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読書感想(おちまこと)

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2024年3月の記事一覧

読書感想 『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』  「負けた相手も主役にできるすごさ」

 羽生結弦、大谷翔平、そして井上尚弥。  スポーツの世界で、日本から、これまで存在しないような突出したプレーヤーが一気に現れ始めた。それも、それほど関心がない人間にまで、その凄さが届きやすく、しかも少し古い表現になるとは思うが、心技体のバランスが良く、欠点が見当たりにくい、という共通点もある。  個人的には、日本という国自体が衰退していく分だけ、特定の個人に才能が凝縮するような傾向になっているのかもしれない、と根拠のない印象を抱いたりもしているのだけど、このアスリートたち

『宗教右派とフェミニズム』  「〝支持政党なし52%〟のための大事な情報」

 タイトルに「宗教右派」と「フェミニズム」が並んでいると、かなり特殊な話だと思ってしまうし、そしてどこかで構えるような気持ちにもなる。  ただ、「フェミニズム」が、「宗教右派」に、想像以上に攻撃を受け続けてきた歴史があったことを、この本を読んで改めて知った。  最近、「支持政党なし」が、久しぶりに50%を超えたという報道を知った。  自分もそうだけど、そういう人たちにこそ、この本を読んでもらいたいと思ったのは、政治に関して考える時の大事な情報だと感じたからだ。  だか

読書感想 『熱血シュークリーム』  橋本治 「独特の本物」

 本を読む習慣はほとんどなかったから、20代の頃から細々とながら、ずっと読み続けている著者は、もっと少ない。 読書習慣 それは、時代が変わると、著者の視点がずれていくように思えたり、自分自身が変わることによって生意気な言い方だが、読めなくなったりしたこともあった。  だけどその中で最初から、あまりにも他の著者と違って独特で戸惑いを感じるくらいだったが、その後何十年も印象が変わらず、凄さを伝えてくれる著者が橋本治だった。  あまりにも膨大で全部を読んでいるわけではなかった

読書感想 『啓蒙思想2.0 ー 政治・経済・生活を正気に戻すために』 「絶望の前に知っておくべきこと」

 本を読むきっかけは、いろいろなところにあるけれど、今回の場合は、テレビだった。  こうした「サブカルチャー」の歴史を映像で振り返っている番組を見ていると、1990年代以降であっても、自分がどれだけ映画を見ていないか。さらには、この番組はアメリカを中心に紹介されているから、こんなに歴史の出来事を知らないのか。もしくは、そのことに衝撃を受けていたはずなのに、どれだけ忘れているかを確認して、そのことにちょっとしたショックを受ける。  こういう番組は、必ず「評論家」的な人たちが

読書感想 『「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ』  「過去との戦い」

 今は当たり前のように、毎日のようにカメラというよりはスマホで写真は撮られ続けているから、昔と比べて、写真家の価値や地位の変化もあるとは想像もできるのだけど、20世紀末に、若い女性の写真家が注目を浴びた時期は、写真家が今よりも輝かしく見えていたのは間違いない。  HIROMIX、という10代の女性の写真家が、自分にとって大事だと思われる身近な人たちを撮影した作品が、今のこの瞬間はすぐに過去になってしまうことを、これだけ伝えてくれるのはすごいと思ったのは覚えている。  その