は結婚記念日でもあり、更に今年は五周年だというのに、これだ。大厄だから仕方がないと思っている。

小川洋子『人質の朗読会』を読んだ。私は小川さんの、現実と非現実の絶妙な間が大好きだ。小説はもちろんフィクションだけど、100パーセントの妄想文ではない。けれどそれがあまりに現実すぎると嫌になるし、非現実すぎるとつまらない。その絶妙なところをすくってくれる。知ってる部分と知らない部分があって、知らない部分もなんだか親しく感じて、よく見える。知らないのに知ってるような鮮明さを感じる。

人が死ぬことは当たり前で、いつもどこかで誰かが死んでいて、自分も自分の親しい人もそれは同じことなのに、そういうことは忘れてしまう。ニュースにならない悲しいことやおかしいことが溢れていることもわからない。SNSでバズることが全てみたいな、狭くて浅い視野と世界になんとなく馴染んでしまうのは本当に気持ち悪いことだなと思う。

小川さんのお話は、ちょっと変わったことが起きたり、変わった人が出てきたりするけれど、でもそれは当たり前のことが当たり前に起こっているだけなんだと思う。尊い奇跡を書いているのではなく、普遍的なものを書かれているような気がする。それがとても安らかな気持ちになる。

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