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【ショートショート】似たもの同士

「さっきから一人だけど、どうしたの? もし相手がいないなら俺と話さない?」

 一人で呑んでいると必ず現れるような男に、私はいい加減うんざりし始めた。もっと女性を口説くためのロマンチックな謳い文句があるだろうと説教したくなる。

「ごめんなさい。私、あなたみたいな男には興味ないの」

「なっ!」

「お互いに時間の無駄だから、さっさと消えて」

 ムッとした表情を男が向けてきたが、私は気にせずその場を立ち去った。

 立食形式の婚活パーティーに参加するのはこれで五回目だ。結婚相談所主催だからいい男でもいるだろうと思っていたのに、どうやら今日も不発で終わりそうだ。顔だけがいい男や金だけ持っている男はわんさかいるが、両方持っている男はあまりいない。いても性格が腐っているので、近づきたくすらない。あぶれた男達は、お察しだ。

 ただ、そんな婚活パーティーでも毎回一人ぐらいはいい男がいる。顔も年収も身長もすべて合格の男だ。そして、そういう男は大抵参加している女達に囲まれている。もちろん、今日のパーティーにも一人いた。

 今、その男の元には数多の女達が集まっている。どうやら皆で取り囲んで質問責めをしているみたいだ。

「おいくつなんですか?」

「どこで仕事してるんですか?」

「年収はどれぐらいなんですか?」

 猫撫で声の女達が男に質問をする。だが肝心の男は、人生で一度あるかないかのハーレムな状態が嫌なのか、眉間に皴をよせて困った顔をしていた。でも私は、その男が内心嬉しそうにしているのを見逃さなかった。

 しばらくすると男が断りを入れて女達の輪から抜け出した。そして、なぜか一目散に私の元にやって来た。

「いやあ、参ったよ」

「あれだけ鼻の下伸ばしておいて何言ってんのよ。嬉しいの間違いじゃないの?」

「そんなわけないだろ」

「あらそう。おめめパチパチしているから嬉しいかと思ったわ」

「なっ!」

「それより、今日はいい相手見つけられたの?」

「いやあ……まだちょっと」

「もう、いい加減見つけなさいよ。妥協しろとは言わないけど、いくら何でもあなた高望みし過ぎよ」

「ごめん。でも姉ちゃんだって見つけられてないよね」

「なんか言った?」

「いや、別に」

 生意気に育った弟を睨みつけながら、どうしてこいつが一番いい男なのだと、私はため息をつきたくなった。



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