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読書感想(おちまこと)

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2024年8月の記事一覧

読書感想 『つくる みせる たべる 弁当美術館』  「異次元のキャラ弁当」

 それほど多く知っているわけでもないのだけど、かなり前から、お弁当は、どうやら凝ることが常識の一つになっているらしい。  それは「キャラ弁」とも言われ、フィクションのかわいいキャラクターなどが、お弁当箱の上に再現されて、それはすごいことだと思うけれど、同時に、他にもやることが多いはずなのに、さらに時間と手間をかける大変さも想像してしまう。  だけど、この著者の「弁当」をテレビでみたときは、ちょっと違う感覚だった。  最初は、キャラターというよりは、例えば絵画の名作を再現

読書感想 『走る道化、浮かぶ日常』 「純粋な自意識」

 どうしてこの本を読もうとしたのか覚えていない。  これ読みたい、と思うと、その気持ち自体を忘れてしまうことも少し恐れているから、すぐに区の図書館が開設してくれているサイトがあって、そのマイページの「お気に入り」の項目に入れるので、その数は1000を超えた。  すごくありがたい機能だけど、自分がなんでも「お気に入り」に入れてしまうので、その中を探しても、見つからなくなったりする。  だから、「お気に入り」に入れるよりも、すぐに図書館に予約しても、人気があると100人以上

読書感想 『世界は経営でできている』  「本来の意味に戻る重要性」

 経済、という言葉に微妙な嫌悪感を抱いてしまうのは、自分が経済的には、敗者だからだと思う。 経済の語源 そして、経済を語る人たちの一群の人たちの不思議な高揚感と、今は経済に詳しい人が、社会のあらゆることを語る資格を持っているかのような自信満々すぎる振る舞いを、つい思い出してしまうからだと思う。  ただ、経済の元々の意味を知ると、その思いが少し変わる。  この英語と、日本語の起源を知ると、すでに微妙なズレがあるが、この「経世済民」の略が経済だとすると、社会を良くして、「民

読書感想 『いとをかしき20世紀美術』  「アートを理解するための良質な教科書」  

 それまで全く興味がなかったのに、ある展覧会を見て、急にアート、それも現代アートと言われる分野を勝手に身近に感じるようになった。  それから、20年以上、細々とだけど、ずっとアートを見続けてきた。  その間に、特に現代アートと言われる分野に興味を持つと、例えば、現代アートではなく現代美術と表したほうがいいのだろうか。とか、作品を理解するためにその歴史や背景を知らないと、本当には理解できないかもしれないなどと思うようにもなった。  作品を見ていて、最初は見えなかった、その意

読書感想 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』  「社会の本質的な変化への願い」

 世界は、よくなっていかない。  人類が滅亡するのは、もう避けられないのではないか。  もう少し若い頃は、もしかしたら人類はよくなっていくのではないか。といったことも考えたりもしたのだけど、21世紀になってからの、自分では直接的には感じられない社会の動き---ロシアのウクライナへの攻撃や、ガザでの戦闘といったこと---最近でいえばまだ収束していないコロナ禍というパンデミックへの対応を身近で感じたりすると、世界が良くなるのは、もう無理ではないかと思うようになった。  だから