マガジンのカバー画像

読書感想(おちまこと)

252
読んだ本の感想を書いています。
運営しているクリエイター

2023年1月の記事一覧

読書感想 『その働き方、あと何年できますか?』 木暮太一 「生き方まで、問われる本」

 この著者の本は何冊か読んでいた。  自分の理解の範囲内で言えば、少し色合いの違うビジネス書、というイメージだった。  それは、読んだ時に、根拠のない元気ややる気が出てくるけれど、次の日には、その内容ではなく、その気持ちだけが残り、だから、何かの時に、また同じ著書の違う本を読みたくなる。そういうよくあるパターンではなく、もう少し違う感触があったせいだ。  それが、どういうことなのかが気になっていたのだけど、今回、この本を読んで、その理由が分かった気がした。 『その働き

読書感想 『とりあえずお湯わかせ』 柚木麻子 「コロナ禍の育児と生活のリアル」

 この作者の別の作品は、以前に読んだことがあった。  若い人にすすめられて「終点のあの子」を読んだ。自分からは、遠すぎる存在である女子高生の小説。  しかも、私立の学校のような雰囲気で、自分にとっては、さらに遠いことなのに、リアルで身近に感じた。それは、作者の文章の力のおかげだと思う。 『とりあえずお湯わかせ』 柚木麻子 作者が出産直後の2018年から、2022年までのエッセイ集。それも、日記に近い内容で、かなり率直に文章にして、残してくれている。  例えば、2019

読書感想  『ここは、おしまいの地』 こだま 「とても静かな視線」

 著者は、今も名前も顔も出さずに執筆を続けている。  最初の著書が「夫のちんぽが入らない」で、タイトルがセンセーショナルで、ドラマ化もされたのだけど、その内容は、とても切実だった。  それだけ、話題になったのに、著者が誰であるのか、どこに住んでいるのか、そんなことが一切明らかにならない。  さらには、2022年現在で、声を変えてラジオ出演をしたときにも、まだ家族にもバレていない、と語っていたが、そのことで、その住んでいるところが、隔絶されていて、この著書のタイトルが大げ

読書感想 『女の子の謎を解く』  三宅香帆  「視界が明るくなる批評」

 どこかの本で引用されていて、とても気になったので、読みたくなった気持ちは覚えているのだけど、具体的に、何を知りたかったのは忘れてしまっていた。  そんな失礼な状況で、しかも申し訳ないのだけど、著者のことを知らないままだった。プロフィールでは1994年生まれだから、まだ20代のはずで、なんの事前情報もなく読み始めたのだけど、途中から、自分の視界が明るくなっているような気がしたのは、その書き方がとても明晰で、世界の見え方が少し変わったからだと思った。 『女の子の謎を解く』