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250120 カナリアは血を吐きながら鳴き続ける

今日のプレイ・リストから 093
ジェイムス・ブレイク
「終末のように」


「これが終わりだ」とドアーズのジム・モリソンが歌ってから、すでに半世紀以上が経ちました。現代のジェイムス・ブレイクも「終末のように感じないか?」と歌っています。世界は終わりを迎えている?しかも、今までずっと?日常に追われている我々には、なかなかわからないことです。

検索すると、ブレイクはYouTubeにブライアン・イーノとの対談をアップしていました。その話の終わりの方に、興味深いやり取りがありました。イーノは70年代にアンビエント・ミュージックを発表した時、批評家たちに「女々しい」音楽だと酷評されたと言います。その話にブレイクは既成概念を打ち破るのは高潔で、強烈な印象を与えますよねと慰めるように応えていました。

二人の年齢差はちょうど40歳。イーノはモリソンと、付け加えるとブレイクの父(プログレッシブ・ロック・バンド、コロシアムのヴォーカル、ジェイムス・リザーランド)とも同年代です。世代を超えて、優れた芸術家たちはきっと「坑道のカナリア」なのでしょう。終末を知らせるカナリアの歌声はもの悲しくも厳しい。我々に態度決定を迫ってきます。

P.S. では、終末をいかに生きるのか?芸術家たちはそこまで責任を持ってくれません。たまたま読んでいた森本あんりさんの本に、ラインホルド・ニーバーの思想に触れながら「終末論的な歴史理解」が記されていました。感動したので、その一部を備忘のために記録しておきます。

イエスの言葉の通り、「へびのように賢く、はとのように素直」に生きるのです(「マタイによる福音書」10章16節)。闇の子の知恵をもちつつ、光の子として生きることです。私益の力を知りつつ、それを道徳的に是認することなく、なお諦めずに理想を求め続けることです。

『魂の教育 よい本は時を超えて人を動かす』森本あんり(岩波書店)