3 count...のM.
3 count...(3カウント)は、不思議なあちらの世界から仕入れた魔法や不思議な雑貨を使うハンドメイド雑貨屋さん。 minneギャラリーで販売中。 ここでは、アクセサリーになる雑貨の仕入れ先、不思議なあちらの世界について、あちらの世界での色んな出会い、あちらの世界の不思議な雑貨についてのおはなしを少しずつ更新予定です。 ※使用の風景写真は自身で撮ったものですが、あくまでイメージです。 twitter(@3count_m)、Instagram(@3count_m)で製作の様子なども公開してます。
「ねぇ、そのマダム…なんとかさんのお店では どんな準備するの?」 「全部だよ。ドレスも靴もバッグも メイクもヘアセットも全部。 女の子のドレスコーディネイトで 彼女に勝る人は、僕の知る限りはいないよ。」 「そんなにすごい人なんだ…。 でも、ドレスとかって結構高いよね? 私、そんな持って来てないんだけど。」 「そのことなら心配しないで。 僕が無理に誘ったんだ。僕に任せて。」 Gerardがサッとドアを開けてくれた店は シックなアイアンブラックを基調とした レンガ造りの外
先程よりも 少し音が大人しくなったシンクの食器たちを うまく操りながら、Oliviaはため息をついた。 「Olivia、何か、やりたいこととかできたの? ココを離れるの?」 「実はね… まだ決まったわけじゃないんだけど、 この前、Cedric(セドリック)が言ってたんだけど… 彼、海底研究所に異動になるかもしれないの。 深海よりももっと深い、海の底よ。 あそこは気軽に行き来ができないから、 もしかしたら私もそこに… まだ、何も決まってないんだけどね。」 「そうなの!?
私は、もう一つの箱を開けた。 そこには【悲嘆の涙のマスカレード】と 似た装飾が施された扇が入っていた。 あちこちからストーンがキラキラと輝き 鮮やかな青や深みのある紫など 様々に移ろう様子も同じだった。 縁にあしらわれた黒いレースや 繊細な模様もゴシック調で ステンドグラスのような 透き通る紫や青が悲し気な雰囲気を纏っていた。 勝手に約束を決められてしまったが 土曜日はもともとOliviaに会いに行く予定だった。 その時にこの 【悲嘆の涙のマスカレード】と 【悲嘆の
こちらの世界に戻った翌日、 朝早くにコツコツと窓を叩く音で目が覚めた。 あぁ、Oliviaがフクロウを送ってくれたんだ… そう思って体を起こしたとき、 それはおかしいと気が付いた。 Oliviaは昨日、遅くまで仕事をしていて 今日中には送る、という話だった。 仮に昨晩送れたとしても 一晩で着くはずがない。 恐る恐るカーテンを開けてみると 外側の窓枠を何かがガチャガチャと音を立てて 歩きながら小包をぶら下げていた。 窓を開けて覗き込んでみると そこにいたのはとても大き
「どっちにしても、私が学校に一緒に行くのは ちょっと良くないんじゃない?」 「そんなことないよ。みんな自由に来るもん。」 「そうなんだ。じゃぁ、今度お邪魔してみようかな。」 Sophiaは それを聞いて嬉しそうにニッコリと笑顔になった。 「そういえば、今までに 森の女神様の棲む場所に行った人はいるの?」 「いるよ! 真っ白の樹や蔦が絡んんでいる建物があって、 建物の中は朝も夜もずっと明るくて 女神様の長い髪には葉がたくさん付いていて とっても美しいんだって。」 「
しばらくフクロウ便でOliviaと文通をした後 やっとしっかりと時間を取れる日がやってきた。 カラスが騒がしく鳴く中で Oliviaが送ってくれたフクロウに預けた 最後の手紙には、週末に行くと書いておいた。 季節はもう真夏だった。 私は、またあの鍵で”あちらの世界”へ行った。 Oliviaのいる街もカラッと晴れて暑かった。 Oliviaのカフェに向かうと ちょうどティータイムで賑わっていた。 邪魔してはいけないと思い、 私はまた先に妖精のSophiaに会いに行こう
Oliviaが送ってくれたフクロウは 予想通り翌日に届いた。 私は前回やったように 水を用意して、フクロウを部屋に迎え入れ 休ませた。 M.ちゃん 私、外出禁止令が解かれたわ! 早く会いに来て!! 実は、前回怒られてからも 色々やらかしちゃって どんどん外出禁止期間が延ばされちゃってたの。 でも、パパも意地になってるだけだと思うけど。 普段はちょっと説教されるくらいなのに 脅し文句みたいに言うのよ。 Oliviaは、繰り返し外出を禁止されたようだが 反省をしている
「あぁ、おかえり。 氷の王国は楽しかったかい?」 Gregoryがテーブルの食器を片付けながら 私達に声をかけた。 「うん!ただいま! 私、食器洗うね。M.ちゃんはそこに座って。」 Oliviaはカウンターの中に入り シンクの目の前にある席を指して言った。 シンクでは 洗剤の付いたスポンジとグラスやお皿が そこに見えない誰かがいるかのように 宙で洗われていた。 スポンジで擦られた泡だらけの食器たちは 意思を持ったように 水の出ている蛇口に向かい、 最後にOlivia
しばらく王冠を眺めた後、 私達は大広間から広間に出た。 屋外の風はとても冷たく、 徐々に体が冷えていくのがわかった。 「随分寒くなってきたわね… そろそろ帰りましょうか。」 Oliviaのかけてくれた 空気の膜を作る魔法だけでは 耐えられない寒さになりつつあった。 私達は、また氷の王国の祝祭の街を眺めながら 早足で扉へ向かい、Oliviaの街に戻った。 すっかり暗くなった街で カフェに向かって歩いていると カフェの前の広場で Oliviaは誰かに気が付いた。 「あ
氷の配達馬車が購入できる窓口は とても混雑していたが 氷の馬車を持っている人は少なかった。 そのほとんどが子供で 嬉しそうに手にしていた。 「ねぇ、これ、みんな馬車を買う人達なの?」 「う~ん。こんなに多くないはず… 欲しがるのはほとんど子供たちだし。」 列になれないほどの人の中で やっと窓口に辿り着いた。 ネイビーに銀の装飾品の付いた、 郵便局員の分厚い制服を着た 恰幅のいい女性の窓口だった。 「はい、こんばんは。 お嬢さんたち2人かい?2つだね?」 流れるよ
すっかり陽が落ちた街の扉の前で Oliviaは鍵を取り出した。 「あ、そうだ!忘れるとこだった。」 Oliviaは自分の頭の頂点に杖をトンと当て、 次に私の頭にも同じようにした。 体の周りで何かふわりと空気の流れを感じた。 「これでOK。」 そう言いながら鍵を挿して扉を開いた。 氷の王国は、以前来た時の どんよりとした殺風景な白っぽい景色とは 全く雰囲気が違った。 青や水色、白を中心としたライトが 様々な大きな氷のオブジェや建物、装飾を 幻想的に浮かび上がらせてい
いくつか綺麗な状態で落ちた ファータの実を拾ったとき 陽がかなり傾いていることに気付いた。 「そろそろ街へ戻らなきゃ。」 「えぇ?もう帰っちゃうの?」 「うん…。でも、また絶対来るよ。 Sophiaに会いに。」 Sophiaの寂しそうな顔が嬉しそうな笑顔に変わった。 「さっきお花摘んでたとこまで一緒に行こ。」 私達は出会った場所まで戻った。 扉のある、精霊の宿る樹までの道は かなり薄暗くなっていた。 「この道を辿れば扉まで行けるよ。」 「ありがとう。」 「ま
「あ、そうそう!この樹の実はね、 すっごくおいしいんだよ! Fataは世界の何よりも美味しい実を作ったの! あっちの方にいくつかなってるはず…」 Sophiaはファータの樹の一帯の 奥の方へ進んでいった。 私は樹を観察しながら ゆっくりSophiaの後を追った。 「あった!こっちこっち!!」 Sophiaの声のする方へ行ってみると その近くの樹には実がいくつかなっていた。 華の中心部と同じような とても不思議な色の実で 中はとても瑞々しかった。 まるで炭酸ジュース
「そうだ! M.ちゃん、Fata(ファータ)の樹はもう見た?」 花冠を3つ、腕輪を4つほど作り終えた時に Sophia(ソフィア)が言った。 「ファータの樹? 扉のある、精霊の宿る樹じゃなくて?」 「ううん、違う。 ファータの樹には綺麗なお花と実がなるよ!」 「そうなの?見てみたい!」 「連れてってあげる!来て!」 私は小走りのSophiaについて行った。 道のようなモノはもう何もない ただ丈の短い草が生えているだけの地面だった。 たくさんの木の根や軽い凹凸に
「あら、こんにちは!」 少女は立ち上がって私に笑いかけた。 「あ…こんにちは…」 私は少女の会話の相手を探すように 辺りを注意深く見ながら挨拶を返した。 「どうしたの?」 「えっと…今、1人で話してたの? 誰かと会話してるみたいに聞こえて 少し驚いてしまって…」 「そこのミツバチさんとお話ししてたの。」 少女が指差す先の花の近くで ミツバチが一匹ゆらゆらと飛んでいた。 「ミツバチ…と話してた? 話せるの?えっと…」 「私はSophia(ソフィア)。 うん、話せる
鍵を手に取った私は 前回深海都市への扉の鍵を買ったときのことを 思い出した。 深海へ行く準備を全くしていない状態で 何も考えずに扉へ向かおうとしていた。 鍵屋に声をかけられ、 薬のことを教えられなかったら 扉をくぐった瞬間、どうなっていただろう。 「あの…精霊の宿る樹の辺りは 何か行く前に準備するものとかありますか?」 「あぁ、前回は 深海にそのまま行くとこでしたもんね。 でも、大丈夫。 精霊の宿る樹の辺りはそのままで大丈夫ですよ。」 「よかった。ありがとうございま