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読書感想(おちまこと)

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2025年2月の記事一覧

読書感想 『それでも女をやっていく』   ひらりさ  「正直な混沌」

 女性であることで、どれだけ考えることが増えるのか。  それは、昭和生まれの男性であると、やはり実感としてわかることはないのだと感じつつも、そのことを文章で表現してくれる人も多くなっているように思う。  どこでこの書籍を知ったのかは覚えていないものの、たぶん、「劇団雌猫」の活動があった上で、個人の書籍を出していくのは、仕事をしていくバランスとしては理想的な気もして、それで、興味を持てたのだと思う。  それは、自分が、どれだけ正直でいられるか、というようなストイックな気配

読書感想 『最近のウェブ、広告で読みにくくないですか?』 鈴木聖也 ---「メディアのリアルな、少し前の現在地」

 タイトルだけだと、どんな立場の人が書いているのかは、はっきりとは分かりにくい。  だけど、それほどヘビーユーザーではないにしても、インターネット上の情報に接しているときに、広告に立ち塞がられることが多くなったのは感じていたから、つい、その通りだと気持ちの中でうなずいてしまい、そのことに対する理由が書かれているのだと思い、失礼だけど、著者に関しては、全く知らない方だったのだけど、読みたくなった。  その期待にも応えてくれたのだけど、新書版というコンパクトで、200ページに

読書感想  『最愛の子ども』 松浦理英子「複雑なフィクションで描かれる擬似家族」

 松浦理英子という小説家の名前と、その作品のタイトルのいくつかは知っていた。  とても先鋭的だということ、さらには寡作だということ。  その内容を漏れ伝え聞いているだけだから、おそらく何かを語る資格はないのはわかっているのだけど、1978年にデビューしてから、最新作が2022年。9作の小説。ほぼ5年に1作というペースで、小説家としてやっていけること自体が、それだけ一作の完成度が高い、ということを証明しているように思う。  今回、別の人がすすめていることを知って、それまで