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読書感想(おちまこと)

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2020年10月の記事一覧

読書感想 『封建主義者かく語りき』 呉智英 「ポスト民主主義の時代の必読書」

 どんなことにも「ポスト」をつけると、なんとなく頭が良さそうに見える時代があったと思う。最初に聞いたのは「ポストモダン」という言葉だったけれど、今でも本当に理解できているかどうか分からない。ただ、「ポスト」を頭につけると、そのつけられた言葉や思想や考えなどは、「終わってる」と言われているように見えたりもする。  「ポスト・デモクラシー」ということを主張している人(リンクあり)もいるものの、その言葉が「ポストモダン」のように広まらないのは、その主張している人も、そして、もしか

読書感想 『カレンの台所』 滝沢カレン 「身体言語で書かれた励ましの料理本」

 テレビの出演者にとって、キャラ作りは必要なことらしく、だから、無理をして、「変な言葉」を話す人は、ここ10年くらいは特に増えていた。それが、もし「作っている」感じがして検討され、実は「作っていて」、ある意味で「うそ」だったら、叩かれる。  そんな言葉があるかどうか、恥ずかしながらはっきりとは知らないけれど、「あざとさ警察」や「天然疑惑警察」は存在しそうで、そうした人たちは、疑惑がある人の現在だけでなく、過去のささいなことまで、目を光らせているから、「不自然」なキャラ作りの

『さよなら、俺たち』 清田隆之 「進化のための痛みの記録」。

 著者・清田隆之氏の経験というのは、たぶん、特殊だと思う。  学生時代から、「恋バナ」を集めるという行為を続け、それは、集めるとはいっても、人に話を聞く、ということだから、人と人とが会って、プライベートなことを話をしてもらって、聞いてを繰り返していくこと自体が、その聞き手にとっても、想像以上に、人としての変化を促すことだと思う。  その長年の「成果」を、これまで著書として発表したり、メディアで話してきたり、それらを、こちらも読んだり聞いたりすることで、「男性の、あるある話」

読書感想 『性犯罪被害にあうということ』 小林美佳 「性犯罪の理解に近づくための必読書」

 性犯罪被害については、男性として生きてきて、それほどの関心を持たないでこられたのは、単なる幸運と無知のせいだということを少しはわかるようになったのは、21世紀になって、様々な情報に接するようになったからだと思う。  それだけ、知ることは重要で、もちろん様々な被害者や当事者の気持ちに関しては、本当に分かったり、理解することは、おそらくは不可能だと思う。だけど、全く違う分野だから、比較するのは失礼だとも思うのだけど、自分自身が、家族の介護をしていて、その時間の中で周囲の人たち

読書感想 『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』 樋口耕太郎 「2020年現在の必読書」

 沖縄に何度か行ったことがある。  初夏の石垣島は、とても太陽が強かった。空港に降りた時は、初めて空港の地面を歩き、荷物を受け取るところには、地元の英雄・具志堅用高の写真が誇らしげに飾られていた。島の道路を走っていると、左右に牛がいた。時間の流れが違って感じた。  12月の沖縄本島は、まだ寒くなかった。  海はある地点までは、緑とモスグリーンの間の色で、とても澄んでいて、ある地点から、急に濃い青い色に変わっていた。  そんな海は見たことがなかった。  それから、ずいぶん長い