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読書感想(おちまこと)

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2023年3月の記事一覧

読書感想  『ネット右翼になった父』  鈴木大介  「分断から理解への切実な過程」

 大人になると、高齢者の親と会う機会がどうしても減るようになり、そして、久しぶりに会ったときに、いわゆる「ネット右翼」になってしまった。  そんなエピソードを、自分は直接出会うことはないのに、あちこちで目にするようになった。  それは、本当だろうか。という疑念と、同時に、確かにありそうだという感触と、そこに立ち会ってしまった人の思いを想像すると、なんとも言えない気持ちになった。  だけど、少しでも考えたら分かるのだけど、そこで終わりではなく、そこから、まだ長い時間が続く

読書感想 『パラレルワールドのようなもの』 文月悠光 「その時の言葉、その時の気持ち」

 誰かが、どこかですすめていて、それで興味を持って、図書館に予約をして、忘れていた頃に、地元の図書館に届いたと連絡をもらって、自転車に乗って、借りに行った。  手元に来て、ページを開いたら、それは詩集だと気がついた。  著者には失礼だと思ったけれど、その著者の詩は初めて読んだ。 『パラレルワールドのようなもの』 文月悠光  自分が知っている現代詩は、そこに触れる時に、ある種の覚悟のようなものが必要だと感じていた。  そこにある言葉は、普段使っているものとは、全く違って

読書感想 『望まない孤独』 大空幸星   「支援の本質」

 ニュースなどで見て、著者のことは知っていた。  ただ、失礼ながら、相談窓口をつくった大学生、というくらいしか知らなかったし、見た目もさわやかな、若いエリートだと思っていた。  しかも名前が、おおぞらこうき。本名らしい。  だけど、著書を読んで、人は表面的な見た目だけでは分からないことを、また知った。 『望まない孤独』 大空幸星 著者本人は、それほどの強い表現をしてないのだけど、読者にとっては、著者は、かなりハードな家庭環境の中で育ってきて、生きる目標といったこともイ

読書感想  『52ヘルツのくじらたち』 町田そのこ 「孤独の果てにあるもの」

「本屋大賞」受賞作、と言われると、前は、気持ち的には避けていたのだけど、やっぱり、選ばれるだけの理由があるのかもと思うようになって、だけど、申し訳ないのだけど、自分が経済的に貧しいこともあり、購入する気持ちにまではなれず、図書館で予約した。  そこには、予約者の人数が掲示されるのだけど、三桁になっていて、11ヶ月待って、手元に届いた。  人気作家、というのは、こういうことだと改めて知った。 (※この先は、小説の内容にも触れています。未読の方で、何も情報を知らないまま読み