【ショートショート】創作と焦り
何でもいいから創作活動をしたいと思った俺は、半年前から小説を書くようになった。本当は漫画を描きたかったが、少し描いてみて自分には絵心がないと思い、早々に見切った。今流行り動画クリエーターも魅力的だったが、撮影機材や何やらそろえるのに何十万もかかると知り、これも諦めた。結果、パソコンの中にすでにインストールされている文章制作ソフトを見つけ、小説を書こうと決めた。
本も読んでこなかったのに小説なんて書けるのかと、はじめは不安だった。実際、原稿用紙10枚程度の短い話を書くのにも一週間以上かかった。30枚程度の短編小説なんて、夢のまた夢だった。
でも写経したり、一日一枚は絶対書くと決めて実践したりすると、徐々に文章を書けるようになった。表現も美しさもまだ拙いが、それでも小説を書くという魅力に俺ははまっていった。
でもここ数日、俺の創作意欲は地を這うようになった。主な原因は、小説で結果が出ないからだ。SNSやブログで発信しても閲覧されないことに、俺は焦りを感じていた。
「まだ半年なんだから、仕方ないよ」
「それはわかってる。でも結果が出ないことを半年だからって理由で仕方ないにはしたくない」
「でも文章も構成もまだまだなんだし、どうしようもないよ。ゆっくりやっていくしかないよ。焦ってもいい結果でないよ? それにさ、結果が出ないことよりも継続していくことの方がずっと大事だよ」
「……」
彼女の言葉はすべて的を射ていた。結果を追い求めるよりも、毎日原稿用紙を一枚ずつ書いて積み重ねていくことの方が大事だ。塵も積もれば山となる様に、一日一枚が一年続けば三百六十五枚になる。そうすれば小説が一冊書き上がる。頭の悪い俺でも、それぐらいのことはわかっていた。
でもそれをわかった上で、俺は結果を追い求めて仕方がなかった。SNSの反応で一喜一憂してしまう自分が情けなくなるほど、上を見上げて仕方がなかった。
毎日が結果の伴わない日だ。結果がすべての世界で、その過程まで評価しろなんて思っている自分のおこがましさに腹が立つ。結果が出ない原因を自分ではなく他者に求めて仕方がない。千里の道も一歩からと言うが、今の俺には千里どころか一寸先も見えていない。どこがゴールなのかもわからない。目の前は常に暗闇で、光なんて少しもない。進んでいるのか、退いているのかもわからない。結果が出るまで、ずっと闇の中だ。
でも、それが創作だ。
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