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読書感想(おちまこと)

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読んだ本の感想を書いています。
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2021年3月の記事一覧

「読書感想 50回」の、ベスト5。

 1年間、noteを続けてきて、ほぼ毎週、土曜日に「読書感想」として、読んだ本のことを書いてきました。最初は、この「読書感想」をnoteの中心にしようと思っていたのですが、書いているうちに、他にもいろいろなことを書きたくなって、noteが続いています。  ところで、個人的なことに過ぎませんが、その「読書感想」が、先週で、ちょうど50回目を迎えることができました。  このnoteにはダッシュボードがあり、「ビュー」数によって、どのくらい読まれたかの目安になります。投稿した時

読書感想 『ルポ百田尚樹現象』  「“ごく普通の人”の怖さ」

 百田尚樹という人を、テレビ画面を通じて初めて見た時は、印象が強いわけでもなかった。文章について語っているけれど、それは、比べるのはおかしいのだけど、柴崎友香や保坂和志のように、予想もつかないことを言うわけでもなく、番組のホストである漫才師とタレントにも、ずっと自然に気を配っている姿があった。  ただ、あとになってみれば、誰かが言ったように、社会に一番多くいるような人たちと、同じ感覚を持っているとすれば、その人が「普通」に書くものが「普通の人」に最も受けるはず、を体現してい

読書感想 『旅する練習』 乗代雄介 「人生のすべてが詰まった時間」

 小説家の叔父と、サッカーに祝福されているような小学生の姪。  その二人の千葉から鹿島までの旅。  叔父は、風景描写を。  姪は、サッカーを。  それぞれが練習しながら、利根川沿いを歩いて、旅をしていく。  それは、コロナ禍だから、奇跡的に実現したような時間だった。 「旅する練習」  乗代雄介  姪が、黙って借りたままになっている本を返しにいく、といった目的や、叔父と姪が二人で歩いて旅行に行くことも含めて、条件だけ並べていると、設定に、やや無理があるのではないか、と作者以外

読書感想 『わたしたちが光の速さで進めないなら』 キム・チョヨプ 「とても遠い先の、こまやかな出来事」。

 深夜のテレビ番組を録画して見ていた。そこで、一人の作家のコメントが、印象に残った。  それは、「人類の滅亡」という大きめのテーマについて話している時の言葉だった。  この前、外を歩いているときに、マスクに髪の毛が一本はさまった。それを取ろうとして、マスクを外して、髪の毛をはらった。その時は、何も感じなかったのだけど、その後、ふと、そこで感染してもおかしくなかった、と思った。  大きな出来事に対して、すごく日常的で、細やかなのに、それでも大きなこととつながっているような