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「まだコロナ禍なのに、日常が戻ったような穏やかな土曜日」。2021.10.2.

 天気がいい。
 昨日の台風がウソのように晴れている。

 朝起きて、久しぶりに閉めた雨戸を開ける。気をつけないと、指にトゲが刺さってしまうような古い木製。

 空が青い。

 強風に備えて、下ろしていた物干しザオを元通りにして、家に入れていた洗濯物を、また干す。

 温度が上がってきている。
 
 半袖にするか、長袖にするかを迷って、だんだん暑くなるような気がして、半袖にして、上着をきて、家を出る。

 妻が、道路で、見送ってくれる。
 振り返ると、手を振ってくれるから、振り返す。
 やっぱり、ありがたい。

数字

 駅に向かって、道路を歩く。

 歩き始めたら、すでに暑くなって、上着を脱ぐ。
 
 ジャージにTシャツの中学生の小団体が歩いている。
 胸に、ある数字が書かれている。それは、このあたりも通学圏になっている中学なのは明らかだった。
 背中に「一走入魂」の文字が縦に大きく書かれているから、陸上部だと思う。

 空を見ると、青がまぶしい感じは、久しぶりだった。
 
 病院の前には、今日は3人も待っている。

 1000円カットの前には、誰もいないけれど、カラーできる、その近くの店には、1人の女性客が並んでいる。

電話

 ホームには、10人くらいの人がいる。
 車両の中には、人が先週よりも多い。
 窓は開いている。

 最近、何だか生きていて虚しい感じがしていて、でも、それは、緊張感の中で過ごしていた介護生活が終わったせいではないかとも思う。それは、なんだか、今は、妙に余裕がある、とてもぬるい毎日を過ごしてしまっているのではないか、と気づくと、ちょっと恥ずかしくなる。

 車両は、駅に停まるごとに、乗客が増えてくる。

 そして、終点に着いて、乗り換える前に、家に用事があるのを思い出す。保険証が、9月末で切り替えなのだけど、新しい方に入れ替えていないので、気になって、公衆電話から電話をかける。妻は、今日のところは、病院に行かないから、大丈夫、という話になって、ちょっと安心した。

せきの声

 電話の時間の分だけ、乗り換えが遅れる。ホームに降りる時に、ホームドアが閉まるのが見えて、電車が発車していく。

 一瞬、ホームに、ほとんど人がいない。

 次の電車が来るまでに、それから人がどんどん増えて、そして、電車が来て、乗り込む。
 窓が少し開いていて、少しほっとする。

 ホームでアナウンスの声が聞こえる。下り側の次の駅で、電車が止まっているので、この電車もしばらく止まっています、といった内容だった。

 乗っている電車は上りだけど、影響があるのかと思って、しばらく微妙にドキドキしている。

 まだ発車しない。
 
 ドアのそばに立っているけれど、後に若い男性。そばに二人組の若い男性が、来て、その二人が会話をしている。

 3人に囲まれたような形になって、ちょっと怖い。

 うしろに立っていた男性がくしゃみをする。
 大きい声。

 その後、3回くらい、くしゃみを続ける。
 ちょっと怖い。

 少し遠いところに座っている中年男性が、そこにかぶせるようにセキをする。

 次の駅について、ドアが開いたタイミングで、そこから、遠い場所に歩く。

 車内には冷房が入っている。そんなに暑いとは思えないのだけど。

ワクチン接種

 目的の駅に着く。電車を降りる。

 改札へのエスカレーターへ向かっていく人が、思ったより多いので、他の人に道を譲る。

 肌にピッタリしたショートタイツをはいた、スポーティな格好の男性が前へ歩く。マラソンのようなハードな競技をしているような気配に見えた。

 改札から外へ出て、階段を降りて、空を見たら、青が薄くなっているように見える。
 気温が高くなってきたのに、空気が少し冷たく感じる。


 私の前を早足で歩いていく男性が、工事現場の壁に立ち止まった。そこは関係者の出入り口で、番号を押すと開くドアがあって、その男性が、そこの中へ入っていく。

 

 公共の建物では、今日もワクチン接種が進められているようだ。

 案内ボードを先週までは手に持って腰に掲げていたのだけど、今日は、長いひもを首にかけて、そのカードを持っている。考えたら、手で持ち続け、立ち続けるのは、長い時間になれば、かなり厳しいし、ひもの方が楽かもしれないけれど、それなら、人ではなく、立て看板などでは、ダメなのだろうか、とは思った。

雲がない空

 用事が済んで、午後4時過ぎに、また同じ駅へ戻ってくる。

 飛行機が飛んでいる。
 空には、雲ひとつ見えない。

 穏やかで、日常に戻ったような気持ちにさえなる。

 電車に乗ったら、空いている。
「ソーシャルディスタンス」を保って、座れる。

 少し遠いところで、若い男女が、ベビーカーに小さい女の子を乗せていて、3人一緒の家族だと思う。
 女の子は、両手を動かしながら、何かを歌っている。
 ご機嫌ではあるようだけど、それほど笑顔なわけではない。
 車両の中では、その声だけが響いていて、日常的な雰囲気が伝わってくる。

駅の中

 今日は、人にプレゼントを買うために、途中の大きい駅で降りて、駅の中にある駅ビルのようなところに行く。

 前もって、調べて、このお菓子がいいかも、と思って、向かっていく。

 人は多い。

 こんなに人が歩いている駅の構内は、久しぶりだった。
 店によっては、人が並んでいる。
 
 マスク以外は、すっかり日常に戻っているようだけど、ただ、以前は、もっと人がいっぱいいたかもしれず、その「密」な感覚を忘れているだけかもしれない。

 買おうとしていた、クッキーの詰め合わせが、意外と小さかった。写真では分からなかったから、それよりも大きいサイズを買うとすると、予定よりも倍の値段になって、買うまでに、少しちゅうちょしていた。その間にも、先にスタッフに声をかけて、次々と購入していく人が何人もいる。

 その後に、買おうとしていたクッキーを買えて、プレゼントに添えるカードを買うために、エスカレーターに乗ったけれど、あちこちがにぎわっていて、なんだか気持ちが少し圧倒される。

知らない生き物

 再び、電車に乗り、降りて、また乗り換える。
 私鉄の3両。

 駅に着いて、乗ってきた男性が、急に帽子をとって、お辞儀するようなポーズをとった。

 ハチのような小さい生き物が、そのそばを飛んでいた。
 この生き物に、男性が反応したのか、乗ってきた時に、くっついてきたのか。
 
 そのあたりは、分からないのだけど、車両の中の空間に、飛んでいる。
 黄色と黒がぼやけて見えて、もしかして、スズメバチだったら、怖いと思って、ずっと見ていたら、ドアの上の車内の壁に止まる。
 
 蛾のような生き物に見えるけれど、分からない。だけど、ハチでないのは、明らかだから、少しホッとする。

 その生き物は、もしも、また飛んで、あちこちに行ったら、微妙なパニックを起こしそうなので、何とか捕まえて、自分が降りる時には、外へ逃したい気持ちもあって、ずっと目をそらさずに見ていた。

 だけど、止まっている位置が、私にとっては高すぎて、届かず、どうしようもできないまま、電車を降りた。

 

 夜になって、どうやら狭い地域で、急に激しい雨が降り、雷まで鳴った。
 明日まで晴れると思って、洗濯を始めてしまっていたので、何とかしようとしていたら、激しい雨で、あっという間に体中が水で重くなった。

 こんなに急に雷雲が発生するなんて、と不思議な気持ちになった。




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