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読書感想(おちまこと)

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2021年1月の記事一覧

読書感想 『悔しみノート』 「正しい青春の記録」

    ラジオを聞いていて、気になる話があった。  最近、ラジオをきっかけで読む本が改めてすごく多いと思い、少し恥ずかしいくらいだけど、それでも、この時の引っかかり方は、ただ「いい本があります」という紹介ではなかったので、余計に気にかかったのだと思う。  その時は、ややぼんやりとして聞いていたので、要約も微妙にあいまいだけど、リスナーからの相談があった、それに対して、パーソナリティのジェーン・スー氏が課題を出した。話はそこで終わらず、その課題が本になった。だから、自分の責任

読書感想 『残酷人生論』 池田晶子 「届く力がある言葉」

 何もやる気がしなくて、この先にどうしたらいいか分からなくて、未来には、またロクでもないことしか待っていなくて、そういう時には、生きている意味みたいなものはないとも思えて、これまでの自分を振り返っても、何もやってなくて、過去の蓄積のなさに、また暗くなる。  そんなことは、時々あって、かなり辛い時には、本当に何も出来ないけれど、ふと、何のキッカケか思い出せないのだけど、「ほんの少しでもいいから、まともになりたい」と思ったことがある。  自分の大変さとか、辛さとかは、たぶん、

読書感想 『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』 「頭の良さの、とても正しい使い方」

 瀧本哲史、という著者の名前は、何年か前に聞いたことがあって、何冊か本を読み、京都大学で講義をしているのも知り、こうした講義を受けられる京大生をうらやましく思った記憶はある。  何しろ、頭がいい人、という印象だったけれど、その頃は年齢も非公開で、若いのだろうけど、成功の仕方も、他に例が少ないのでイメージがしにくく、どこか実在感が薄くさえ感じていた。  読んで、感心もしたけれど、そこで学んだと思たことを、生かせていないのではないか、というような思いがありながら時間も経ち、瀧

読書感想 『みんなの「わがまま」入門』 富永京子 「とても親切な社会運動ガイドブック」。

 「わがまま」という言葉は、もっとそれぞれの人が自由に生きられるようになれば、使われなくなるのだと思っていた。  同時に「人に迷惑をかけるな」というような内面化しやすいルールの強制力も、弱くなっていくと思っていたのだけど、時代は進んでいるはずなのに、「自己責任」という言葉の使われ方が、やたらと広く強くなってきたために、「わがまま」は「迷惑をかけること」として嫌がられる度合いが、また強くなってきているようにさえ思う。  そのことによって規律正しい社会になって安全性が増して安

読書感想 『私はあなたの瞳の林檎』 舞城王太郎 「“世界”に巻き込む圧倒的な力」

 舞城王太郎を読んで、面白いと思って、その後に微妙に不安になることがある。  すでに安定したベテランの書き手になっているはずなのだけど、読むたびに、新鮮な印象があって、ただ、そう感じる自分が、「心の若づくり」をしているのではないか、という自意識過剰な不安に襲われる。それだけ、読んでいる間は、その書かれている“世界”に自分がいて、いつもと違う感覚になっているから、余計に、そんな気がするのだと思う。 『私はあなたの瞳の林檎』  2018年に、舞城王太郎は、2ヶ月で2冊の本を続