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夢の話
最近、夢を見ていないような気がする。
いや、覚えてないだけか?
昔は覚えていられたんだけどね。
ずっと前、10代の頃。
同じ夢を3年間くらい見続けた事がある。
そこは白い世界で建物も何もかも真っ白。
まるでゲームのダンジョンのよう。
私はそこに空から落とされる。
私だけが居る世界。音もない。
だけど、追ってくる(影)が居ることだけはわかる。
「逃げなくては」
そう感じた私は、その(影)からただひたすら逃げる。
建物の間をただ走って逃げる。ひたすら逃げる。
だけど最後は絶対に(影)に捕まり、仰向けに倒されて、私に馬乗りになった(影)に刺されそうになって目が覚める。
そんな夢を何度も繰り返し見ていた。
「気味悪いな」
そう思う反面、毎回バットエンドで終わる夢に、私は少し腹を立てていた。
ある日、同じ夢に落とされた私は、少し冷静になって、いつもと違う経路で逃げてみた。
それでも捕まる。
「まだ何か足りないの?」
また次も、そのまた次も、夢を見るたびに逃げる経路を変えながら走った。
「絶対に次は逃げ切ってやる」
毎回思った。
同じ夢を見始めてから3年が経つ頃、その日はやってきた。
その頃には、どこをどう曲がったら捕まるか、どのタイミングか全部把握していた。
だから、その日夢を見る前にシミュレーションしてから眠りについた。
白い世界に落とされ、いつもと同じに追ってくる(影)をかわした。
そして出口であろう場所が見えた。
出口は輝いていた。
私は出口に向かって走った。
そして、私はやっと白いダンジョンからも(影)からも解放された。
白い世界をぬけたその先は、もっと白い、本当に何も無い世界だった。
そして私は目が覚めた。
解放されたあと、同じ夢は見ていない。
あの世界は何だったのか、(影)は何だったのか、夢の世界で何で自分の意思で結果を変えられたのかもわからない。
今思えば、あれは“明晰夢”ってやっだったのか。
ただ、年月が経っても、あの光景だけは目に焼き付いている。
解放された世界は、本当に真っ白だったから。
でも、あの光景をまた見たいとは思わない。
世界はもっと、色鮮やかが良いから。
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