天岩戸伝説とスサノオの"乱暴狼藉"について(歴史)

①天岩戸隠れ伝説
日本神話の「天照大神の岩戸隠れ」のエピソードは皆さんもなんとなく聞いたことがあるだろう。太陽神である天照大神が岩戸にお隠れになり日本が暗闇になってしまったので、神々が策を練り、天照大神を岩戸から引っ張り出してまた日本に光が戻ったという話である。これは一説によると日食を表しているともされ、実際に天文学の研究では西暦247年と248年の2回(卑弥呼の時代!)皆既日食が起きたことが判明しており、説の信憑性を高めている。

②岩戸隠れの原因となったスサノオ
この天岩戸伝説だが、天照大神が岩戸にお隠れになった原因については知っているだろうか。
その理由はスサノオの"乱暴狼藉"である。
高天原に姉の天照大神に会いに来たスサノオは、(いろいろあって)高天原への滞在を許されるが、そこで高天原の住民を驚かせるような"乱暴狼藉"を働き、それに困った天照大神が岩戸に引きこもるという筋書きである。
この高天原の住民を驚かせた"乱暴狼藉"の内容は以下である。
・田んぼの畦を破壊し、溝を埋める
・収穫祭の神殿で糞尿を撒き散らす(古事記に「糞まり散らかしき」という聞いたことのないパワーワードで記載されている笑)
・馬の皮を剥いで機織り場に投げ入れる
以上、確かにとんでもない乱暴狼藉に見える。
しかし私は別の解釈が出来るのではないかと思う。

③スサノオのキャラクターと"乱暴狼藉"の新解釈
記紀でスサノオは「頻繁に大陸に赴いている存在」として描かれている。「大陸の最新の技術知識に触れていたのがスサノオである」という補助線を引くと、スサノオの行動には一定の『理』があったのではないかと思えてくるのである。
つまりこうだ。
・畔を壊し溝を埋めたのは田んぼ一枚の大きさを広げるためで、稲作を大規模化・効率化しようとした
・糞尿は、堆肥を作るための原料として回収しようとしたもので、堆肥の導入により収穫量を増やすことを意図していた
・馬の皮は衣類を作るためのもので、毛皮を縫い合わせて衣類にするために機織り場に持ち込んだ

これらの行動は大陸では知られた技術を実行したものにすぎなかったが、当時の倭人には理解されず"乱暴狼藉"と受け止められたということではないか。

④そして追放されるスサノオ
果たしてスサノオはこの"罪"により高天原を追放されるのだが、ホントは皆が豊かになるために正しいことをしようとしてこうなったのだとしたら、なんとも悲しい神であり同情を禁じ得ない。
(そういう意味では業務改善の仕事もどれだけ正しい提案をしても必ず現場の反発を食らうという点で同じかもしれない…笑)

⑤それでも人生は続く
記紀神話ではこの後スサノオは出雲へ天降り、ヤマタノオロチの退治を経て王宮を築き、出雲を支配して多くの子孫を残した。出雲大社の祭神である大国主もスサノオの子孫(または娘婿)とされる。
高天原で否定されたスサノオの思い通りの改革が出雲では存分に出来たのだと想像すると喜ばしい。
ちなみに和歌において「出雲」の枕詞は「八雲立つ」であるが、出雲は特に雲が多い地域ではないことが謎になっている。
出雲は古代の先進地域であり、他の地域を大きく凌駕する大量の銅剣が出土している。
さて、この「八雲立つ」の「雲」とは自然の雲のことではなく、金属を加工するために窯で大量の木炭を燃やす、その窯から出る煙を指している。
「八雲立つ出雲」とは、領地のあちこちから煙が立ち上っている様を王宮から見たスサノオが、豊かな国になったことに心満足して出てきた言葉なのである。

いいなと思ったら応援しよう!