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読書感想(おちまこと)

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2024年4月の記事一覧

読書感想 『地雷グリコ』 「〝カイジ〟の系譜」

 ミステリーが、あまり好きではない。  それは、謎に引っ張られると、その過程を読むことが、どこかおろそかになるような気がするのと、最初に誰かが殺されたりすることが多いから、かもしれないけれど、ただ、この印象自体が、本当にミステリーが好きな人や詳しい人から見ると未熟なことかもしれない、という気持ちはずっとある。  さらに、何かに向かって緻密に物事を組み立てることや、ルールを理解する能力が低いため、伏線や謎解きがよく分からない、という個人的な問題もあるため、もともとミステリー

読書感想 『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』  「これほどの環境の悪さ」

 何しろ、タイトルがストレートで、しかも、知りたいことでもあった。  自分自身は、日本の会社員でいた時期が3年ほどしかないので、本当の意味ではそれほど分かっていないとは思うのだけど、それでも、縮小していくような、ひたすら心身を縮こませていくような30年だった、という実感は共有できると思っていた。  だけど、どこかで「やる気」のようなものは個人の問題が大きかったし、働き始めた頃、少しだけ上の先輩に、いかに有給を取るか。という話しかしなかった人もいたし、その時代には、仕事とプ

読書感想  『Blue』 川野芽生  . 「カテゴライズの暴力性」

 どこかで誰かがすすめていた。  そのどこかも誰かも忘れる頃、読む機会ができた。  読み進めていくと、主人公の高校生は、男性であるのだけど、本人の性自認は、どうやら女性で、将来は性別適合手術を受けることを目指していることを知る。  それで、それほど知らないはずなのに、トランスジェンダー女性、という言葉が浮かび、自分でもほぼ無意識のうちに、主人公の過去や、それから先の未来のようなものを想像していた。 『Blue』 川野芽生  例えば、男性に生まれながら、そのことに違和感が

読書感想 『〈公正〉を乗りこなす 正義の反対は別の正義か』  「考え続けるための親切なガイドブック」

 本が売れなくなった、と言われてからが長い。  電子書籍が登場する前から、記憶にある限り、出版不況という言葉しか聞いたことがなかった。どうやら戦後すぐの頃は、本がすごく売れた時代があったらしい、という話を、それこそ書籍などで読んだことがあるけれど、ぼんやりとしたイメージしか浮かばない。  そして、今は紙の本の存在自体が危うくなっているし、電車の中などではほとんどの人がスマホを見ていて、本を読んでいる人がいるだけで珍しいと思うようになっている。 100分de名著 それでも