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読書感想(おちまこと)

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2020年4月の記事一覧

読書感想 『デッドライン 』 千葉雅也 「思考することの、さわやかさ」

 いつもじゃない図書館で借りてきて、読んだ。(その日のことは、ここをクリックすると、リンクしています)  本当は、本というのは、買って、所有して、読んで、ということが正統というか、王道だという思いはあるので、ここ10年以上、ずっと図書館利用の方が圧倒的に多くなってしまって いるのは、ふと思うと、ちょっと後ろめたい気持ちはある。でも、今の自分の貧乏状態では、そうでないと本を読めないので、図書館というシステムは、本当にありがたい。いつもじゃない図書館になっていても、予約したら、

読書感想 「純度の高い強いつながりを描いている3作」ー 「平場の月」「夫のちんぽが入らない」「最高の任務」。

 どの本も、お恥ずかしい話ですが、かなり下世話な興味から読み始め、途中でとまどいも含めて読み進め、読み終える頃には、これも恥ずかしい表現ですが、澄んだ気持ちになれる作品ばかりでした。そして、どれも、知性への深い信頼というものが支えているような印象も残りました。  3作とも、今さら、というようなタイミングでの感想ですが、どれか1冊でも読んで、相性がよければ、他の2冊もつながっていくように読めるのでは、と思います。個人的には、偶然ですが、この3冊をほぼ同じ時期に読むことができま

読書感想 「それを、真の名で呼ぶならばー危機の時代と言葉の力」  レベッカ・ソルニット 著  渡辺由佳里 訳

 読み始めて、読み進めて、どんどんアメリカが遠くなっていくような気持ちになった。  それは、とても個人的な感覚に過ぎず、他の方々は違うのかもしれないけれど、アメリカの社会に興味が持てなくなっているような気がした。  それは、今の新型コロナウイルス のために緊張が続いている状況で、自分の余裕がなくなっていて、目の前のこと以外に興味が持てないという、視野の狭い発想になっているせいかもしれない。  その本が、「それを、真(まこと)の名で呼ぶならばー危機の時代と言葉の力」(レベッカ

読書感想 『ケアへのまなざし』   「存在そのもので支えるセラピスト」

神谷美恵子、という名前は知っては、いた。 なんとなく、読まなくてはいけない人、として覚えていたのだけど、自分にとっては、重すぎるのではないか、というようなことを思っていたのは、読むと、自分を振り返り、反省することがたくさん出てきそうな予感があったからだ。  今の自分は経済的に、図書館で読むことが主流になっているので、著者名で検索して、予約数が少なくて、すぐ読める本にした。改めて書くと、こうした過程自体が、微妙に後ろめたさを感じるのだけど、とにかく予約をして、そして、いつもじ