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読書感想(おちまこと)

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2024年10月の記事一覧

読書感想  『娘が母を殺すには?』   「歴史と知性の有効な使い方」

 自分が住んでいる地域の図書館に予約のシステムがあって、一人当たり12冊まではリクエストができる。登録すれば、同じ区内に蔵書があれば、直接出向かなくても、インターネット上の操作で、読みたい本をお願いできる。  その中には、場合によっては100人を超える予約者がいて、だから、その書籍が「準備できました」と言うメールをもらう頃には、いつ、どんな動機で読もうと思ったのかを、失礼なことだけど忘れていることもある。  そして、図書館に行って、書籍などを返して、借りてくる。    自

読書感想 『「権力」を握る人の法則』 「社会の現実を知るために」

 歳を重ねるほど、時々、自分の無力さに嫌になることがある。  自分なりに努力もし、それなりに能力も上げてきたはずなのだけど、社会的な成果が全くあげられていないし、あまりにも世の中での権力がない。権力というのは大げさとしても、あまりにも孤立し過ぎていないだろうかと思ったが、それについては、自分の性格のせいではないか、とも感じている。  それは、仕方がないと思ったり、結局、能力もなかったし、さらにはコネや運という大事な要素もなかったのでは、と改めて考えたりもする。  同時に

読書感想 『いなくなくならなくならないで』 向坂くじら  「あいまいな日常の緊張感と混乱」

 芥川賞の候補作。   誰が選んでいるのか、といえば、すごく単純化していえば、出版関係者のはずだ。  だけど、考えたら、出版社に入社する人間が、必ず小説好きとは限らない。もしくは、読むプロとして働き始めているわけでもない。そんなことを考えると、小説家が時折書いている、編集者と(どこまで本当かわからないとしても)もめている、という描写もなんとなくわかるような気もする。  だけど、芥川賞は、文藝春秋という出版社主催の賞にすぎないのに、今もまだ小説界の権威になり続けているのは

読書感想 『これはニュースではない』 速水健朗 「2020年代以降のカフェで読みたい本」

 とても個人的な感覚にすぎず、もしかしたら偏見に近い部分もあるのかもしれないけれど、声を聞いた瞬間にちょっと怖いと思ってしまう人がいる。  速水健朗、という人も、その1人だった。  決して凄みをきかせていたりするわけではないのだけれど、おそらくはすごく冷静な人で、自分自身が感情的な人間だから、そうした人を感覚的に怖いと思ってしまうだけなのだろうけれど、ただ、その怖いほどの冷静さが、ライター/編集者として、他の人にはない視点を提供してくれている印象がある。  ポッドキャス