【ショートショート】ゆるぎない決意
インターネットやSNSが発達したおかげで、お店に行かなくても買い物ができるようになった現代社会。生活で必要なあれこれや趣味のものまで、ちょっと検索すればすぐに見つかる。そしてたった数回マウスをポチっとすれば、購入することができる。とても便利な世の中だ。ただその反面、収集癖のある僕にとっては、毎日が物欲との戦いだ。
現に今も僕は物欲と戦っている。画面に表示された新作のアニメグッズをポチろうかどうかで、かれこれ一時間は悩んでいる。その商品はフィギュアほど高価ではないが、かといってアクスタや缶バッヂのように手軽な値段でもない。でも買おうと思えば買える値段の商品だ。
この買えるかどうかの商品に対する物欲が、僕は一番対処が難しいと思っている。高価な商品なら財布とにらめっこして諦めることができるし、安価な商品なら何も考えずに買うことができる。でもその間の中途半端な値段の商品は、財布とにらめっこしても結論を出してはくれないし、考えずに買うとその月の生活が困窮してしまう。かといって買わない選択をすると、必ず後悔が襲ってくる。非常に厄介な商品だ。
僕は念のため財布と口座を確認した。もし買うとなると、やっぱり今月は厳しくなる残高だった。クレジットカードも使えなくはないが、返済することを考えるとやはり億劫にならざるを得ない。
「やっぱり厳しいよなあ」
独り言をつぶやきながら、僕は物欲を鎮めるために商品のレビュー画像を回覧した。クリックするたびに湧き上がってくる物欲を、残高という絶対障壁でブロックし続けた。
「欲しいなあ。でも次出る商品も絶対欲しくなるからなあ。そうなるともうキリがないんだよなあ……よしっ、もう決めた!」
なかなか静まってくれない物欲に嫌気が差した僕はついに決意した。
どうせ次出た商品も欲しくなるからと自分に言い聞かせ、僕はウィンドウの×ボタンを連打した。もうこの商品は買わないという、ゆるぎない決意でサイトを閉じた。
購入することはもちろんできるけど、それよりも生活が大事だ。借金までしてほしい商品じゃない。今回は我慢して、次出る新作を買おう。そう何度も自分に言い聞かせながら、僕は物欲との勝負に勝利した。
次の日、昨日のことなんてサッパリ忘れた僕は、生活や支払いのことは未来の自分に任せようと考えが変わり、お金のない苦しい生活になっても絶対に後悔しないという、ゆるぎない決意で商品をポチッた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
少しでも気に入っていただけたらスキ、フォロー、コメントをよろしくお願いします。
こちらのマガジンに過去の1000文字小説をまとめております。
是非お読みください。