「威勢のいい言葉」と「嵐の前の静けさ」。2020.6.24~6.27
今週は、特に後半になって、社会の空気が不安定になってきたように思えた。
緊急事態宣言解除後は、どこかゆるんでくる空気の方が強かった。
その一方で、東京都内は、新しい感染者が、連日増えてきているのを、ニュースをあまり見ないようにしている私でさえ知るようになったのだから、それは、またコロナ禍がひどくなる予感につながる。
そんな違う流れが、ぶつかって、それで不安定になっている印象だった。
6月24日。水曜日。
午後になり、家を出る。
気温が上がっているせいなのか、ほぼ何も考えられないのは、周囲の空気も、明らかにゆるんできているせいもありそうだった。
都知事選を前にして、候補者のポスターが貼られている。
「コロナはただの風邪」
「コロナ自粛をぶっ壊す」
そんな「威勢のいい言葉」が、いくつも並んでいる。
写っている人物は若かったり、健康そうだったり、体力がありそうだったりする。
こういう人たちには、持病を持った人間や、高齢者や、体が強くない人が、傍にはいないのだろうな、と思う。
6月25日。木曜日。
詳細は分からないが、専門家会議が廃止になったらしいと、知った。
これから力を発揮するはずなのに、今後はノーガードで戦うようなものなのに、どうするんだろう、と不安がふくらんだ。
でも、それはポスターの「威勢のいい言葉」と呼応しているように思って、だから、よりこわくもなった。
さらに、それは、コロナ対策の責任者に見える人が、どうして経済再生担当大臣なのだろう、という疑問と、つながっているようにも思う。
東京都の感染者数は、今日は40人を超えたらしく、それは、どんどん増えるような気配だけがあった。
6月26日。金曜日。
暑くなってきても、マスクをする人がほとんどになってきて、今年は、初めての「夏マスク」の経験を、自分も含めて、ほとんどの人がすることになっている。
だから、熱中症が多発しそうで、それで、特に黒いマスクは熱を持ってしまうから、こわいのではないか、といった話を聞いた。初めて知ったような気がしたが、なんだかすごく納得した。
図書館に行った。本を返却して、予約していた本を借りた。
閲覧室も使えるようになっていた。
ただ、利用する時に検温なども必要という表示はあった。
奥の、飲食コーナーも使えるようになっていた。
一つのテーブルに、一つだけのイス。
どんどん使えるようになってきて、それはうれしくも、ありがたいことだし、とても大変な思いをしているであろうスタッフの方には、失礼かもしれないけれど、これから先、全面的に再開したとしても、病院のイメージと似てきてしまうように感じた。
6月27日。土曜日。
朝の9時くらいから、もう気温が高く、湿度も高く、少し薄曇りだけど、何か、こもっているような気配だった。
それは、電車の中も、静かなのに、何かがこもっていて、なんだかエネルギーは、あるような感じがする。
途中から、乗ってくる人は、ここ何週間で、だんだん多くなっていると思う。
もう、車内に「ソーシャルディスタンス」はなくなっている。
半ソデ、ショートパンツ、黒マスクの若い男性が乗ってくる。
今年は、こういう人たちが、多くなってくるのでは、と思う。今までは、とても不自然な格好のはずだったのに。
終点について、降りる人は、この1ヶ月くらいは、毎週増えているような気がする。
駅の独特のざわめきは、完全に戻っているように見える。
電車を乗り換える。
次の電車内にも、「距離」はないままだった。
それでも、マスクをしている人がほとんどで、「距離」は消えても「マスク」は残っていくようだった。
向かいのドアのところに、初老の男性がいる。
横を向いて、足を開いて、アキレス腱を勢いよく伸ばしている。
それから、上下に体を揺すっている。
なんだか、やけに元気さをアピールしているような感じもあったのだけど、急に少しせきこんでいる。
つい見てしまったら、またせきこむ。
そこから、さらに「距離」をとってしまった。
大きな駅に着いたら、人がどっと降りて、つかのま「距離」が復活したので、座席に座る。
ドアの上の画面に、ニュースが流れる。
「東京の新たな感染者、50人を越える」。
今の静かな感じは、月並みだけど「嵐の前の静けさ」なのかもしれない。
電車を降りて歩くと、このところ、いつも必要最小限の人間だけでビルの工事を進めていた印象だったのに、今日は、その現場には何十人もいて、かなり「密」の状況になっている。だけど、そこには、明日を作る活気みたいなものが確実にあったし、声も大きく聞こえてきていた。
私の前には、マスクを手に持って、歩いている女性がいる。
今の気温だったら、それは自然な姿だと思う。
公衆トイレに入り、手を洗った。
いくつも洗面台はあるのに、すぐ隣に男性がきて、ちょっとだけ手を洗って、先にトイレを出て行った。
帰りは、午後4時半になっていた。
駅には、6人くらいで、「密」どころか「固まり」のようになっている初老の男性たちが、少しよろよろと歩いて、階段を降りていた。
全員がマスクはしている。
大きな声で話をして、ゆっくりと動いて、ただ、その姿は間違いなく、楽しそうだった。
おそらく、飲んでいる時は、マスクをしていなかったのではないかと、勝手に思った。それは、自然な姿に過ぎないのだけど。
電車に乗った。
窓は閉まっている。
と思って、よく見ると、3センチほど、1カ所か、2カ所くらいだけ窓が開いている。
冷房はよく効いている。
電車を乗り換えた。
最初は「距離」をとれていた。
途中の駅で、隣に、がっつりスポーツの格好をした中年男性が座った。
体力がありそうな人ほど、なぜか、こわく感じるのは、こちらの勝手な偏見である可能性も高いが、その人に、感染への不安が少なく見えるせいかもしれない。それは、自分の、うらやましさも含まれていると思う。
駅を降りて、しばらく「テイクアウト」だけだったカフェに、人が普通にいた。
さっき、電車で隣に座っていた男性と同じようなスポーツフルな格好をしている人たちが、店内に何人もいる。
外のテーブルには、お客さんがいて、当たり前だけど、マスクなしで、くつろいでいる。
それは、やっと日常が戻ってきた姿でもあるから、ホッとする気持ちもあった。
ニュースで、東京都内の新たな感染者が60人近くになったことを知った。
緊急事態宣言解除後では、もっとも多い人数らしい。
それでも、東京アラートは、もう発動されないようだった。
今は、個人的には「嵐の前の静けさ」な印象が強まっているのだけど、でも、すでに「威勢のいい言葉」の世界の住人とは、見えている「世界」自体が違うのかもしれない、と思うようになった。
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読書感想 『21世紀の資本』 トマ・ピケティ 「200年分の事実」
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