【ショートショート】インタビュー
ぽかぽか陽気に包まれた日曜日の昼下がり。俺と妻は夫婦そろってリビングテーブルに座った。相向かいの席には七歳になる娘が胸を張りながら堂々と座っている。
「それではこれからおとうさんとおかあさんにインタビューをします。これからするしつもんには、しょうじきにこたえてください。わかりましたか?」
意気揚々と娘が言う。俺も妻も娘に合わせて「はい」と言って頷いた。小学校の宿題とはいえ、なんだか少し恥ずかしい気になった。
「では、おとうさんにしつもんです。おかあさんのどんなところが好きですか?」
この質問を皮切りに、何とも可愛らしい年相応のアンケートがはじまった。
娘のアンケートはほとんど俺と妻に関することだった。出会った場所や告白の言葉など、そういった類のものだ。俺も妻も十年以上前の記憶を遡りながら、お互いにすり合わせてどうにか答えていった。
「ではつぎのしつもんです。さいごにケンカしたのはいつですか?」
予想外の質問が飛んできた。俺も妻も顔を見合わせて苦笑いする。
「最後のケンカ……いつだっけ?」
「去年の夏じゃなかったかしら。ほら、あなたのコレクションを私が捨てたときの」
「ああ、確か俺が机の上に置いておいた作りかけの模型をミコトが捨てたんだよな」
「ちょっと私のせいにしないでよ。ゴミと一緒の場所に置いたあなた原因でしょ。誰がどう見たってあれはゴミにしか思えないわよ」
「たしかに俺にも反省しなきゃいけないところはある。でも人の部屋にはいって勝手に物を捨てるのもどうかと思うぞ」
「捨ててほしくないものなら普通ゴミと一緒に置かないでしょ。あなたのコレクション管理が甘いのよ」
「そもそもなあ、人の書斎に勝手に入るのもどうかと俺は思うぞ」
「だって私が掃除しなきゃあなた永遠にあの部屋の掃除しないじゃない。今だって私がどれだけあなたのきったない部屋を掃除したいかわかる?」
妻が臨戦態勢に入った。どこで地雷を踏んだのかは当然分かっていたが、あの件のことを思い出して俺もいい機会だからと少し体を前にだした。
だがその時、娘の笑い声が聞こえた。
俺達夫婦は不思議がりながら娘を見た。何に笑っているのか、見当もつかない。
「おとうさんとおかあさん、とってもなかがいいんだね」
「どうして?」
「だって、けんかするほどなかがいいっていうでしょ。キャハハ」
笑いながら娘が言う。俺も妻も、娘の言葉に笑うしかなかった。
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