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読書感想(おちまこと)

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2024年2月の記事一覧

読書感想 『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと』       和田靜香      「無知の知の生かし方」

 長くフリーでライターをしてきて、書き手としてはベテランだけど、政治に関しては、ここ何年かで初めて取り組み始めたのが著者だというのは知っていた。  そして、その著書も読んで、とても新鮮だったのは、もともとは政治に関しては知らないかもしれないけれど、知ろうとする意欲と、理解力、さらには取材力もあって、わかっていく過程が、おそらくは隠すことなく書かれていたからだった。  それは、読者の理解も促してくれる方法だったと思う。  同時に、バブル期は仕事もたくさんあっただろうけれど

読書感想 『ヘンな日本美術史』  「表現の本質」

 著者は、現役の画家でもある。  1990年代に「コタツ派」という展覧会で作品を見て以来、ずっと描き続けている印象がある。  そのうちに、新聞広告などでも作品を目にするようになり、時々、テレビなどで話をしているのを見ることもあるから、気がついたら著名なアーティストになっていた。  こうした展覧会↑も一見、柔らかいというか、分かりにくいようなタイトルがあるものの、そこでは特に明治以来の日本の美術について本質に迫るような試みがされていたし、この「ヘンな日本美術史」も「ヘン」

読書感想 『苦役列車』  「正直を極めることの美しさ」

 その作家は、21世紀には、もしかしたら珍しい存在になった「私小説作家」であることは知っていた。それは、芥川賞受賞会見での受け答えでの印象とも真っ直ぐにつながっていた。  それでも興味がありながらも、読めなかったのは、自分が、ちょっと怖く感じていたのだろうと思うけれど、その西村賢太に関するドキュメンタリーは見た。  その中で、著名な人だけではなく、いわゆる西村賢太のファンでもある人も出てきて、かなり熱心に語り、同時に、自身の配偶者の女性にもすすめて、だけど、その女性は、か

読書感想 『プレカリアートの憂鬱』  「今でも届く叫び」

 著者の名前は、知っていた。  テレビなどの討論番組でも一時期、よく見かけることがあった。  それも、バンギャル、右翼活動、フリーターという、当事者としての経験があるからこそ、その言葉には説得力を感じることもあった。 「この頃」とは、2007年頃で、たぶん、私が知ったのも同時期だったと思う。そして、著者にとっては代表作ではないかもしれないけれど、2009年に出版された本を随分と年月が経ってから読み、そして、自分自身も、収入が増えるあてがないのに、様々なものの値上げで悲しい