Kowloon Ghost Syndicateについて / Interview with Kasanuma #3
このインタビューが行われたのは2016年、当時の笠沼さんはKowloon Ghost Syndicateで活動しており、過去のGauge Means Nothingの話だけじゃなくて「今」の話を聞きたかった。その「今」の話もこうして過去の話になったのだなぁと思います。Kowloon Ghost Syndicateは少しだけまだ3LAに音源の在庫があるかもしれない。
前回までのエピソードは下記をご覧ください。
#3. 止まぬ挑戦、Kowloon Ghost Syndicate
数々のバンドを経て、ついにボーカルオンリーでのスタイルで笠沼氏が参加する現在進行形で歴史を刻むKowloon Ghost Syndicateについて。
Q.Kowloonについて結成の経緯やバンド内で共有されているビジョンなどがありましたら教えてください。
笠沼:2013年の1月に結成、っていうか初スタジオかな。経緯としては、元々ギターの安藤さんが発起人としてドラムの四方さんとバンドを始めていて、そこにボーカルとして声がかかったことが始まりで、初スタジオはその3人。バンド名も最初から決まっていました。それからもう一人のギターとベースを探しましょうということで、ギターは松田さんに、ベースは東海林に声をかけて全員そろったのが’13年の6月。ベースが決まるまでは僕がベース弾いたりしてました。初ライブが’14年9月で、その前月の8月にはデモのレコーディングをして初ライブと同時にリリースしました。’15年の10月からは東海林に代わって龍崎君がベースを弾いています。
ビジョンはどうだろう、音楽的には元々安藤さんが当初からOttawaとかLeft For Deadを意識して全体の8割くらい曲を作っていて、それをそのまま再現するときもあれば、あーだこーだアレンジするときもある。共通項としてはメタリックで基本的に速くてブラストがあってときたまスラッジパートがあってとかそのくらいのぼんやりしたものしかないかな。
Kowloon Ghost Syndicate bandcamp
Kowloon Ghost Syndicate @ Sankaku Hiroba Tama
Ottawa / Jihad split 12”
Left For Dead @ The Ottobar, Baltimore, MD
あとは僕が今までボーカルをやってきたバンドと共通することなんだけど、ドラムの四方さん以外メンバーそれぞれがボーカルを取り、そして歌うところは一部を除いてそれぞれが歌詞を書いています。具体的には曲ごとに歌詞のテーマを決め、まずは僕がおおまかに書いてからボーカルのパートの振り分けを考えて、それぞれみんなにここ歌ってください、ここ歌詞を書いてくださいってお願いして歌詞が完成する。普段の会話からみんながどんなことを考えているかはなんとなくはわかるので、そこから逸脱し過ぎないようにテーマを決めて書いています。大好きだったSwitch Styleもツインボーカルだし、元々複数のボーカルが掛け合ったり絡み合うのがすごく好きなんだよね。あとユニコーンの影響も大きくて、奥田民生だけじゃなく他のメンバーも歌ったり歌詞を書いたりしてそれぞれの個性が発揮されているところに楽曲の広がりと厚みを感じたし、自分がやるバンドでもそのスタイルは取り入れたいと思っていました。
ユニコーン 人生は上々だ
3LA : 安藤さんが発起人だったんですね。安藤さんて今までバンドをそんなにやってなかったと思うんですが、このタイミングで始めようと思ったのは何故なんでしょう。これは笠沼さんのインタビューとは関係ないかもですが、是非安藤さんにきいてみたいところであります。
笠沼:安藤さんはKowloon Ghost Syndicateを始める前にSoonでギターを弾いていたんだよね。それまでは多分スタジオに入ってもライブをやるに至るまでのバンドはやってなかったと思う。Soonでは安藤さん自身は途中加入という経緯もあるから、スタートアップからバンドを立ち上げたかったんじゃないかなと思ってます。
3LA : これまでと違いone micのピンボーカルスタイルですがこのスタイルを選択したことに理由はありますか?音のほうも以前組んでいたバンドとは明らかに異質なメタル/ハードコア寄り サウンドで意外に思いました。
笠沼:まずきっかけは前述したようにバンドにボーカルとして誘われたから。その頃自分に「やったことのないことに挑戦する」というのを課していた時期で、今までベースを弾きながらでしかボーカルをやったことなかったけど、いい機会だから挑戦してみようと思いました。でも最初はどうやって歌ったらいいか全然わからなくて苦労した。まず声の出し方が全然違う、使う身体の部位も違う。ベースを弾きながらだとある程度ベースのフレーズにあわせていい意味で制約の中で歌を考えるというのがあったんだけど、その枠がなくなっちゃったことに最初はすごく戸惑った。今となってはそこそこできるようになったと思うんだけど、スタジオやライブに手ぶらで行けるし、ピンボーカル最高です(笑)。
音楽面も最初から安藤さんの意向があったから、そこにそのまま乗っかる形で。バンドがスタートしたときに意識していたOttawaやLeft For Deadにしてもよく聞いていたし、みちのくonlineでCoke BustとかDead In The Dirtとか試聴して買ったりしてずっと好きな音楽の一つではあったので、自分としてはあまり違和感はないかな。EnvyもSwitch Styleも初期は速かったし、Still I Regretも速くはないけど、メタリックハードコアだしね。
COKE BUST Japan Tour 2015 in Tokyo
Dead In The Dirt — The Blind Hole LP
3LA : バンドとして注目すべきトピックとしてはやはり来日したYUMIとのツアーですね。
実に前バンドのスプリット以来の共同アクションになりますがex.My Precious メンバーとは以前からずっと連絡をとっていたのでしょうか?
笠沼 : My Preciousのメンバーとは常にSNSで連絡取ってた。昔だったらMySpace、Live Journal、それらが廃れた頃にFacebookが始まってメンバーみんなそっちに移行してまたコンタクト取り続けるという具合で。たまに観光でメンバーが何回か日本に来たり、僕がシンガポール行ったり、香港でMy Preciousのライブがあったときに見に行ったり、2010年にはMy Preciousの2回目のツアーもあったから2, 3年に一回は会ってたと思う。
3LA : ツアーはどうでしたか?実際にかなりの好反応だったと思います。
笠沼:My Preciousとのツアーが9日間、今回の ”Rise Of The Yeloow Peril Tour” が4日間だったから前回と比べると半分以下だよね。でも自分のバンドでツアーに行けたのはそのとき以来だったからすごく楽しかったし、精神的・身体的な負担も前回に比べれば少なかったから短いながらも充実は出来たと思う。
今回はYumiのメンバーにはJRのJapan Rail Passという新幹線も含めてJRが乗り放題になる外国人専用のパスを買ってもらって、Kowloon Ghost Syndicateは車で移動という変則プランでのツアーでした。僕はコンダクターとしてYumiと終止行動を共にしていたので、だいぶ仲良くなって楽しかったし、メンバーみんな落ち着いた雰囲気でクレイジーな行動を取る人もいなかったので、招聘側としては実にやりやすかった。
ライブもとてもよかったので、もっと多くの人に見て欲しかったし、もっと評価を得られるバンドのはずだとツアー中ずっと思ってた。あのパッションあふれるダイナミックなライブは今思い出してもすごかったとはっきり記憶してる。相当触発されました。
ツアーをやるにあたって一番不安だったのが、何よりも集客だった。Yumiについて言えばheaven in her armsとスプリットをリリースしているとは言え、それも結構前の話だし、多分日本ではそんなに流通してなかったと思う。そして何よりKowloon Ghost Syndicate自体がツアー3ヶ月前にデビューライブをやったばかりという見切り発車にもほどがある状態で知名度がない。なのでフライヤーを配るだけでなく、ツアー直前に週一くらいFBで定期的にYumiのメンバー一人ずつインタビューを公開したり、ツアーに出演する日本のバンドの紹介文をしっかり書いたりなどのプロモーションは積極的に行なった。それがどのくらい集客に結びついたかはわからないけど、アクセス数はよかったし、紹介文を書いたバンドのメンバーからはいい風に言ってもらえて嬉しかったかな。長いツアーだとなかなか書くの大変そうだけど、今後ツアーをやるならそういうアプローチもあるといいのかもと思う。
来日直前にアルバムが出たのはいいんだけど、直前過ぎて日本のレコ屋には入って来なかったし、物販で売ろうとレーベルから送ってもらったのがうまくいかず、結局受け取れたのはツアー終了後だったのは大きな反省点。そして収支としては圧倒的に赤字です。元より黒字を見込める計画ではなかったけど、それでもある程度はYumiに還元したい気持ちはあった。
ともあれYumiのメンバーには日本ツアーをする事で「夢が叶った」と非常に喜んでもらえたので、その点については本当によかったと思います。僕らももちろんすごく楽しかったし。
Yumi bandcamp
Yumi Taiwan Tour 2014
3LA : 激情シーンと、いうのは、もはや存在しているのか存在していないのかわかりませんが、現行シーンに対して新鮮味がないと感じていますか?海外のバンドも来日ラッシュで珍しいものではなくなってきました。
笠沼:どうだろう。何をもって激情ハードコアシーンとするかわからないけど、自分でやっていることはどれも新鮮味を感じながらチャレンジしているつもりだし、ライブを見に行ってつまらなければ以後そのバンドは見に行かないだけのことだし、っていうくらいにしか考えてないかな。シーンというか音楽的には近くなくても、価値観の近い人たちで集まって何か始めるとそこになんとなく統一感が生まれて面白く感じられるんじゃないかと思う。
やっぱり普段のライブっていつも友だちが見に来てくれて、それはとても嬉しいことなんだけど、新しい人たちにも知ってもらわないといけないなとは強く思っていて。先日アルゼンチンのBoom Boom Kidの日本ツアーにおいて僕らも彼らのライブを企画して、DeepslauterとYour Pest Bandに出てもらったんだけど、多分どのバンドもどちらかと言うとアウェイ的な状況でのライブだったと思う。でもどのバンドもかっこよく、最後のBoom Boom Kidも素晴らしいライブをやっていて、見に来た人たちの楽しそうな表情がすごく印象的だった。あの雰囲気はとにかく最高だった。あれはシーンに頼って出来上がったものではなくて各バンドが当日に作り上げていったものが最後に結実したんだと思う。
そういう切磋琢磨する状況の中で強い印象を残せるものをやっていきたいと思っています。
パンク界のマラドーナ、アルゼンチンパンクシーンの カリスマ的存在『Boom Boom Kid』が5年ぶりの来日! 10/30 より日本全国をツアー開始!
DeepSlauter — Rip Off PV
Your Pest Band — Dice PV
3LA : .kowloonの今後の活動予定についても教えてください。
笠沼:’16年もすでにライブ予定がいくつか決まっているのと、春にレコーディングする予定です。リリースしたらまたどこかツアーにでも行けたらいいなと思っています。かっこいい曲を作って見る人に衝撃を与えるようなライブをやりたいし、とは言え僕らはまだ始まったばかりのバンドなので、地道に少しずつ積み上げていきたいと思っています。メンバーそれぞれバンドやって長いですが、それでもまだまだ発見があるなと。
(続く)
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