フシギドライバー #毎週ショートショートnote
助手席の相棒は表を確認して言った。「次の届け先は公園ですね。そこで少年に手渡します」
公園に到着すると、5歳ぐらいの男の子が砂場で遊んでいる。俺が近寄ると、少年は真っ直ぐな視線を向けてきた。
「ボク、この箱をあげる」
少年は受け取るとすぐにフタをあけた。出てきたものは木の枝で、先端に楕円形の膨らみが付いている。するとそれは見る間にムクムクと膨らみ、真ん中から少しずつ裂け始め、やがて美しい模様が見え始めた。次に膨らみがはじけるように割れ、模様は徐々に広がり大きな黒い羽根となった。そして七色の模様が入った美しい羽根を持つ蝶が誕生した。
少年は身じろぎもせずその様子を眺めていた。その瞳には強い光が宿ったように見える。
俺たちは一部始終を確認し、静かにその場を離れた。
「いい仕事しましたね。だからこの仕事はやめられないんですよ」俺たちはセンスオブワンダー社のフシギドライバー。明日も「生命のフシギ」を子ども達に届けるのだ。
(410文字)
たらはかに様の企画に参加させていただきます。
今回のお題も苦しみました。まとめ方が少々気に入りません。