見出し画像

タイ旅行記【チェンライ編〜タイ山岳民族との出逢い〜】

え、チェンライってどこの?ってなる人も多いかと思う。インドとかにもあるよね、おんなじ発音の町。
タイのチェンライ県は、チェンマイの隣に位置する国境の街で、第2主要都市のチェンマイから車で3時間ちょい、バスだと4時間半ほどかかるやや田舎である。
写真だけ見ると何だか日本の田舎のようだが、よく見るとバナナとかが無尽蔵に生えている(笑)

前回、チェンマイで知り合った人はチェンライに住んでいる人だったので、広げた荷物はそのままに、身一つで帰りの車に乗せてもらった。
チェンライはやや田舎だがそれなりに観光地でもあるので、泊まる所はすぐ見つかる。

チェンライで紹介してもらった山岳民族のアリヤさんによると、イギリスがミャンマーを植民地化した際に、イギリスからの宣教者がタイにも流れてきてキリスト教が広まり、後にカトリックの宣教者も入ってきたためカトリック人口も多いとのこと。タイは仏教国と思われているが、元々は土着の精霊信仰があった国で、今でもその名残はあるが純粋な精霊信仰の信者は数少なくなったのだとか。

話しの流れで、このアリヤさんの半生にも触れることになった。
アリヤさんは、同じアカ族出身の妻さんと二人で山岳民族の子供たちが学校に通うためのNGOをやっている。そもそもは、職業訓練校(高等学校)卒業後、興味があって日本の大学の調査にボランティアとして加わったのだそう。そして、その調査を通して山岳民族の特に女性達の地位の低さの問題が明るみになり、アリヤさんは独立して女性達のエンパワーメントと次世代の教育支援を行う団体を始め、かれこれ30年近く支援を続けてこられたんだとか。

私も、アリヤさんの運営している寮に泊めてもらった。

そもそも、なぜ山岳民族の子供たちに教育支援が必要なのか?
タイ北部には、約48の少数民族がおり、中国やミャンマー、ラオスなどから様々な時代に移ってきたと言う背景がある。その事から、タイ山岳少数民族はタイの国籍やIDが得にくく、保険が使えないので病院に行きにくかったり、バスや飛行機などの公共交通機関が使えなかったり、車が持てなかったり、土地や家も買えず、雇用につきにくかったり、学校に入学しにくかったりと言った特有の困難があり、貧困に落ち入りやすい現状が今でもあるのだそう。その中でも女性たちの地位は低く、女性は男性の所有物と言う価値観が古くからあり、女性は特に教育が受けづらく、人身売買や売春へ結びつきやすい状況もみられ、また教育水準が低いために、10代での出産と結婚、家庭内暴力や離婚に伴う機能不全家庭での子供たちの問題もあるんだと、アリヤさんは渋い顔で教えてくれた。
 アリヤさんの団体では、山岳民族の女性の自立支援と子供たちへの支援を軸に、山村の女性たちや子供たちへの人権や法律、技能習得のためのセミナーの実施、そして主たる活動として子供たちへの教育支援を行ってきたんだそう。教育支援の柱は、食事付きの無料の寮と学用品や学費の支援。加えて、国籍(IDカード)取得の支援、学校との交渉、奨学金援助、必要に応じた家庭訪問。この支援を卒業後は、全ての子供たちが大学や専門学校へ進学したり、就職して自立していき、貧困に戻ってしまう人はいないよとアリヤさんは語った。
ん?学校との交渉?なんの?ってなるけど、時折子供たちが入学拒否に合うことがあるんだそう。なぜかって?無国籍状態だから。一般的にタイ国民には当然与えられる国籍が山岳民族の子供たちには与えられていない、又は取得しづらいのだ。タイ生まれ、タイ育ち、タイ語しか話せなくても、タイどころかどの国の国籍も持たない彼らには、国籍取得のための沢山の試練が待ち受けている。
タイの国籍を得るためにはいくつかのルートがあり、
①もし両親のどちらかが国籍を持っていれば、血縁を証明するDNA鑑定
②過去の法的調査で国民とみなされた民族であるという証明
③高等学校卒業までに成績優秀で秀でた賞を受賞する
④大学を卒業する
などである。
ちなみに、タイ国民でも両親が出生届けを出さないまま大きくなってしまった子供たちにも①の方法が適用される。
DNA鑑定は簡単なように見えるが、手続きには何万バーツとかかる。最低賃金が日給300バーツぐらいと思うと、経済的に出せないという親がいるのも分かる。

ここまで来ると、アリヤさんの活動の重要性がまざまざと見えてくる。

翌朝、「山を案内しようか?」と言うアリヤさんにお願いしますと答え、山を案内してもらっている間にもいろいろな人たちがアリヤさんに相談を持ちかけていた。帰りには、夏休みにも関わらず自宅に居られないと言う女の子をトラックの荷台に乗せて寮に帰ったほどだ。

山を案内してもらったアリヤさんに心ばかりのお礼を渡し、「私で良かったら、何でも手伝わせて下さい。」と言って別れ、その夜はチェンライ市内に泊まって翌朝バスでチェンマイへ戻った。

日本に帰ってきても、このアリヤさんとは連絡を取り合っているが、私に何ができるだろうか?
そもそも、タイの山岳民族のこの様な問題をどのくらいの人が知っているんだろう?教えてもらえたことに感謝しかないが、無力な自分への歯がゆさも感じる。

n


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?