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読書感想(おちまこと)

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2020年12月の記事一覧

読書感想 『破局』 遠野遥 「語られていないこと」

 よく考えたら、文藝春秋という出版社の「賞」に過ぎないのに、今も文学界の中で最も注目もされ、その「賞」をとったかとらないかで、昔で言えば歌手にとっての「紅白」に出ているか出ていないかに近いほどの違いが今だにあり、一般的なニュースにもなるから、不思議な気持ちになる。  そして、今年は、コロナ禍という特殊な状況の中での芥川賞・直木賞の発表があり、授賞式があり、芥川賞は2人が受賞し、高山羽根子(リンクあり)と、遠野遥だった。  遠野は、初めての平成生まれの受賞者であり、記者会見

読書感想 『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』 小川たまか   「切り捨てないためのガイドブック」

 ラジオのポッドキャストを聴いていて、ふと、今の社会の状況が、これからしばらく先の進むべき方向が、イメージできた気がした。  2020年12月1日。ゲストの深澤真紀氏(コラムニスト、獨協大学特任教授)は、「アウティング」の裁判について話をしていた。そして、そういうことも含めて、これからの多様性社会というのは、お花畑になるのではなく、とても気を遣うことが多くなり、面倒臭い社会になっていくことだけど、でも、それは当然の手間と考えて、やっていくしかない、といった内容だった。