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【ネタバレあり】映画『サユリ』を観た

『サユリ』は『ハイスコアガール』で有名な押切蓮介が手掛けたホラー漫画作品だ。

『ミスミソウ』を読んだ人なら、その陰惨で救いのない世界観に既に触れているだろう。

『サユリ』も例に漏れず、主人公である神木則雄は新居に引っ越してきただけなのに、よくわからない幽霊に惨たらしく家族を殺される。

認知症の祖母と本人以外、誰も助からない。

わたしは『サユリ』の原作本を読まずに、
今回の監督を務めた白石晃士の映画作品『カルト』を観ただけだ。

同監督の作品は過去にいくつか観ているけれども
彼の独特なテイストには予算の制約か、どこかチープな印象がある。恐怖よりもコメディに近いという感想を持つことが多かった。

なので、今回の映画化で予算を与えられた『サユリ』はどうなってしまうのだろうと
半分不安、半分ワクワクして挑んだが、
見事に白石節が盛り込まれた作品に惹き込まれて喜怒哀楽のすべてを味わい、泣いて劇場を出た。

「そんなはずじゃなかったのに」とハンカチで顔を覆った。

あとから原作本を読んで分かったが、映画版は大幅に改変されている。

昨今、原作の改変は最悪な結果に終わることが多かったのだが、今回は大成功だと言い切りたい。

映画版では父親に性的虐待をされ、
母親には見て見ぬふりをされたサユリは
虐待の対象から外れるために暴飲暴食を重ねて
美しかった見た目を捨てた。

父親に触られた髪の毛はハサミで切り落とした。

家族に殺されて怨霊と化したという筋書きは変わらないが、原作本では引きこもりで家庭内暴力を振るうサユリという設定に対して、怨霊となるのに十分な説得力を与えたのは、映画版だと思う。

あれやこれやの展開で最終的に、サユリは家族への復讐を果たすが、神木家の祖母と孫からも復讐され、怨霊の姿から本来の少女の姿に戻る。

そこにはただただ泣きじゃくる
可愛い女の子が居るだけだった。

殺された神木家の家族に引き取られるようにして姿を消すのがなんとも言えず、自覚は無かったがサユリの境遇への感情移入が激しいことに後から気付いた。

予告編ではババアが覚醒して『貞子vs伽椰子』(これも白石監督作品)よろしく、化け物には化け物をぶつけんだよ理論で怨霊を叩き潰すという筋書きしか思い浮かべてなかったので、本当に泣いて劇場を出ると1ミリも想定してなかった。

映画自体は白石監督作品だけれども、
原作は冒頭に書いた通り押切蓮介作品なのだ。

ただのコメディに収まるわけ無いのだ。
甘かった。本当に甘かった。

自身の環境をサバイバルするために無理をしてでも食べるサユリ。

「生き残るには無理をしてでも笑え、食べろ、そして寝ろ」と太極拳を指導する祖母と特訓する孫。

サユリには悲しみと怒りでしか自分を守ることが出来なかったが、祖母と孫には厳しい環境ながらも「笑い」があった。

そのポジティブさと命の輝きで打ち勝ったと思う

まあ、何事も立ち向かうためには「笑って食べて寝る」のは、なにも化け物相手に限らない。

我々に必要なのはそういった基本的なところからなのだ。

日々意識しているのになかなか実行しきれていない、自身へのメッセージのように受け取った。

普段はこのような文章を書いたりしないのだけれど、最近思うことがあり自分の言葉で感想を書いてみたかったので、素晴らしい作品に出逢えて幸運だったと思う。

ありがとう白石監督。
ありがとう押切先生。

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