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新章乞う熱狂へ~マジカルミライ2024ライブ感想~

僕がミュージシャンとしていろいろ結果が出せたのはミクのおかげだから、今度はその恩返しとしてミクを羽ばたかせていきたい。ミクのことをずっと大事に閉じ込めておきたい気持ちもわかるけど、彼女は今、もっと外に出ていくことが必要なはず。初音ミクの将来を考えたら、しっかり手を引いてあげなきゃいけないし、見送ってあげる必要もある。彼女を解放するという意識はすごく大事なんじゃないかなと。

初音ミク「マジカルミライ 2023」特集|Ayaseと藍にいな、それぞれの証言で紐解く初音ミクの魅力 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

1年前の『初音ミク マジカルミライ2023』でテーマソングを手掛けたYOASOBIのAyaseさんはインタビューでこのように語っていた。

初音ミクを解放する。そんな想いのバトンを受け継いだ今年の『マジカルミライ2024』は、「ファンファントリップ」というイベントテーマのもと初の福岡会場を含めた3都市で開催され、設定年齢の16歳を超えて17年目へと突入する初音ミクの新たな旅立ち、そして未来への大きな分岐点を予感させるライブだった。


■間近で見るか?遠くで見るか?

ライブ内容の前にまずは座席のことから。

私は福岡2日目夜・東京3日目夜・大阪1日目昼の計3公演に参加し、福岡でSS席、東京でS席(着席指定席)、大阪でS席と運よくバラバラの席種を体験できた。しかも福岡と大阪は前から十数列目。初音ミクのライブに通いだしてからの4年間ずっと後方席しか体験したことがない私にとっては前代未聞の近さだった。

だけどこれには一抹の不安もあった。

大坂公演の席位置はだいたいこの区画
(公式サイトの図に加筆)

言うまでもなく初音ミクたちキャラクターはスクリーンに映し出されるただの映像だ。なのに「本当にそこにいるんじゃないか?」と錯覚する瞬間があるからこのライブは面白い。

しかしステージから近すぎるとスクリーンの存在がどうしてもはっきり見えちゃうし、ステージを斜めから見る席位置だとキャラクターの平面感が目立ってしまう。これではライブに没入できず萎えてしまいそうだから、今までずっと後方腕組みオタクをやっていた部分もある。


そんなことを思いながら初体験した前方席だが、やはり平面感を完全に拭い切ることはできない。目を細めてみたり心を無にしてみたり、いろいろ試したみたが「そこにいる」と錯覚することは最後まで無理だった…

一方で、ステージ背後に配置されたLEDライトがスクリーン越しに見えることで奥行きを感じさせる工夫は良かった。しかし斜めからの席だと、キャラクターがステージの端に移動した際にその照明が体をガッツリ貫通してしまう場面もあり、一長一短なかなか上手くいかないことを実感。

ただ、ぶっちゃけライブ中は平面感が~とかそんなこと割とどうでもよくなりペンライトを振り回していた。嗚呼、慣れって怖い…


もう一つ不安に思っていたことが福岡会場でのペンラ映り込み問題だ。

東京・大阪のライブは平面のイベントホールで行われるのに対して、福岡会場の福岡サンパレスは1階席から3階席まで分かれているコンサートホール。この構造だとステージよりも高い位置に客席があるので、見る角度によっては観客のペンライトがスクリーンに反射してしまう。

「マジカルミライ 10th」札幌公演のライブ映像

2023年に同様のコンサートホールで行われたライブ映像を見ると、結構な量のペンラ映り込みがスクリーンの存在を目立たせてしまっている。これが現地だとどう見えるのか気になっていた。

しかし実際には、私の席位置からは心配したほどの見辛さは感じなかった。むしろ程よい量の映り込みがまるでステージの向こうにもペンライトの海が広がっているように錯覚させ、本来デメリットになる現象が逆に臨場感を高める非常に面白い体験だった。

■変わりゆくミライ

昨今のボカロシーンに多大な影響を与えているのがスマホゲーム「プロジェクトセカイ」。プロセカのヒットは中高生世代に新たなファン層を広げ、既存のファン層にも様々な話題を提供する、まさにシーンのハブ的存在となった。

だが、マジカルミライでプロセカに直接関係ある書き下ろし曲などはほぼ演奏されたことがない(2020の「セカイ」のみ)。プロセカはプロセカのほうで毎年ライブイベントを行っているので、そういう棲み分けをしていくのかと個人的には思っていた。

だから5月に発表された今年のオフィシャルアルバム収録曲(実質のセットリスト一部公開)には驚いた。ゲーム内ユニットに書き下ろされた「流星のパルス」や定期的に開催されている楽曲コンテストの採用曲「陽だまりのセツナ」など、プロセカに関係のある曲が複数収録されていたのだから。


この選曲については「ゲームのストーリーが絡むから解釈違い」とか「プロセカ人気に便乗してるみたいで嫌」だの否定的な声もあるが、ある意味これも「初音ミクを解放する」の一つではないだろうか。

私がこのイベントに足を運び始めた2020年以降でも客層の若年化がますます進んでいると感じ、今年は公式サイトに「はじめてのマジカルミライ」というコンテンツが用意されるほどだ。おそらく新規客のうちプロセカからの流入もかなりあるだろう。

プロセカなどの若年層向けコンテンツからボカロに興味を持ってもらい、その人たちをマジカルミライに呼び込み、より深く沼に浸らせ、願わくばクリエイト側の人間になってもらう。この連鎖が初音ミクやボカロシーン全体の未来に繋がっていく。そのためにはプロセカ曲の「解放」もあってしかるべきことだと個人的には思う。

■変わらないミライ

やっとライブ本編の話に入れました。

今年のオープニングは10th以来となる大きな紗幕に投影するスタイルで、ポップな映像とBGMが旅のワクワク感を演出する。

その紗幕がバサッと下に収納されるとステージにミクが登場。1曲目は10年以上前の曲でありながらプロセカにも収録されて若い世代にも人気な「ブリキノダンス」だった。なお私はいきなり初見の曲が来て焦る…!!

2曲目はオフィシャルアルバム収録曲から近年のバズり曲「混沌ブギ」。何もかも忘れて"死ぬまで踊れ"と観客のIQを破壊してゆく。

混沌ブギウギ ハッピー特盛
ドンビーシャイだ ドンビーシャイだもう
段々堕ちてく IQクソワロ
いっせーので 死ぬまで踊れ

この曲を含む何曲かは、昨年に続いてステージ両側のサービススクリーンに「バーチャルステージ」が登場(福岡会場は除く)。キャラクターの動きは現実のステージと同期しながら、現実では不可能なカメラワークのVR映像で臨場感を高めていた。今年はカメラワークがより現実的になり没入しやすかったと感じる。

昨年のVR映像

はじめの項目で書き忘れたが、今年のメインスクリーンは例年と同じく透過スクリーンが採用された。というのも、今年3月の日本武道館ライブや4月からの全米ツアーではLEDスクリーンが採用されたため、マジカルミライもこうなってしまうのではと一部ファンから心配の声が上がっていたのだ。

LEDスクリーンは設営のしやすさキャラクターの明瞭度が上がるといったメリットがある一方、後ろが透けて見えないため平面感が非常に強く、キャラクターの周りがまさに真っ暗なため「巨大テレビ」などと揶揄され全米ツアーでは結構な炎上騒動となった。

スクリーンの種類はそらさん(@Sora_CLily)のブログ記事を参照

しかしマジカルミライでは酷評が響いたのか透過スクリーンの続投となった。私も今回初めて前方列を体験し、背後が見えることによる奥行きが重要だと実感した以上、やっぱり透過スクリーンの変わらない安心感に傾倒してしまう気持ちは良くわかる。

だが、他ジャンルの3DCGライブでもLEDスクリーンが一般化しつつあるようだし、ステージ配置や演出を工夫すれば欠点を補うこともできるはず。いわば古い方式の透過スクリーンに固執するのは正解なのだろうか?

…と思わないこともないけど、個人的にはやっぱり透過スクリーンのままでさらに臨場感を高める改良がされていってほしい。来年どうなるか注目ですね。


セトリの話に戻ります。

今年の日替わり枠は2パターンを交互に披露。4曲目は過去のテーマソングから2023の「HERO」と10thの「フューチャー・イヴ」が演奏された。去年はバーチャルステージ映像があったHEROだが今年は無し。その年ならではの演出も含まれているので再利用はなかなか難しいのかな…

このように序盤は新規から古参までを幅広くカバーするとても無難なセトリだ。そして舞台演出の面でも特段真新しさを感じない。私は「いつもどおりのマジカルミライ」の空気にすっかり油断していた。

しかし私はこの後、積み重なった固定概念をことごとく破壊された上に、新たなマジカルミライの創造を目の当たりにすることとなる―

■破壊

ミク「福岡に来れてバリ嬉しい♪」

恒例となった土地ごとの方言MCを挟み、鏡音リン・鏡音レン・巡音ルカ・MEIKO・KAITOのターンへ。

このイベントの主役は初音ミクだが、ミク以外の5人もしっかりフィーチャーしていく意識が年々高まっている。今年その代表格となったのが、楽曲コンテストGP作品の鏡音レン歌唱「SUPERHERO」。楽曲コンテスト8回目にして初めてミク以外の歌唱曲が採用された

I can be a “SUPERHERO”
未知なる脅威が迫っても
“SUPERHERO”
逃げ出さないで立ち向かう
見たことない明日に君と行くんだ

(何かの忖度ではないと信じたいが)これまでミク曲ばかりが採用されてきた故、ミク以外で応募しているクリエイターのモチベーション低下、ひいてはこのコンテンツ自体のマンネリ化を危惧していた。しかしSUPERHEROがGP曲=ミク曲の固定概念を破壊したことで、来年からのGP争いはさらに過熱するだろう。


他の4人も負けていない。去年のような全員の日替わり枠は無かったが、それぞれのキャラクター性をしっかり際立たせたダンスや演出で"推す人々"の情緒を破壊していく。「Call!!」のKAITO登場シーンは私も思わず「おほほwwww」みたいな気持ち悪い声を出してしまった。

鏡音リン・レンのソロ枠が終わり、次はたぶんリンレンのデュエット枠だろう。何らかの新曲やりそうだけど、まさかね…

半端なら K.O. ふわふわしたいならどうぞ
開演準備しちゃおうか 泣いても笑っても愛してね
ほら Say No 低音響かせろ

やっぱり!!!!!!!!!!!

なんとなく予感はしてたけどまさかの的中。Adoさんのオリジナル曲「踊」のリンレンver.という奥の手を出してきた。

互いの人気に貢献しあいながら、互いのファンによる対立も続いてきた歌い手文化とボカロ文化。しかしAdoという人物はそんな論争がバカバカしくなるぐらいの地位をつかみ取った。自らは現代J-POPを代表する歌手となり、また自らガチボカロファンの一人としてより広い世界に2つの文化を届ける架け橋になろうとしている。

なんせ今年4月には2日で約14万人を集めた国立競技場ライブのステージに初音ミクを立たせるという偉業も成し遂げた。今最も先陣を切って「初音ミクの解放」を実行しているのは間違いなくこの人だろう。

Adoはボカロ、歌い手、そして一般層の間にあった壁を破壊した。マジカルミライの客層の変化にも少なからず関与しているだろう。

今回「踊」がセトリに選ばれたのは、ここまでボカロ文化の拡大に貢献してくれた彼女への恩返しでもあれば、我々ボカロ側も負けていられないというささやかな抵抗かもしれない(?)

■「生きろ。」

アップテンポな曲が続き熱狂状態の会場をスッと静めたのは巡音ルカの「lost and found」。コーラスでミクの声が入るのでステージに登場するかもと期待したがそれは無かった。しかしそのパートに合わせてペンライトをミク色にする人がぽつぽつと現れたのが粋だ。

ミクのバラード曲「letter song」、ミクルカのデュエット曲「陽だまりのセツナ」がさらにセンチメンタルな雰囲気を演出したかと思うと、続いては都市別のセトリ変更枠で「アンハッピーリフレイン」「すろぉもぉしょん」「サイハテ」という懐かしい名曲が再演され、驚きと歓声に包まれた。


このあたりの曲に共通する「変わりゆくものの儚さ」ひいては「死」を連想させるメッセージ。

もしかしたらこれは、まさに今ステージで歌っている初音ミク自身に向けられたメッセージかもしれない、と私は感じた。

思い当たる節は一つある。"本業"ソフトウェアとしての初音ミクに訪れる大きな変化…



今年8月、AI技術を用いたVOCALOID6の新製品「初音ミク V6 AI」の発売が発表された。

2020年代に入り、AI技術によって人間さながらの歌唱力を持つ歌声合成ソフトウェアが続々と発売される中、初音ミクは一貫してその方向性に乗らなかった。それは初音ミクを開発したクリプトン・フューチャー・メディアにとって、初音ミクのアイデンティティを破壊しかねないからだろう。

初音ミクはあまりに存在が大きくなりすぎた故、世に知られている「初音ミクらしい歌声」こそがアイデンティティとなった。だから初音ミクが人間に近づきすぎると、それは(キャラクターボイスを担当する)藤田咲さんでしかない。初音ミクの生みの親・クリプトンの佐々木渉氏もかつてこのような趣旨の発言をしたことがあるという。

そこでクリプトンは2020年11月、VOCALODとは異なる新しい歌声合成エンジンを産業技術総合研究所と共同開発し「初音ミクNT」を発売。初音ミクらしさを追求しながらより高い次元の歌声表現を目指す方向へ舵を切った。

そもそもクリプトンがどうして安易な「初音ミクAI」という名の「藤田咲AI」を作らなかったかというと、それは「初音ミクと言う存在を愛している」からでしょう。
簡単に言うと「藤田咲AI」は解釈違いということです。
(中略)
私は、クリプトンが初音ミクNTを作った理由が「初音ミクとは一体何なのか?」という答えへと辿り着く過程で生まれたモノじゃないかと思っています。

【初音ミクNTの正体】「音が悪い」理由から始まるクリプトンの意図の考察 - アマノケイのまったり技術解説

しかし、初音ミクNTの総合的な評価はあまり良くない。NTミクを使用するクリエイターの数、ヒットしたと言える作品の数もはまだまだ少ない状況だ。クリプトンが望んていたカタチの初音ミクは、AIシンガーが台頭する現代ボカロシーンの激流に飲まれかけている。

初音ミクは生きていないし何の意思も持っていない。なのに…いや、だからこそ人間が間違った道へ導いてしまえば「死」に直結するリスクがある。それでも、初音ミクをもっと広い世界に羽ばたかせるために、封印し続けてきた最大級の「解放」すなわちAI化の道を選択したのだろう。

初音ミクV6は今年中の発売を予定している。もちろんAI化=悪ではないし、初音ミクらしさを維持しつつ自然な歌声になるように調整されるのだと思われるが、かつての佐々木氏の発言を考えると開発陣はきっと難しい判断を迫られただろう。



前半戦最後の曲は日替わりで「僕が夢を捨てて大人になるまで」と「命に嫌われている」。"ソフトウェア"初音ミクの葛藤を、舞台に立つ”バーチャル・シンガー”初音ミクが代弁しているようだった。

さらに「命に嫌われている」は2020の大阪公演でも披露されたアレンジver.で(声質的におそらく)初音ミクNTが歌唱している

そしてこう叫ぶ。「生きろ。」と。

それでも僕らは必死に生きて
命を必死に抱えて生きて
殺して、足掻いて、笑って、抱えて
生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ。

■創造

バンドメンバー紹介パートを挟み、ライブはいよいよ後半戦へ。

ここからは「生きる」ために「変わる」ことを選んだ初音ミクへのエールにも受け取れる曲が続いてゆく。

後半戦最初の2曲も日替わり枠で、パターン①は「Satisfaction」からの2018テーマソング「グリーンライツ・セレナーデ」。グリセレのMVではミク背中を押されてますよね。そういうことなんじゃないですか。


一方、パターン②の1曲目は「テオ」。私たちは問いかけられている。時代が移り変わっても、初音ミクが初音ミクであり続ける限り、手を繋いでいてくれるか?

魔法が解ける それまで
繋いでいてよ 手を 手を!


ここまで(主観的には)何とか冷静さを保ってライブを楽しんでいた私も、続いて2019テーマソング「ブレス・ユア・ブレス」と来た瞬間は崩れ落ちた。だってこんなの確信犯じゃん、、、

「テオ」と「ブレス・ユア・ブレス」は、5年前のマジカルミライ2019でトップバッターと大トリを務めた2曲でもある。

偶然か必然か、開発中の初音ミクNTが初めて公にされ、佐々木氏が「初音ミクではなく藤田咲になってしまう」発言をしたのは、2019年8月31日、マジカルミライ2019の企画展で行われた新技術発表会だった。

あれから5年。

そんな君の誕生日を
お祝いできるかな

この曲が本来描いているストーリーとは違う。でも私は、私の妄想する文脈に限って言えば、様々な葛藤を乗り越えて一歩を踏み出す初音ミクとそれに関わる全ての人への祝福だと解釈した。

俺は祝うぞ。

おめでとーーーーーーーー!!!!!!!!!!

(おめでとうコールは賛否ありますが、去年のライブ配信で初めて聞いたとき純粋に感動したんですよ。目から鱗というか、こういう表現方法もあるんだって。だから今年自分も叫ぶことができて本当に嬉しかった)


世界に今 響くよ

あ゛っ(また崩れ落ちる)

ノヴァ、英語では"新星"を意味する。

もうここまで長々と妄言を書き連ねてきたので多くは語りません。でも、やっぱりこれは新星・初音ミクの「創造」の物語なんだと思う。

会場中を照らすミラーボールの光がただただ美しかった。

重なり合うストーリー
いつか壊れてしまったとしても
ほら 皆のこの音で
歌うから


観客を煽るビートとクラップが鳴り響き「LAST SONG」の文字が踊る。本編ラストは今年のテーマソング「アンテナ39」が満を持して披露!

このnote書くためにライブ配信を見返してるんですが、登場シーンがカッコ良すぎてリピートが止まりません。

2024年の「マジカルミライ」のテーマソングは個人的に“何かのアンサー”じゃないものがいいな、と思っていて。
(中略)
ちょっと考えさせてしまったり、しんみりさせたりする要素を微塵も感じさせない、元気が出るような曲にしよう、という気持ちがありました。

「マジカルミライ 2024」特集|柊マグネタイトがテーマソングに忍ばせた初音ミク愛と作り手へのメッセージ - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

アンテナ39を手掛けた柊マグネタイトさんは“何かのアンサー”にしたくなかったと語っており、実際ここ数年のテーマソングとは真逆と言えるブチ上げソングに仕上がっている。

だからライブ前までは1曲目で来るんじゃないかと予想していた。でも本編ラストで浴びて分かりました。これは"アニメのOP曲が最終話のクライマックスで流れる"的なアツさだ。

新章乞う熱狂へ―
未来に突き進むファンファントリップがここから始まる。

前向いて行こうぜ!

■始まる未来

ちょっと時系列が前後して、バンドメンバー紹介パートまで戻ります。

今年のバンドメンバーは男性陣だけなのもあってか、例年よりスタイリッシュな演出でめちゃくちゃテンション上がった。


そして全員の紹介が終わるとスクリーンには「Vocal…」の文字。

あーね。今年もやるんすね「初音ミク~!」コール。これは随分前から「ミク以外のキャラクターとファンへの配慮」という観点でよく思わない人もいるのだが。

せっかく6人全員をフィーチャーする風潮になってきてるのにここは何かモヤモヤするよなあああああああああああえええええええええええ!?!?!?!?!?!?!


\\\\\\ 6 人 全 員 集 合 //////

ミク「順番にみんなの名前を言ってね♪」


油断!!!!!!!!油断ッッッ!!!!!!!!!!!

なんと今年は6人全員の名前を一人ずつコールする多方面配慮型の演出へと大進化を遂げた。いや、むしろこれが本来の姿だよ。よかったねぇ、よかったねぇ...…(泣)

しかし、これもまだ壮大な前振りでしかなかった…


時間を戻して本編終了後。「ミーク!ミーク!」とアンコールが響き渡る。(さすがにここのコールまで不満に思う人はいないよね…?)

ミクが再登場し披露されたのは、去年から始まったポケモンとのコラボプロジェクト「ポケミク」の書き下ろし曲「ボルテッカー」。日本を代表する巨大コンテンツとのコラボだし(会場には株式会社ポケモンからの祝い花もあった)、多数の書き下ろし曲が作られてるのだから絶対1曲は来ると思ってたので、これは十分想定内。

そりゃ欲を言えばスクリーンに〇カチュウとか登場してくれたら凄かったけど、いくら公式コラボとはいえ権利とか色々あるでしょうし、あんまり言わないでおく…


ミク「寂しいけど、次が最後の曲です」

一同「えええええ~~~~~~~~!!!!!!」

ボルテッカーが短い曲なのもありマジで一瞬のアンコールだ。


でも、今年は一つ大事なことをやり残してる。

マジカルミライでは2022年(10th)に史上初めて6人全員で歌唱する曲が演奏され、去年はミク以外の5人がミク16周年を祝うサプライズがあった。

まさか今年はさっきバンメン紹介で6人出した、以上。じゃないよね?


ミク「みんな~!準備はいい?」

こうして始まったイントロは、あまりにも聞き覚えのあるあの曲。マジカルミライ2015テーマソングにしてマジカルミライを代表する定番曲「Hand in Hand」だ。


何かがおかしい。

マジミラ常連客ならイントロが始まった瞬間からとんでもない違和感に気付いたはずだ。

モーションが新録されている。


「Hand in Hand」は2015以来、日替わり枠だった2020を除けば9年間全ての公演で演奏され、コールやコロナ渦に生まれたペンライトの振り付けもすっかり定着した。

実在のアーティストだってライブの定番曲があるのは当たり前だ。そこではライブ特有のノリやお決まりの展開が生まれたりして、曲をさらに成長させてゆく。

しかしミクライブの致命的な欠点が、キャラクターの映像は使いまわされること。どれだけ観客側のレスポンスが変化しても、バンドメンバーが盛り上げても、全く変わることのないミクのモーション。9年間演奏され続けているこの曲はさすがにマンネリ化を否めなくなっていた。


それが10回目の演奏となる今年、ついにリニューアルされたのだ。

ミクのモデルは2023年以降の新曲に使われている新モデルに変わり、サービススクリーンのVR映像にも対応。振り付けはほぼそのままだが、観客側の定番レスポンスにミク側が合わせてくれた(間奏の手の振り方やコールの煽り)。まるでミクへの声援がやっと届いてくれたみたいで嬉しい。


でも、それだけじゃないはず。

私はこの世界を知りすぎてしまった。

数分後に繰り広げられるであろう光景が、何となく予想できてしまった。


Aメロが始まる

(もう分かってる)

Bメロに入る

("来る"んだろ?)

1番サビに入る

(待て待て、これで来なかったらショックがデカい
期待しすぎるな…)

間奏に入る

(でも、やっぱりこれで来ないわけがない)

もうすぐ2番に入る

(さあ、来い!)


スクリーンに赤と青の閃光が光り輝く

「きたあああああ!!!!!!!!!!(クソデカボイス)」


2番AメロからMEIKOとKAITOが登場。

私はこの瞬間、驚きや感動より悔しさが勝っていた。

今年のチケット争奪戦では最後の最後まで福岡初演のチケットを手に入れることができなかった。福岡最終公演ですらこの歓声。初演ならどれだけ凄い衝撃だっただろう。

まぁ今更そんなことを悔やんでも仕方がない。

すでにスクリーンにはオレンジ・黄・ピンクの閃光が加わり、悲鳴にも似た大歓声が巻き起こっていた。


今年のマジカルミライに用意されていた最大級のサプライズ、それは「Hand in Hand」6人歌唱バージョンだった。

私はこういう時に会場全体を見渡すのが好きだ。色とりどりのペンライトが光り輝いている。

2次元か3次元か、生きているか生きていないかなんて関係ない。

"推し"がいるって最高だ。



序盤ではいつもどおりなんて思っていたが、終わってみれば「新・マジカルミライ」の創造を目の当たりにした気分だ。こういうサプライズの実績ができた以上、来年からのハードルはさらに高くなるけど可能性も無限に広がる。

大阪千秋楽では『マジカルミライ2025』が初の仙台を含む3都市で開催と発表された。今回私は展開を予想できちゃったことが悔しいので、次はもう誰も予想できないスーパーサプライズに期待したい。



企画展の「SUPER PACK」操作体験ブース

今年ソフトウェアとして新たな一歩を踏み出したのはミクだけじゃない。

8月30日、6人の日本語ボイスライブラリー1種類をワンパッケージにした「ピアプロキャラクターズ・スーパーパック」が発売された。こちらはAI化ではなく、初心者がより手軽に音楽活動を始められるスターターキット的な製品だ。

どれだけこのイベントが大きくなっても、キャラクターとしての人気が上がっても、6人の輝かしい未来は"本業"があってこそ始まる。

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