「感染の怖さが迫る月末」。2020.11.28.
2週間ぶりに、午前9時前に家を出る。
駅までの道の途中で、ホースで道に水をまく高齢の女性がいる。けっこう気温も低めだから、寒くないだろうか、と思ってしまう。
後ろからピンクのキックボードに乗った小さい女子に追い抜かれたと思ったら、止まって、道路に落ちているイチョウの黄色い葉っぱを拾っていった。どうやら、とても小さい葉を選んでいるようだった。
さらに歩いていると、途中から、後ろから規則正しい靴音が強めに響いてきて、ちょっとこちらのスピードがゆるんだら、一気に抜かれる。全体が黒い服と、黒いロングスカートで、黒いブーツの姿勢のいい女性。黒いマスクをしているのと、スマホのケースが紫色なのは、わかった。
何度も聞いた「過去最多」
感染者数過去最多という言葉を、何度も聞くようになった。
先週は、あれだけ観光地が人でいっぱいだったのだから、これから今以上に増えていくのだろうと普通に思う。
感染者数だけでなく、重症者も最多に迫るといった言葉も聞くようになると、気温の低下とともに、怖さが確実に増してくる。でも、たぶんできることはかなり少ないし、個人でできることは限界がある、という専門家の言葉もニュースで聞いた。じゃあ、これから、さらに、どうすればいいのだろう。
緊張感の電車
ホームには20人くらいの人がいる。
みんな冬の格好になっている。
電車が来る。3両しかないけど、一番、人口密度が少なそうな車両を選んで、電車に乗る。窓は開いている。
いくつめかの駅で、人が多く乗ってくる。
小柄で小太りな初老といっていい男性が、ドアからまっすぐに近づいてきて、すぐそばに立って、つりかわをつかむ。「距離」に対して、意識がないような動きは、過去最多という言葉を聞く機会が多くなってきたせいか、より怖くなってきた。
電車を降りて、次の路線に向かい、改札を入り、そのそばのアルコールのポンプを使っているのは、今日も私一人だった。
次に乗り込んだ電車も、座席はうまっていて、窓は少し開いている。自分だけが、緊張感を高めているような気がしてくる。
電車が走り、スピードが変わるたびに、連結付近のカバーの音なのか、ギュウーギュウーという音がやけに大きく響いている。
車内の少し遠くでセキの声が聞こえる。
目的の駅に着き、構内を歩いている時に、いかにも「素人」の男性駅員が吹き込んだような音声で、歩きスマホは接触を招くので、ご遠慮ください、とやや早いテンポで繰り返されていて、その音量がやけに大きく感じる。
それは、自分が不安で、緊張感が高くて、電車の中でも、駅でも、やたらと音に敏感になっているだけかもしれない。
新しいビルと不安なニュース
夕方には、用事がすんで、今日は、いつもとは違うルートで駅まで歩く。
新しいビルの間の、広い陸橋のような道。
きれいなところを歩いていると、それだけで、感染の不安みたいなものが、微妙に減る。それでも、吹く風は明らかに冷たくなって、これから冬になる気配を感じるだけで、また不安がふくらむ。
午後4時過ぎに、ホームに着く。
もう寒いといっていい。
電車が来て、乗り込んで、乗客で座席はうまっていて、何も変わらない風景に見える。感染者数が、都内で過去最多ということは、新型コロナウイルスは、もうあちこちに存在しておかしくない。感染者数も、死亡者数も増えているというニュースは今は遠いけれど、いつそばになるか、自分がそうなるかは分からない。
電車のドアの上のニュースが小さく流れている。
小池都知事、重症患者受け入れ医療機関を視察。
案里議員、失職も。
タンカー衝突事故
イラン科学者暗殺。
都知事は、今、視察を始めたとしたら、重症化の対策は、たぶん遅れそうだし、今日、視察したとしたら、病院側は、治療などで、ただでさえ大変なのに、都知事を迎えることで、いろいろな負担が、さらに増えているのかも、とネガティブなことを思う。
医療崩壊という言葉も、ちらほら聞くようになった。
不安の車内
一人空けて座っている席に、若い男性が座った。
体がくっつくような、すぐ隣でセキをして、鼻水を強めにすする。それが何度も続く。
自分だって、さっきくしゃみをしたばかりだったのに、やっぱりこわい。
ちょっと我慢をしていたけれど、立って、歩いて、隣の車両にうつった。
そうしたら、すぐ目の前の座席に、アゴマスクで、上下ジャージで、両足を投げ出して、気持ちよさそうに寝ている30代くらいの男性がいた。その平気さがうらやましくなる。
坊主頭と思ったら、どうやらモヒカンだった。
車両を変えたのに、鼻水をすする音。セキをする声があちこちで聞こえる。向かいのドアのところに立っている若い男性が、セキをした。急に近くに来た気がした。
もうすぐ午後5時くらいで、もう暗くなっている。
電車を乗り換える。その駅のホームに、子供の泣き声が響いている。
電車が来て、空いているから座って、それでも泣いている声は、さっきより遠くになったけれど、まだ聞こえ続けている。
電車を降りた。家までの道を歩く。夕焼けだけど、今日はきれいというよりは、黒っぽい雲が目立って、妙な色で、自分の不安もあると思うけれど、不吉な感じが強かった。
(他にもいろいろと書いています↓。読んでいただければ、うれしく思います)。