整理回収機構と三宮一貫楼⑩
木曜は仕事(三宮一貫楼)ネタ
↑のつづきです。
最長シリーズになりました。
今しばらくお付き合いください。
酔いに任せて腹にある不満を全てぶちまけた私に畑社長が口を開きます。
「そら~感心しませんなぁ。」
お調子者の畑社長が初めて見せる神妙な面持ち。
「ところで部長、何歳になりました?」
「28です。」
「若いなぁ。羨ましい。」
今の私が若い世代によく思うことですね(笑)
畑社長が続けます。
「部長にとってはただのお父さん、お母さんかもしれへんけど、社長と専務のお話は、僕らみたいな者からしたらお金払ってでもお話を聞きたい経営者ですよ。それは何となくお分かりになります?」
そこは内心認めたくないとは思いつつも正直に。
「それはちゃんと分かってます。」
「そやろ?あんだけ肚の座った人らはそうそうおりませんよ。それを無料で聞ける部長が羨ましいわ。」
「・・・・・。」
「それとね。思ってる正反対を言われるってことやけど。こう考えたらどないやろ?」
ここから畑社長が核心を突く助言をしてくれます。
「部長は今ここ神戸におって、博多に行きたいと考えてるとするやないですか?」
私が深くうなずくのを見て畑社長は続けます。
「で、親父さんは金沢に行け!って言うんでしょ?」
そうそう!の意味をこめて「うんうん」と早いテンポでうなずきます。
「まぁ、反対ですわね。けどな部長、まだまだ若いんやから金沢もええ所やねんから、金沢のええ所を知った上で博多行ったらよろしいやん。きっとそれでもまだ僕より若いって。」
理屈ではめちゃめちゃ理解できるお話しです。
しかし、この時はまだ母との諍いで傷心を引きずっていた私は、「う~~~ん」のような空気を出していたように思います。
ここからも畑社長のファインプレーは続きます。
おそらく理屈では理解してるやろうけど、
こいつは行動に移されへんやろうと判断されたんでしょう。
「部長、日本酒は飲みますか?」
「はぁ。多少なら。(この時は今ほど飲兵衛ではなかった)」
「今日ね。北海道の鮭ハラスでええのが入ったんですわ。それな、明日の昼にうちの若い衆に店に持って行かせるから、それで親父さんと日本酒いっしょに飲み。
軽く塩して炙ったら最高のアテになるから。」
「それは、まぁ、すみません。」
翌日昼、その鮭ハラスが本当に手元に届きました。
これで実際に先代と飲まなければならない環境が整ってしまいました。
その日の仕事終わりにブルーなオーラを全身に纏った私は実家の玄関前に立ちすくんでいました。
実家の玄関はカギをかけることがあまりなかったので、意を決した私はノックもせずにそのまま居間まで上がり、それを認めた先代は一言。
「な、なんや!?なんか用か?」
数日前の母と私のやり取りを聞いていることが容易に想像できる不信に満ちた声で訪ねてきます。
「畑さんがええ肴が入ったから、これで親父と酒飲めって言われたから来た。」
とポツリと答えると。
「ハンっ」と鼻を鳴らし苦笑気味に、
「ほな座れや。」
と、自分の正面の席を指さしました。
「そしたら台所使うわな。鮭炙らなあかんから。」
「おう、ええで。」
畑社長の言うとおりハラスを炙っている間の私の思考。
「何しゃべったらええんやろ~???(涙)」
さて私は何をしゃべったのでしょうか?
また長くなりそうなので、本日はここまで。
(つづく)
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