過去作『桜』


冬枯れの枝をかくしてまっ白に過剰にけぶる満開のサクラ

冬を睡り春の寝覚めの枯れ桜いま見し夢をうつし咲くらむ

たましいの声いのち血を吐き絶叫す桜の意思ただ花を咲かさむ

満開の桜にはただ花しかない葉もない100%の切実

春の夜の夢はかなくもただ咲いて咲くさくらの悲壮を嫌悪す

咲き狂うさくらの姿せつなくて理不尽に怒るは吾が焦るか

春の世の桜に先を越されりと吾覚ゆ吾青春にありける

冬を過ぎ春こそ暑きものなめれ梅に蚊柱宵桜に蝉

春暑し鼠吾が部屋の隅に死し日々かげろふとなりてたち昇りゆく

往生し鼠ゆっくりとたち昇る人は火葬にて手早く済ます

葉桜の初夏は来にけり青空に色やはらかく花散る里に


過去作をnoteへ移していこうと思います。
公開するというよりは、訳あってバックアップのために。

『桜』おそらく2000年の作。(1999年かもしれない)
生まれて初めて作った短歌です。
連作です。
どういうわけか、短歌とはそういうものだと思い込んでいた節があり、この頃に発表した短歌はみんな10首前後の連作になっていました。
もちろん短歌のことなど何もわからず、ただただ、こういうものだ、という思い込みで作っています。
なぜ、短歌って面白い、自分でも作ってみたい、と思ったのか、誰の何を読んでそう感じたのか、今となっては思い出せません。若い日の私は、いったいどんな短歌と出会っていたのだろう。

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