「ビワの根切り」をした話
少し前から、妻に言われていたことがあった。
家のビワのことだった。
ビワの鉢の心配
家の門のすぐ外。厳密にいえば、道路になるのかもしれないけれど、ご近所も含めて、迷惑にならない範囲で、そうした場所にプランターや鉢を置くことが、なんとなく暗黙の了解になっている。
家の庭に植えるのは、繁殖の力が強すぎるといった理由もあり、大きめの鉢にビワを植えて、門のすぐ外へ置いていた。
その、ビワは、毎年のように実がなって、食べることもできたし、カラスにとられるから、妻が三角コーナーのための紙を整えて、カバーしたりしたこともあった。その時は、その見た目が珍しかったのか、テレビに撮影されたりした。今年も、いくつかのビワの実は、カラスにとられたらしい。
2つ並んで鉢が置いてあって、背の高い方が2・5メートルくらいになり、もう一つは、1・5メートルくらいに成長したこともあって、根っこがかなり伸びて、最近は、鉢の底を突き破るように伸びて、その下のコンクリートのすきまにまで入り込み、さらに奥まで伸びているらしい。
そうなると、その下の土のところに設置されているはずの上水道のパイプに届いて、もしも、そこに巻き付いたりしたら、それこそ、大変なことになると、妻は少し前から心配していて、その根切りを頼まれていた。だけど、作業をしようとすると、雨が降る、ということが繰り返されていた。本当に嫌になるほど、雨が降った。晴れ間があると思ったら、それがウソのように激しい雨が降る、ということが1週間も2週間も続いていたと思う。
根切りの作業
それで、やっと、晴れるまではいかないのだけど、雨が降らない時間ができたので、その作業をすることになった。
妻が手袋や、のこぎり、ハサミ、など、いろいろな用具を準備してくれていた。
初めて、作業用の丈夫な手袋をしたのだけど、何度も前後を間違えた。手の甲が赤、手のひらがグレー、が正しいのに、どうしてか逆につけて、違うよ、と言われて、付け直すことを繰り返していた。その手袋をつけると、ちょっとエヴァンゲリオンみたいに見えた。
まず、鉢を動かすことから始めた。
大きい鉢は、重量はあるけど、比較的、移動するのは楽だった。
小さい鉢のほうが、持ち上げようとしたら、強い抵抗がある。
それでも持ち上げたら、根っこが完全にコンクリートの下の土の中まで、食い込むように伸びていた。それをとるために、力を入れて、ひっぱっても、その根の奥まで引き抜くこともできるわけもなかった。
少なめの力でも、切れるハサミで、その根っこを切った。
たぶん、太さは小さめのビワの幹と同じくらいの、3センチくらいの太さがあった。
すごい力を感じた。
それで、やっと2つの鉢を動かせた。
ご近所の方々
それからあとは、コンクリートに食い込むように、さらにその下の土に伸びている根っこの部分を、ハサミを使って、少しずつ分解するように切っていた。大丈夫だと思うけれど、これだけ太いと、根っこだけでも再生しそうな気がしたからだった。
そこへ、いつも家の前の道を通るご近所の男性が、その作業を見て、近づいて、話しかけてくれた。作業を進めながら、言葉をかわしたが、妻がほぼ話の相手をしてくれていた。
会話は、そのご近所の方のお宅の、植木の話になっていたようだった。
それから、次は、鉢から伸びている根を切ろうとしたが、ハサミではダメだったので、のこぎりで切ることになった。そんなに時間はかからなかったけれど、植物というよりは、日曜大工みたいな作業だと思った。
そうしていると、次は、ご近所の女性の方がきてくれた。
ビワの鉢を見て、その幹に、私はあまり気がつかなかったのだけど、アリがたくさんいたみたいで、そのための薬を持ってきてくれた。
私は、腕に蚊がたくさん寄ってきたので、そのために、外へ置いてもいい蚊取り線香を妻に頼んで出してもらって、ちょっと古いけど、何ヶ所かに火をつけて、根切りの場所に持って行く。
それから、さらに、まだ土の下に残っている根っこをもう少し切った。
ビワの葉
そのあとは、妻の言う通りに、ビワの枝を切った。
その作業をしている頃に、マスクをしてランナーの格好をして通りかかった男性に話しかけられた。
今年のビワは豊作でしたか?
ご近所もそうですけど、今年は豊作でした。
妻が答えて、それからビワにまつわる会話をして、その初めて言葉をかわした男性はあいさつをして、去っていった。
ビワの枝を切った。
大きい方は、1メートルくらい、小さい方は50センチは背が低くなった。
2つの鉢を元に戻した。
大きい方と、小さい方の位置を今までと逆にした。
小さい方の鉢の下部は、根っこで壊されたせいか、小さめの穴があいていて、このまま、また置いたら、根が出てきそうで、と思って、妻に、鉢の下の受け皿を探してもらって、それを置くことができた。
あとは、掃除や片付けは、ほとんどすべて妻にやってもらって、その全部が終わったら、45分がたっていた。
ビワのこれから
来年からは、ビワの実がなるかどうかは分からないらしくて、また実がなるためには、根っこがもっと伸びることになるから、両方は成り立たないらしい。
実がなると、道路を歩く人が、ビワのことを話題にしているのを聞いたりして、それがちょっとうれしかったりしたのだけど、これからは、それは難しいかもしれない。
それでも、妻に聞いたら、これで今のところ、安心した、と言ってくれたので、それは、よかった、と思った。
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