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ぴえん充電器 (バレエショートショート)

 愛野藍の先生のご主人は発明家だ。名前は奨励さん。彼は今日も新作を藍たちにすすめる。

「これはいいぞ」

「…本当ですか?」

「疑うな。いいか、これはぴえん充電器というもので腕につけて過ごす。哀しい感情を関知するたびに充電してくれる。いざというときにはもっと哀しくなれる」

「…なんのためですか?」

「ジゼル、ライモンダ、ニキヤの役で舞台に立つときにもっと哀しくなれる」

 藍はにべもなく断った。

「そんな機械に頼らずに踊る。そのためのレッスンです」

 奨励さんは食い下がる。

「観客を感動させるのは並大抵ではない。レッスンは誰でもやれるからこそ、この機械をだな」

 そこへ怖い顔をした先生が現れ、奨励さんの腕にぴえん充電器を巻いた。

「あなた。まずは自分で使いなさいって言ったでしょ」

 先生は奨励さんに平手打ちを百回したあと、充電器をはずし、今度は首に巻いてスイッチを押す。

「うわあん」

 

奨励さんは藍たちのレッスンが終わってもまだ泣いている。


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画像は奨励さんのイメージです。

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