観覧車 カワグチタケシ
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リンパのようにはりめぐらされた
首都の地下の冷えたレール
そのところどころが表皮をかすめ
夜になると光る花を咲かせる
昇ってしまえばあとは降りるだけ
観覧車は僕らをどこにも
連れていってはくれない
それでも僕らは切符の列に並ぶ
透明なアクリル板にあけられた
小さな穴から
上空の冷えた大気が流れ込む
首都の灯火は眠らずに
ふたりの記憶にまたたきつづける
海の上にだけ闇が訪れる
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三月、春霞を見おろして
僕らを乗せたゴンドラは熱を帯びる
孔雀の檻のとなりに
ジャングルジムが見える
四月、冷たい風が花びらを散らせる
雨に濡れた新緑を朝日が照らし
パイプオルガンの讃美歌が
薄く開いた窓から入ってくる
五月、雨の古都
雨音は竪琴
壁画をめぐる夜の小旅行
六月、忘れられた季節
何もない空
誰もいない街
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遠い時間の果てに流れるロンド
花火よりも高く
海鳴りよりも低く
葉ずれよりもかすかに
鼻声のひとも
飴細工職人も
真っ赤なフードをかぶった少女も
同じリズムでまわる
海辺のガラスドームで
観覧車を見上げて
恋人たちはパンを食べている
昇ってしまえばあとは降りるだけ
観覧車は僕らを
もといた場所に連れもどす
詩の朗読会 3K14 10月22日 江古田 詳しくはこちら
究極Q太郎、カワグチタケシ、小森岳史、三人のKによる詩の朗読会、3Kの開催が決定。2022年10月22日、江古田フライングティーポットにて。
(チラシのもとになったこの観覧車の写真は、カワグチさん撮影のものです。Instagramに掲載しています。)