#87 悲嘆の涙のマスカレード
こちらの世界に戻った翌日、
朝早くにコツコツと窓を叩く音で目が覚めた。
あぁ、Oliviaがフクロウを送ってくれたんだ…
そう思って体を起こしたとき、
それはおかしいと気が付いた。
Oliviaは昨日、遅くまで仕事をしていて
今日中には送る、という話だった。
仮に昨晩送れたとしても
一晩で着くはずがない。
恐る恐るカーテンを開けてみると
外側の窓枠を何かがガチャガチャと音を立てて
歩きながら小包をぶら下げていた。
窓を開けて覗き込んでみると
そこにいたのはとても大きなカラスだった。
驚いて身を引いた窓の縁に
そのカラスはバサバサと無理やり留まり
小包を差し出しながら
大きくカァー!と鳴いた。
「え…あ、もしかして…
Gerard(ジェラルド)のカラス…?」
GerardはOliviaの同級生で
闇の魔法に詳しく、
Oliviaからは近付かないように警告されていた。
Gerardのカラスのギャリーは
催促するように小包をユラユラさせた。
「あ、それを私に?
でも、なんでここがわかったの?
あの人には教えてないし、
Oliviaが教えるとも思えないし…」
ギャリーは、脚から紐が解けた瞬間、
バサバサとその場を離れて
すぐに見えなくなった。
私は、
あっという間の出来事に呆気にとられた。
少ししてから手にした小包に気が付き
慎重に開け始めた。
包みの中には二つの小箱と
羊皮紙が一枚入っていた。
私は「仮面」と書かれた箱をそっと開けた。
そこにはキラキラと輝くストーンが
散りばめられた小さな仮面が入っていた。
青と紫を基調とした装飾が美しく、
見る角度によって
鮮やかな青や深みのある紫など
様々に移ろっていった。
仮面には涙のような雫がゆらゆらとついていて
ゴシック調で少し悲し気な雰囲気を纏っていた。
私はその仮面を箱に入れたまま
じっくりと眺めながら
危ない代物ではないかと訝っていた。
しかし、その装飾は美しい以外に
闇を感じる要素は見当たらず
手紙の続きを読み進めた。
これが悲嘆の涙のマスカレードを
見た時のおはなし。
続きはまた次回に。
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