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かつて存在した、極限まで無駄を削ぎ落とした高難易度ハックアンドスラッシュ"Nameless EDEN"を思い返す

 その昔、スマートフォンおよびブラウザにて遊べた"namelessEDEN"というゲームがあった。古い写真を整理していたら偶然このゲームのSSを見つけ、色々と思い出したので記事にしたためる。

1.概要

 戦闘と装備の吟味に特化したハックアンドスラッシュ。様々な職業から一つ選びキャラクターを作成し、魔物の巣食う迷宮を奥へ奥へと進み、敵を倒し、手に入れた装備でキャラを強化してさらに奥へと進んで行く。

…ここまではまぁこのジャンルのお約束通りだが、このゲームの真髄はそのシンプルさにある。"極限まで無駄を削ぎ落とした"と題名に記載した通り、このゲームはプレイヤーが取れる行動が極めて少ない

プレイヤーが取れる行動や操作は
・装備を整える
・レベルアップ時にステータスを割り振る
・次の階層に進む
・前の階層に戻る
・物理攻撃
・魔法攻撃
・逃走
・戦利品の取捨選択
以上である。

https://freegame-mugen.jp/sp/browser/game_1874.html
より画像を拝借

 それ以外の操作…例えば上の画像で言えば、どっちの敵に攻撃するか?「攻撃」を選択した場合は斬、打、突、「魔法」の場合は火、水、雷の属性があるが、どの属性で攻撃するか?といったものはどうやって決めるのか?それらは全てダイスによってほぼランダムに決められる。

2.面白かった点など

2.1. なかなかに厳つい難易度とそこから生まれる駆け引き

 このゲームはとにかく難しい…いや自分でも2周目クリアまでは何とかなったので、心得のある人なら最高難易度である3周目も含めて案外サクッとクリアできてしまうのかもしれないが……少なくとも自分にとっては相当難易度の高いゲームだった。

難しい要因をいくつか挙げると、
・デスペナルティー
・ダイス運に左右される戦闘
・戦闘中のHP回復はターン終了時の自然回復のみ
・弱点属性

辺りだろうか。

・デスペナルティー
 戦闘に敗北した場合、そのキャラクターはロスト(消滅)する。ロストすれば当然キャラクターは1から育成し直し、その上ダンジョンの踏破状況もリセットされて1周目の1階からやり直しとなる。チェックポイントなんぞ無い。加えてそのキャラが装備していたアイテムも失う。アイテムに関しては新たに作成したキャラクターで前のキャラクターが死亡した階層まで辿り着ければ回収する事が可能だが、万が一回収する前に死亡してしまった場合、前のキャラクターが装備していたアイテムは消滅してしまう。今で言えばダクソやブラボその他ソウルライクの経験値ロストのような感じ…と言えば伝わりやすいか。

・ダイス運に左右される戦闘
 誰に攻撃するか、どの属性で攻撃するかがダイスによるランダムなのは前述の通り。そのため、
「まずは攻撃を集中させて敵の数を減らしたい!」
「今装備している武器は斬属性が強い武器だから斬属性で攻撃したい!」
と考えても思うように攻撃できない事が頻発する。攻撃が分散してしまい、その上属性の引きも悪く決定打を与えられず、そうこうしているうちに数の暴力でHPを削られ敗北する…なんてのはよくある話。

・戦闘中のHP回復はターン終了時の自然回復のみ
 本作には"自然回復"というパラメータがあり、これを上げるとターン終了時にHPが回復するようになる。戦闘中はそれ以外にHPを回復する方法は無い。加えてよほど特化させなければお世辞にも効果が高いとは言えない。
 とはいえ貴重なHP回復手段であることには変わりない。1ポイントの僅かな回復が明暗を分ける事もある。なので保険として多少は欲しいが、そのために他のステータスを犠牲にする余裕があるかと言われると…

・弱点属性
 キャラクターを作成時にそのキャラの弱点属性を一つ設定する。弱点に設定された属性で攻撃されると防御力を大幅に減衰した状態でダメージ計算が行われるため非常に危険。弱点を突かれて敗北してしまえば前述の重いデスペナルティーが課せられるため、防御を高めておく、回避やガードの発生率を上げておくなどの対策が必要だが、かと言って守りに専念し過ぎると今度は火力が疎かになってジリ貧で負ける可能性が増すわけで。

以上の要素から本ゲームは
・進むか引くかの判断
・特化するか、満遍なく強化するかの塩梅
が重要となる。重いデスペナルティーによる緊張感も相まってこれがまぁ面白い。

 敵の数が多く、このままでは負けるが次のターンに一体倒す事が出来れば余裕が生まれて勝てるかもしれない。しかし別の敵に攻撃が飛んでしまった場合は窮地に陥る。一旦引いて体制を整えるか、ダイスを信じて攻撃するか?

 そもそもの話、ダイスで何を引いても安定してダメージを与えられるように全属性の攻撃力を上げておけば良いのでは?しかしそれでは特化した場合に比べて火力が低くなり、ジリ貧で負けるかもしれない。じゃあ己のダイス運を信じて一つの属性だけに特化し大ダメージによるワンチャンスを狙うか?しかしそれで運に見放せれた場合、苦戦は免れない。

恐らくプレイヤーの個性が如実に現れるポイント。

2.2. ダイスの結果に干渉できる特殊パラメータ"Rate"

 さっきから散々ダイスだランダムだ書いておいて今更書くのも何だが、一つだけ抜け道がある。それが"Rate"と呼ばれるパラメータである。

画面下部、ATK、DEF、の下にRATEという項目がある

 このRateを高めるとその属性が選ばれる確率を上げる事ができる。例えば上の画像なら火のRateが高いため、魔法を選択した際には火属性が選ばれる確率が高い。これにより一つの属性に特化した場合でもある程度安定して大ダメージを狙う事ができる。

 では、全属性を満遍なく上げるのは弱いのか?と言われるとそんな事はない。確率を大きく変えるにはそれなりに高いRateが必要であり、高いRateを確保するにはだいたい2周目の中盤あたりで手に入る強力な装備がないと厳しい。また、結局は確率のため、どんなに上げたところで外す時は外す。

 Rateに頼れない序盤は全属性を満遍なく強化する方が強いし、Rateを確保できるようになっても保険として他の属性も強化しておくのもアリ。また、他のパラメータにも言える話だが、Rateに固執しすぎて他のパラメータがおざなりになってしまっては元も子もない。入手した装備によってはどうしてもRateに頼れない…という場面も出てくる。

ここも人の個性が出るポイントではなかろうか?

2.3. 装備を吟味や収集する面白さ

 これに関してはハックアンドスラッシュの醍醐味であるため何もこのゲームに限った話ではないが、本作もまた装備を収集するのが非常に楽しい。目当てのオプションが付いた装備が出た、目当てのものではなかったが何かに使えそうなアイテムが出てきた、数値だけは理論値レベルなのにオプションが致命的に噛み合っていない産廃が出てきたなどの一喜一憂をスマホで手軽に楽しめた。

 また、先ほどデスペナルティーの話の中で装備しているアイテムを失うと書いたが、逆に装備していないアイテムは敗北しても失わないし、何なら次のキャラクターで使用する事ができる。そのため、今のキャラでは使い道がないがオプションがなかなか優秀だから取っておいた装備が後に別のキャラで大活躍する…なんて事も珍しくない。そういった経験があるとアイテムを吟味するモチベーションにも繋がる。

 一つ難点を挙げるとすれば、本作にはdiabloで言うところのレジェンダリーやユニークのようなステータスを増強するだけではない特殊効果のようなものは一切存在しない。単に数値の高い装備の吟味に終始してしまう。まぁそういった特殊効果はバランス崩壊の温床だし、本作の魅力であるシンプルさとも噛み合わなそうという事もあり実装が難しかったのかもしれないが、少しぐらいはあったほうが嬉しかった…かもしれない。

3.その他

・例の無限に遊べてしまうクソめいさく程ではないがこのゲームに関しても割と病的なまでに嵌り、寝食を忘れひたすら遊んでいた記憶がある。

・当時、「スマホで遊べる面白いゲーム何か知らないか?」と問われた際は必ずこのゲームを挙げていた。覚えている範囲では20人ほどにこのゲームを教えたのだが、誰1人としてこのゲームの面白さに気付くことなく秒でアンインストールしており、ふかいかなしみに包まれた記憶がある。
 ちなみに、同じ時期にB100Sやオーラムブレード辺りにもハマっていたのだが、この二つも同様の結果に終わった。とてもかなしい。

・最高到達点はHELL(3周目)最序盤

2周目踏破時の記念SS
HELL(3周目)到達時の装備…とはいえこの画面だけじゃ何が何だかわからん。覚えてない。
2周目踏破の喜びも束の間、序盤も序盤で油断してロスト。この間僅か7分の出来事である。

その後戻し作業中にiOSのアップデートが行われアプリが起動しなくなり、自分の冒険はここで幕を閉じた。

4.次回作であるfrozengateについて

 NamelessEDENの次回作である"frozengate"というゲームについても色々思い出したので少し触れたい。こちらも同じくハックアンドスラッシュだが、一人旅ではなくPTで挑む戦闘となり、また新たに距離や攻撃範囲の概念が追加、そして更に顕著になった属性耐性によってnamelessEDENとは全く別ベクトルの難しさ、面白さ、奥深さのあるゲームだった。こちらは残念ながら画像が残っていなかったため、ゲームのSSなどはこちらのサイトを閲覧して欲しい。

 本作の戦闘について簡単に説明すると、4人PTのうち左端の1人は後衛となり他3人のステータス増強や回復などを行う。残り3人はそれぞれのレーンの敵に対して攻撃を行う。

 戦闘は「準備フェーズ」と「行動フェーズ」のようなものに別れており、「交代」ボタンでPTをローテーションして配置するなど準備を行い、「戦闘」ボタンで敵味方各キャラが1回ずつ行動する。行動が終わったら再び準備フェーズに戻る。これを繰り返して先に全滅させた方が勝利となる。

 また、frozengateは各階層ごとに出てくる敵が固定な上に戦闘前に敵の配置やステータスを確認する事ができる。敵のステータスや耐性を入念にチェックし、最適なキャラに最適な装備を持たせ、射程圏内に入る敵の順序やローテーションも加味しながら配置も考え、リカバリーする際はこのキャラ補助させたいがそうすると最初に補助に回してたキャラが攻撃を受けてしまうので防具を固めて………とにかく考える事が多い。考える事が多いがその分作戦が上手く嵌った時は、他のゲームではなかなか味わえない独特の達成感がある。こちらも相当ハマって2周目までは到達したような記憶がある。

5.終わりに

 数枚のSSからよくここまで色々と思い出したものだ。プレイしていた時間こそあまり長くはなかったものの、それぐらいのめり込んでいたということなのだろう。その後も色んなハックアンドスラッシュに触れてきたが、未だにこのNamelessEDENを超える作品には巡り会えていない

6.ややグレーな話

・チェックポイントが無いとは言うが…

 本ゲームには他の端末へのデータ引き継ぎ機能があったのだが、これを悪用すると実質セーブのような事が出来てしまった。例えばある地点で引き継ぎコードを発行しておき、その後万が一敗北してしまった際はその引き継ぎコードを入力する事でコードを発行した時点のデータから再開する事が可能だった。
 とはいえ、リトライが出来ないからこそ厳しくそして面白いゲームなので流石にこれを濫用すると3周目だろうと相当ヌルい難易度になるのは間違いない。やるのは勝手だが自己責任でどうぞ。


・今はもう遊べないとは書いたが…

 厳密に言えばこのゲーム(および次回作)は今でも遊べない事はない。App StoreやGoogle play以外のサイトではまだ配信しているような形跡があったり、あるいはネットのどこかに"偶然"置いてある本ゲームのファイル一式を入手すればbluestacksなどで開いて遊べたりする。

 ただ、正規の方法かと言われると間違いなく正気ではない、微妙なライン。やはり今ではもう遊べない………という事にしておいた方が色々と無難。どうしても遊びたいという人はこちらも自己責任でどうぞ。
(Androidなら今でも正規の方法で遊べるという話を聞いた事があるが、本当なのだろうか?)