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【読書メモ #49】武器としての図で考える経営
仕事をしていると意思決定を誰かにしてもらわなきゃならない場面が必ず出てくる。
それが上司であったり、クライアントであったり、社長だったり時と場合によって様々だ。
そして、その意思決定を促すために資料を作成する必要がある。そんな時に武器となるのが図で考える、図で示すことだ。
今回紹介する書籍は、「武器としての図で考える経営」だ。
著者は、経営コンサルタント、事業会社の企画部門として働き、現在は大学院の教授とのこと。
本書では、経営戦略など大上段の課題から、組織体制、リーダーシップなど、比較的小規模な論点まで、「図で考える」方法を具体例を交えながら教えてくれる。
わたしが特に興味を持った、勉強になったのは大きく下記の2点だ。
1. コミュニケーションツールとしての図
言われてみれば当たり前かもしれないが、図というのは、どのようなバックグラウンドであっても、ある程度共通理解を持てる表現方法である。
例えば、弁護士など資格が必須であり、一定の水準のバックグラウンドが担保されている組織では、文章のみでも共通認識を持つことが可能である。
けれども、多くのビジネスパーソンはバックグラウンドが異なる。学歴はもちろん地域も国籍も職歴も異なることがほとんどだ。
なので、文章よりも図の方が関係者の共通認識を持ちやすく、同じ理解度で議論しやすくなるのだ。
もちろん、大切なことは誰もが誤解しないように文章で残すべきだと考えているが、幅広いメンバーで議論を行いたい、意見が欲しいといった場合には、図で考える方が適しているだろう。
2.図で描けばイメージを形として動かせるようになる
図で考えることの本質は、抽象化した形を好きに動かせることなんだと思う。
ビジネス書でよく見るフレームワークなどは、図で描くことを断片的に取り扱っているのに過ぎない。
マトリクスによる整理や、矢羽でつなぐ、環となるように配置し直すなどは、「概念を抽象化して、形を好きに動かす」ということを断片的に切り取ったに過ぎない。
本書では、さらっと下記の一文で示されているだけだが、書籍内で示される多種多様な図解は、「概念を抽象化して、形を好きに動かす」ことの本質が詰まっていると思う。
図のメリットの1つは、考えを図に描くとイメージをいじりやすくなり、発想が豊かになる点です。
よく見られるおでん図や、四象限の整理を、三次元的に表現した図解などは、実務で使いたいと思わされるものだった。
(整理に時間かかるし、アウトプットとしては説明がかなり必要になるので、あくまで関係者間の議論用の資料になると思うが…)
一方で、
・概念化すること
・形として扱えるようにすること
・図として整理し直すこと
は、それぞれ訓練しないと身につけられないものだとも考えている。
そして、これはできる人は最初からできるし、できない人はできないものと思われがちなスキルだと、経験上感じている。
俗にいう頭の回転が早い人、仕事ができる人と言われているのは、このスキルを持っている人だと思う。
向き・不向きはあるかもしれないが、これらのスキルは生成AIには代替されにくいスキルだと思っている。概念化すること、そしてそれをイメージとして動かす・組み合わせることは、まさに人間が得意な領域だろう。
意思決定をする、判断してもらう立場にいる人には必須のスキルだと思う。
おわりに
本書は図で考えることの本質(「概念を抽象化して、形を好きに動かす」)を理解するのに、とても役立つ書籍だと思う。
企画部門、コンサルタントだけでなく、意思決定をする、判断してもらう立場にいる人には、ぜひ読んでいただきたい書籍だった。
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