テレビについて㉘「黄金の定食」が改めて思い出させてくれたこと。
テレビ東京で、「孤独のグルメ」が始まった時は、新鮮だった。
その漫画の原作は「谷口ジロー」で、シリアスな山を舞台にした作品「K」を読んで、怖さと寒さまで伝わってくるすごい人だという印象があった。
その漫画家が、基本的にはインテリジェンスのあるコミカルな作品に関わってきた久住昌之が原作で、一緒に作り上げた漫画が「孤独のグルメ」で、その組み合わせだけで意外だったのに、さらに、テレビでドラマとして放送される、という流れまで不思議だった。
テレビ東京の深夜
その放送が始まったのは、2012年だから、当時は、一人で誰にも気を使うことなく食べる外食が美味しい、というようなキャッチフレーズがあって、それがうけたのか、シリーズ化されて、今も続いている。
その評判があったせいか、テレビ東京では、グルメというか、食事をテーマにした番組が深夜に続いた。
少し遠くへ行って、もうすぐなくなるかもしれない飲食店で食事をすること。女性が一人で外食を続けること。
そうした番組が放送している頃に、コロナ禍になり、「孤独のグルメ」の新しいシリーズが始まった頃は、感染予防の観点という名目で、飲食店がやたらとターゲットになっていた時期でもあったから、その番組自体が、これまでとは違う意味合いも帯びていたように思えた。
あえて、この時期に、外食の必要性を訴える、という静かなメッセージまで、視聴者として感じていた。
黄金の定食
それでも、食事をする番組は多すぎるかもしれない、などと思っていた頃に、テレビ東京の日曜日深夜で、アイドル番組が続いた後の午前1時過ぎから、また新しいグルメ番組が始まった。
出演は、シソンヌの長谷川忍と、なにわ男子のリーダー・大橋和也の二人。
定食屋に入って、自分にとってのベストの定食を食べるために、悩み、食べて、最後は喫茶店で振り返る、という、それだけの番組らしい。
私は、もしかしたら、アイドル番組の一種かと警戒していたのだけど、妻の方が乗り気だったので、録画してみた。
外食の楽しさ
注文する前に、その定食屋の常連、もしくは、その店に通ったスタッフが、おすすめメニューを、どれもおいしそうに、これだけははずせません、みたいな口調ですすめる。
そして、出演者の二人は、全部が揃っている定食はないから、どれかを諦めなくてはいけない。
だから悩んで、そして、長谷川と大橋は、おそらくは正直に語り合っているから、見ている方も、自然と、自分ならどれを選ぶかな、と考えていると時間が過ぎる。
その途中で、そういえば、食事を誰かとするときに、その人と仲が良ければ、そんな話をして、場合によっては、おかずを分けあったり、食事の話題を、あれこれしゃべったりしていた。
そういう、無駄のような時間の楽しさ、まで思い出した。
これまで、食べることのうれしさや、予想しながら店を選んで、それが当たりだった時の喜びのようなものは、一人の食事の番組でも十分に伝わって来た。
だけど、「黄金の定食」では、二人以上で飲食店に入って、こうした食事に関する話をしながら、そして、食べてから、微妙に後悔もしたり、そのことで、また話したりといった……それは、相手と仲がいい、という条件は必要だとしても、そういう時間まで、外食の楽しさだったことも思い出させてくれる。
この番組が、複数の出演者だった意味は、そこにあるのかもしれない。
それでも、長谷川と大橋が本気で、美味しいものを食べたい、という気持ちがあり、さらには、とてもおいしそうに食べるから成り立っているのは間違いないし、第1回目を見た日は、明らかに影響されて、アジフライが食卓に並んだ。
この番組は、12回限定らしいので、もし、興味があったら、視聴してもらえれば、「外食の楽しさ」を、少しでも思い出せるかもしれません。
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