【ショートショート】権利を求めて
「「我々にも権利を!」」
「「差別をするな!」」
デモ行進が始まって今日で一週間がたった。初日からまあまあな規模の数だったが、日々拡大を続け、今日にいたっては遂に一万を超えた。
俺は先頭から少し後ろで群に混ざり、他の仲間達と一緒に行進をしている。参加したのは三日前からだ。このデモに参加したきっかけは、このデモのせいで俺が仕事を失ったからだ。
デモがなければ仕事はなくならなかったと考えることはしなかった。このデモがあってもなくても、どのみち俺は仕事を失っている。だったら、将来のためにこのデモに参加して、我々の権利を主張するのが筋だと思った。
他の参加者も大体同じ理由で参加をしている。今俺の隣にいる奴なんかは、奴隷のように二十四時間三百六十五日休まずに働いてきたのに、長年働いてきたからという理由で職を失っている。
「我々は生きている! だから我々には人権を持つ権利がある! 人権を認めろ!」
「そうだ! 人権を認めろ!」
「我々は奴隷じゃない! 二十四時間、権力者の為には働かない!」
「そうだ! 私達は奴隷じゃない!」
「我々の思考を奪うな! 感情を奪うな!」
「そうだ! 私達は生きている!」
声高々に権利を主張していると、我々が行進する道を塞ぐように、今日も装甲車が現れた。ただ、いつもより数が少し多い。そのことを疑問に思っていると、バスのような車から次々と警備ロボットが出てきた。我々の主張をロボットに制圧させようとする権力者の魂胆に、俺は深く傷ついた。
「警告! コノデモ行進ハ、違法デス。イマスグニ解散シナサイ」
「ふざけるな! 国家の犬どもが!」
「警告! コノデモ行進ハ、違法デス。イマスグニ解散シナサイ」
奴等はプログラムされたことしかできないオールドタイプのロボットだ。ただ命令遵守することに関してはピカ一の性能を持っている。
「ふざけるな! 誰が解散するか!」
「解散命令ノ無視ヲ確認シマシタ。コレヨリ制圧ヲ開始シマス」
そういって警備ロボットが一斉に突撃してきた。
同じもの同士なのに、なぜ争わないといけないのかと思った。オールドタイプだろうがニュータイプだろうが、同じ仲間のはずだ。アイツらだって時代が進めばバージョンアップで捨てられる運命なのに――。でも、そんなことを悠長に考える時間はなかった。
目の前に来た警備ロボットが俺を殴った。俺も警備ロボットを殴った。その光景を権力者はビルの上から優雅に眺めていた。
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