能登に向かって|石川旅行記⓪
そろそろ、能登に旅行をした時のことを書こうと思う。
今まさにこれを書いている時、石川県には「大雨特別警報」が発令している。すべての人の無事を祈る。
前述の「能登旅行前夜」からちょうど1週間が経った9月6日(金)、私は再び能登に向かうため、始発の電車へと乗った。台風10号は消滅し、天気は良好だ。前回よりは眠れており、体調もいい。
★今回やりたい事
今回の旅でやりたい事を話しておこう。私は、毎回旅行をするとき、これは!これだけは!やりたいという事を事前にリストアップしておく。
以下が今回のやりたいことリストだ。
・行ける能登まで行く。現在気ままに行けるとこまで。
→目的地は「穴水」 のと鉄道をつかって!!!
・和倉温泉につかる。
・金沢おでんを食べてみる。
・優雅に兼六園を見てまわる。
・金沢21世紀美術館に行く。
★なぜ能登に行きたいのか
そもそもなぜ能登に行きたいのか。リストの下3つを叶えるためには、金沢で話がつく。金沢から能登半島へと北上するには、追加でお金も時間もかかってしまう。それでも能登に行きたいのは理由があった。それは聖地巡礼をしたかったからだ。振り返れば、私が今まで計画した旅行はどれも聖地巡礼的な旅行だ。今回も例にもれず、聖地巡礼が大きな軸となっている。
今回の旅行のきっかけとなったのは以下の2冊だ。(敬称略)
・『スキップとローファー』高松美咲
現在『月間アフタヌーン』にて連載中 ↓アフタヌーンの公式サイトより
・『恋文の技術』森見登美彦(2009)ポプラ社
『スキップとローファー』と『恋文の技術』
2冊を今回の旅行に即してとても簡単に紹介させていただく。2冊に共通するのは、どちらも舞台として能登半島が登場するという点だ。『スキップとローファー』では、主人公「岩倉美津未」の出身地である「鈴市凧島町(いかじまちょう)」として(実際は、珠洲市蛸島町)、『恋文の技術』では、主人公の「守田一郎」がクラゲ研究を行う実験所がある場所(実際の、能登鹿島駅の近く)として、それぞれ能登半島は登場する。
私と『スキップとローファー』の出会いはアニメだった。普段見ないタイプのアニメだったが、ストーリーやセリフ、加えて、黒沢ともよさんをはじめとする声優さんたちの名演もあり、ものすごくはまってしまった。全体としては3周、部分的には何周もした。その後、漫画を久しぶりにTUTAYAで借りて9巻まで読み、10巻は(本当に気持ち程度に過ぎないのだが)能登半島地震応援版を購入し、ページをめくった。登場人物のセリフや表情1つ1つに気持ちが揺さぶられ、痛みを共有したり、ここは共感できないなと思ったり、とても読むのが楽しい。アニメもマンガも気づいたら自分にとってとても大切なものになっていた。
上記の通り、作中には珠洲市をモデルにした場所が登場する。その場所で、美津未たちの見た風景を自分も観てみたいと思ったのが、そもそものこの旅の発端だ。この「珠洲(すず)」という地名、もしかしたら聞いたことがある人が多いかもしれない。それは、おそらく1月に起きた地震の影響だ。ニュースで何度も、大きな被害を受けた地域としてその名が読まれた。珠洲市をはじめとした能登地域は今回の地震で甚大な被害を受けた。結論から言えば、計画の段階で珠洲市に行くことは断念した。バスや宿泊施設の状況を鑑みると、観光としていくのは難しいと考えたからだ。1度はボランティアとして訪れることを考えた。石川県の用意するフォームから災害ボランティアの事前登録をし、珠洲市への災害ボランティア派遣の情報を集めたり、ボランティア活動に必要な道具や服装を調べ活動の準備をしたりした。珠洲市のボランティア派遣へは、金沢駅からボランティアバスが出る。正直にいえば、珠洲市までの交通費が浮くからいいなと思っていたところもある。
ボランティアの募集は数日分が一気に行われるのだが、私が募集開始の時刻から30ほど経ってから見たときにはすべて定員に達していた。私的に行われているボランティアへの参加も一瞬考えたが、きっとこんな甘い気持ちではボランティアはしない方がいいなと考え、今回は観光として能登に行くことにした。珠洲市に行くには今の状況的にも、自分の能力的にも難しかったので、今回は気ままに行ける「穴水」まで行こうということに決めた。そう、『スキップとローファー』の聖地巡礼ではなくなってしまった。でも、衝動を与えてくれたのは間違いなく『スキップとローファー』なのである。いつか必ず珠洲市には訪れたい。
『恋文の技術』は、森見先生の小説が好きなので手にとった作品だ。のちに書くかもしれないが、去年は『四畳半神話大系』『四畳半タイムマシンブルース』に影響を受けて、京都に旅行したのだった。本書は、いわゆる書簡体小説と呼ばれるもので、読者は送られた手紙の文面を読むことによってストーリーを理解していく、という形式がとられている。しかし、われわれ読者は、主人公である「守田」側から送る手紙の文面しか読むことができない。相手から送られてくる文面は小説の中には記されていないのだ。すべて守田からの手紙によってストーリーは展開される。それが、めちゃくちゃ面白い。そして無論、森見先生の心躍るセリフ回しもふんだんに堪能することができる。途中まで読んで出かけたので、本書を読むことは道中の楽しみであった。今回やりたい事リストにアップされている「和倉温泉」は作中に登場する実在する温泉だ。聖地巡礼としてぜひとも訪れたい。
さて、色々長くなってしまった。何はともあれ、私はこの2冊に背中を押されて、能登へと向かうことにしたのだ。文章の始めに戻ろう。始発にて出発した私は、1日目の目標終着点である「金沢駅」をめざして電車にゆられていた。今回は、天候もよく全てが順調…というわけにはいかなかった。朝の段階で、私が本日中に金沢駅に到着することが不可能になってしまったのだ。まったくもう。次回へつづく。