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読書感想(おちまこと)

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2021年4月の記事一覧

読書感想 『アーモンド』 ソン・ウォンピョン 「成長という奇跡」

 今になってみれば、誰が話していたのかは覚えていないけれど、とても「熱」を持って、この作品をススメていた印象だけが、ぼんやりと残っている。  「アーモンド」という題名。それは、その内容についての推測を拒むようなタイトルだったし、そのストーリーについて、ほとんど何も知らない状態で読み始めた。  それは、読み終わった後でいえば、とても幸運なことだと思う。  だから、本当であれば、ここで、この作品のことを書くのをやめて、ただ勧めて終わる、というのが正解かもしれないが、それで済む

読書感想 『美容は自尊心の筋トレ』 長田杏奈 「自分を大事にする、具体的な方法」

 美容、という言葉の響きは独特で、他の単語と間違えにくく、そして、昭和生まれの男性にとっては、とても縁遠い言葉だった。  最近になって、肌にニベアの「青缶」を使うようになったものの、それだけの小さすぎる経験では、とても理解できないことが、「美容」という二文字に入っていて、そして、広がっていることに、いろいろなことを知るたびに、分かっていたような気になっていた。  だけど、そこからさらに、もっと大事なことまで、この本は、これだけ「美容」に縁遠い人間にまで教えてくれたように思

読書感想 『なぜ日本人は世間と寝たがるのか』 佐藤直樹 「知っておくべき怖さ」

 強めのタイトルだと思った。  普通ならば避けたいところなのだけど、何かで著者の言葉に触れて、少なくとも、「世間学」というものを少しでも知っておかないといけない、という気持ちになっていたから、読み始める。  読み進めると、このタイトルを採用したのは、それだけ伝えたい動機が強い、ということだと分かってくる。この内容は、知っておくべきことで、知っておかないといけないことだ。だけど、今まで知っているはずなのに、気がつかないことだと分かってくる。  こういう言葉にしにくい、ややこ

読書感想 『推し、燃ゆ』 宇佐美りん 「今の生き方の記録」

 息を止めて、全力疾走した気がした。  小説を読んでいるだけなのに、読み終えた時に、そんな感じがした。 『推し、燃ゆ』  宇佐美りん  考えたら、いつの間にか「推し」という言葉を、「追っかけ」より、よく聞くようになった。追っかけ、というような「行為の言葉」の時とは何が違うのだろう、と思う。  どちらも同じように聞こえるかもしれないけれど「追っかけ」という言葉には、どこかに「いつか終わる」というようなニュアンスがあるように感じていた。  だけど「推し」という言葉は、たぶん