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読書感想(おちまこと)

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2020年9月の記事一覧

読書感想 『百年と一日』 柴崎友香 「神様の覚書、天使のスケッチ」

 「時間は存在しない」というような言葉を聞いたことがあって、確かに「時間」はないと思うことがある。「時間」だけを取り出すことが出来ないが、だけど、生きている「時間」というような言い方はしっくりとくるし、それ以外に表現が難しい。 「百年と一日」  柴崎友香  人間が生きていて、その間の「変化」そのものが、「時間」とイコールなのかもしれない、と思えるくらい、この小説の中では、10年や20年は、すぐに、流れる、というより、経っていく。  そして、長い「時間」も、あっさりと1行で

読書感想 『橋本治のかけこみ人生相談』 橋本治  「人生相談の最高峰」

  この「読書感想」を始めようと思った理由の一つが、「橋本治の本を紹介したい」(リンクあり)だったのですが、まだ1冊しか紹介していなくて、個人的な理由で申し訳ないのですが、どこか焦りもあります。今回は、2冊目になります。 人生経験による「人生相談」  これまで、というより、今現在も、人生相談の主流というのは、2つのパターンがある。それは、別に私が指摘するまでもなく、常識的なことであって、それが、相談を受ける人としての条件みたいになっている、ということなのだけど、こんなシステ

読書感想 『「許せない」がやめられない』 坂爪真吾 「新しい『依存症』の発見」

 私はツイッターをしていない。  だけど、ツイートは毎日のように見ていて、この人のは面白い、と思ったら、ブックマークをして、そのたびにクリックして、読んでいる。そこで見つけて、出かけられたイベントも少なくない。   その、のんびりした方法は、携帯のスマホも持っていなくて(リンクあり)、ノートブックのコンピューターだけを持っている、という個別で特殊な事情のせいだと思う。さらには、フェイスブックも、インスタグラムも利用していない。このnoteが初めてのSNSで、それもまだ、やっ

読書感想 『トラウマ』 宮地尚子 「トラウマの希望や豊かさ」

 これは、ごく常識的なことなのだけれど、「トラウマ」というのは、最初は本当に専門用語であって、ごく狭い世界で、限定的な使われ方をしてきた。それから、ずいぶんと時間がたち、いつのまにか、日常的に「トラウマ」は使用されるようになってきて、それは「精神分析学」の歴史の凄さ、という言い方もできるかもしれない。  そうなると、「そのトラウマという言葉の使い方は、おかしい」とか、「正確ではない」と言われることも増えてくるし、確かに使いすぎることによって、何が重大なのか分からなくなる可能