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ezolife
忘年怪異 #毎週ショートショートnote
「恒例の忘年会だが、今年は私の山荘で行います」。部長が切り出すと、営業部内はざわついた。「部長の山荘って遠いよな…」「今年は部長の手料理か…」
やがて忘年会の日がやってきた。営業部員たちが山荘に到着すると、部長が汗まみれであらわれた。
「さあ、どうぞ」促された先にはバーベキューセット。酒も大量にあった。
部長が口火を切った。「遠くまでありがとう。三ヶ月程前に大物を仕留めたのでね。今日まで熟成しておいたんだ。じっくり味わってください」
そこで部員たちは、忘年会には欠かせないある人物の不在を思った。「専務が失踪してもう三ヶ月か…」よく太って脂ぎった専務。今どこでなにをしているのだろう。「部長とは反りが合わなかったよな。部長もやりやすくなっただろ」「滅多な事を口にするもんじゃないよ」…
大皿には香辛料を効かせ脂ののった肉がたっぷり。部員たちは酒と共に見る間に平らげていった。その様子を眺め、部長は満足げに目を細めていた。
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たらはかに様の企画に参加させていただきます。