イースIVの話

 今や軌跡シリーズの方で有名な日本ファルコムの作品に「イース」(Ys)シリーズがある。操作性や快適性だとかアクションゲームとして1番好きなのはイース・オリジンなのだが、ストーリーの展開や世界観、BGMなどに目を向けた場合オリジンを抜いてイースIVが好き。

0.その前に

 この記事タイトルを見た人でかつ「イースIV」を知っている人の8割ぐらいは今、下記のツッコミを必死に堪えているところだろう。多分。



「いやイースIVってどのイースIVだよ!」


…知らないにも分かるように簡単に説明すると、イースIVは様々な経緯により「イースIV」の名を冠しておきながら内容が異なるゲームが複数存在する。

Ys IV The Dawn of Ys (PCエンジン)


Ys IV MASK OF THE SUN (SFC)


Ys IV MASK OF THE SUN -a new theory- (PS2)


小説版は小説版でまた内容が若干異なる。
イースIV 樹海に沈みし魔宮


調べたら漫画版もあるらしい
イース太陽の仮面 -Mask of the Sun


また、2012年にはファルコム直々によるIV(※厳密にはIV扱いではないらしい)が出た。
イース セルセタの樹海(PSV)
イース セルセタの樹海:改 (PS4)(HDリマスター版)


詳しい話はウィキペディア先生に丸投げする。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/イースIV#開発経緯

自分が実際に触れたのはPCE版、小説版、セルセタの3つ。以降はこの3つを中心に書く。

1.大まかなあらすじ

 内容が異なると言ってもあくまでゲームやストーリーの細部の話であって、大まかなあらすじは同じ。

赤毛の冒険者アドル・クリスティンが樹海に覆われた地域セルセタを舞台に冒険を繰り広げ、暗躍する影や不穏な動きを見せる帝国軍、そしてセルセタの地に眠る古代文明の謎に迫る。

ちなみにイースI,IIの舞台であるエステリアとは船一本で行ける割と近い距離にある。そのためI,IIから思わぬ人物が登場する事もある。また、IVだけどIII(ワンダラー/フェルガナ)の前の話。

時系列で言えば
I・II → IV → III → V → …

となる。

2.どんなゲーム?

2.1. PCE版

 III(ワンダラー)は横スクロールアクションだったが、PCE版IVはI•IIと同じ体当たりと魔法を駆使して進める見下ろし方のアクションRPG。正直これは動画見てもらった方が早い。自分には上手く説明できる程の技量も語彙力も無い。

part1はオープニングなので実際のゲームはpart2から

この人のイースIVの動画は何度見ても素晴らしい。ノーダメージで進行する上手なプレイ、適宜入る解説字幕、レベリング作業を挟んでもテンポを損なわないカット編集、イベントや街の人の会話まで網羅して動画化、現在流れている曲名の表示etc、ここまで内容とテンポと配慮のバランスが良いゲームプレイ動画はそうそう無い。

2.2. PSV/ PS4 セルセタ

 セルセタはSEVENのシステムをベースとした3Dアクション作品となっている。通常攻撃でSPを溜めてスキルを発動し、時には操作キャラを切り替えたり回避やガードを駆使して戦い、冒険を繰り広げる。

デザインこそ現代に合わせて大幅にリファインされているが地名やキャラクター名などは原作から続投しているモノが多い。また一部アイテム名にPCE版で出てきた名称が用いられているなど、原作を知っていると思わずニヤリとする場面も多い。
(※自分がSFC版など未プレイのため気付いていないだけで、もしかしたらSFC版などのネタも仕込まれているのかもしれない)

3.好きな点

3.1. オープニング

 まずこれは外せない。冒険の始まりにしてはどことなく物悲しげなメロディが印象に残る名曲「THE DAWN OF Ys」、それをバックに流れるアニメーション、そして最後に映される地平線の果てまで続く樹海……

S.S.H.さんが昔個人サイトで公開してたTHE DAWN OF Ysのアレンジ版も良い。未だにウォークマンに入れて何度も何度も聴いているぐらいには好き。セルセタ版ではオープニング曲が新規楽曲「The Folitage Ocean In Celceta」に差し替えられているが、そちらもまた素晴らしい。

自分がPCE版YsIVを初めて見たのは2000年代後半のファルコム作品がPSPに移植され始めた頃、実際に触ったのはゲームアーカイブで配信された時だった。そのためリアルタイムでPCE版に触れた訳ではない。そんな自分にも1993年の作品でここまでのアニメーションが出来るのが驚きだった。1993年のゲームはスーファミという認識、そしてスーファミのゲーム自体そこまで詳しい訳じゃなかったのでグラフィックが綺麗 = スーパードンキーコングのようなCGかスターフォックスやワイルドトラックスのようなポリゴンという認識。そのためゲーム内でこんな綺麗なアニメーションムービーが挟まる事に衝撃を受けた。

…海外に目を向けると1993年にはDOOMというトンデモない化け物がいたりする。アレも初めて動画を見た時は度肝を抜かれたが、まぁアレは例外中の例外だろう、PCだし…………いやYsも元はPCだけど。

3.2. 登場キャラクター

 お馴染みのアドル、ドギに加え、無垢で健気にエルディールを慕うお淑やかな村娘、今作のヒロイン枠リーザ。対照的に勝ち気な性格で村の自警団のリーダーも務めるカーナ。人間とは異なる種族の最後の生き残りエルディール。いわゆる三悪…に該当するかは知らないが脳筋、魔女、参謀のお約束な組み合わせの闇の一族の者たち、ガディス、バミー、グルーダ。

王道というかありきたりというか、身もふたもない事を言えば捻りがないかもしれないが、それでも登場人物は皆魅了的だし個人的な好みとしてはこれぐらいシンプルな方が愛着が湧く。そもそも1993年の作品と昨今の何かと属性を多数盛る作品を比較するのもどうかという話だが。黒髪ショート内気サイバー和装ロリcvキタエリとか銀髪ツーサイドアップツンデレエルフ王女cv井上麻里奈とか。

…90年代初頭のデザインやセンスをそのまま現代に持ってくるのは無理があるしリファインも致し方ないものだと分かってはいるが、しかしセルセタのキャラが微妙に軌跡に被れて厨二臭くなったのはやや納得がいかない。そういうのは軌跡でやれ

3.3. BGM

 BGMに関しては信頼と実績のファルコムなだけあって、使われている楽曲はどれも名曲揃い……中にはちょっと洒落にならない問題児が居たりするが。このBGM絡みの問題で正直この作品の配信は無理だろうと半ば諦めていたが、無事にアーカイブ版が配信された。

これも口であれこれ言うより聴いた方が早いので上に添付した動画見て聴いてみてほしい。有名どころの「セルセタの樹海」「THEME OF ADORU 1993」なども素晴らしいが、個人的には中盤のダンジョンで流れる「Harlequin’s temptation(道化師の誘い)」が最高に好き。基本的に草原だろうと何だろうとギター鳴らして激しい曲にしがちなファルコムが突然投げてくる静かで神秘的でそれでいて疾走感のあるBGM。この落差がまた素晴らしい。

ちなみにイースIVのサントラはAmazonプライムにて配信されている。それも1枚3000円ではなく3枚全部買って3000円前後。非常にお得。

3.4. 舞台とか設定とか諸々

樹海の中に眠る遺跡や神秘
かつて高度な技術を有していた古代文明
その力を手に入れるため暗躍する悪党

…などなど、その他諸々好きな要素は枚挙にいとまがない。小説版だと遺跡から出てきたオーパーツをアドル目線で表現…例えば銃のようなものに対して「火を噴く筒」と表現していたり、そういった表現も読んだ当時は新鮮で、現代では当たり前の道具を当時の人が見たらどのように表現したのだろうか?とワクワクした。ゲーム的な演出で言えば、PCE版の装備周りの展開や演出が特に好き。素晴らしい。

3.5. 物語のスケール感

 特に推したい部分。IVの話はざっくりと言ってしまえば悪党が古代文明の力やら何やらの封印を解き、その力を悪用して世界征服を目論むのをアドルたちが何やかんやで食い止めるようなお話。PSV/PS4セルセタの最後はちょっと世界だ神だ何だと大それた表現が出てくるが、結局は私利私欲の為に古代文明の力を悪用しようとする悪党を食い止める話。途中から種の淘汰だ世界滅亡だ何だと大風呂敷を広げたりしない。

自分の勝手な解釈かもしれないが、「イース」とは局所的な地域のみで完結する冒険物語だと思っている。例えばIならエステリア、IIならイース、IIIならフェルガナ地方…というように特定の地域での冒険のみで完結する。アドルや地域の人たちがいかに危険な目に晒されたり大きな陰謀に巻き込まれていようとも、地域の外にとっては「隣の地域で一悶着あったらしい」程度のお話でしかない。

実際、小説版IVのプロマロックの港町では
・呪われた島エステリアの呪いが解けたらしい
・どうやら赤毛の男が解放したらしい
というようにYsI•IIにおけるアドルの活躍が断片的に隣町に伝わっている描写がある。あれだけの冒険があっても(海を隔てているとはいえ)この程度の噂しか流れない。もしかしたらこの噂を知っている人すらごく一部の人だけかもしれない。しかしその中には確かに血湧き肉躍る冒険譚が存在したのだ。

…などとカッコつけて書いたが、アドル(そしてゲームのプレイヤー)にとっては大冒険だったとしても、大多数の人にとってはちょっと小耳に挟んだ噂話程度かもしれない、もしかしたら自分しか知らない物語かもしれない。そんな絶妙なスケール感に惹かれて「イース」シリーズを好きになった。

I•IIもIIIも本作もその他も、結果的には世界滅亡の危機だったのかもしれない。実は世界全土を巻き込む大きな陰謀の一端だったのかもしれない。しかしそれを作品の中で大っぴらに語らない。良い。それが良い。

種の淘汰だとか、世界滅亡だとか、

そんな壮大な話は軌跡でやれ!!!!!

(※誤解のないように言っておくと、種の滅亡だ淘汰だと話が膨らむイースVIIIもついでに話が一向に畳まれる気配が無い軌跡シリーズも、寝食を忘れ気付いたら朝になっているぐらいのめり込んでしまうほど十分面白い。しかし、だからこそ…面白いからこそ、そういう余計な大風呂敷広げたりするところが悪目立ちして気になってしまう)

4.終わりに

 ゲームアーカイブを遊べる環境があれば、PCE版を800円というお手頃価格で遊ぶことが出来る。もし幸か不幸かこの記事を読んで「イースIV」に興味を持った人はぜひPCE版を、難しいならセルセタを遊んでみて欲しい。あるいはリンクを貼った動画を観る、または古本屋で小説版を探すだけでも良い。とにかく自分の大好きな作品イースIVを少しでも多くの人に知ってもらいたい。