見出し画像

たべものコンサル日記R35:後を継いだら「何も変えるな!」はどう考えても無茶ぶり!<後継者の悩みと状況を解説>

 ある老舗の和菓子店の売上アップのご相談の支援で伺った時のお話です。
後継者候補の息子さんが会話の中で私に言いました。

ご両親から「跡を継いだら、何も変えずに経営してくれ!」と言われたと。
この言葉を聞いて、私は、

●単に売上アップの対策で解決できることではない と悟りました。

●後期高齢者(75歳以上)のご両親(代表者と役員)と後継者候補(30代)
 の事業承継の話し合いと問題店の解決を抜きにしては、
 何も手が打てないと思うに至りました。


<後期高齢者 経営者ご夫婦の想い>
1,わが社は江戸時代末期から百数十年続く由緒ある老舗という自負と
  プライドがあります。
  だから「このまま変えずに維持してほしい」の考えが根強くあります。

2,高齢の限界まで頑張ってきたから、あとはわが子に託したいという
  気持ちがあります。

3,間違った経営はしていないという想いが強いのです。
  しかし、お店は赤字経営になってきていました。

<後継者候補の想い>
1,両親が年齢の限界まで経営してきて「もうできない」から一転して、
  跡継ぎ候補に仕立てられたが、
  まだ経営者レベルのことは教わっていないことも多いし、
  先行きが非常に不安に思っている。
  
2,それでも、前向きに、和菓子の製造ノウハウの引継ぎや、
  お店の収益改善のために何が必要か考えてきた。
  自分なりに努力はしている。

3,お店の収益改善を行おうとすると、
  両親から言われた「何も変えるな」が鉄壁の障壁になっていることに
  気づき、悩みの種になってきた。

<コンサルの見解>
1,ご両親のご希望の「何も変えるな!」というはがい締めの呪文を解除
  してもらって、関係者間での話し合いにより、

  必ず受け継いでほしいこと(会社の存続・会社の業種業態の維持)と
  時代対応で変えてもいいことを仕分けすることが必要と思います。

  ご両親にとって、一番大切なことをきちんと守る代わりに、
  経営を安定させるために必要なことは、変えてもいいと励ましの意見を
  親御さんから後継者に言うべきと思います。

  赤字解消のためには、多くの売上高を必要としますので、
  変えるべきところは変えなくては「改善」「改革」になりません。


2,受け継いでほしいことを守るためには、赤字経営を黒字経営に変える
  必要があります。

  このご両親には、「なぜまじめに経営してきたのに赤字なのか?」を
  考えてもらわないと、折り合いのつく話ではないと思います。

  *現経営者の反省なくしては協調や妥協はしにくいと思います。
  

  (赤字の原因と考えられるもの)

  ●常連客・得意先だけを最大限大切に守り、新規の顧客開拓を怠った
   業種的に対象客は「中高齢男女(特に女性)」と推察されますが、
   その顧客の減少に応じて、減少分を補う「新規顧客の獲得」、
   すなわち、
   SNSなどを通じて若い女性客の獲得を始めるべきだったと
   思われます。

  ●WEBからの情報とは無縁な高齢者経営で、世の中の変化もニーズも
   スルーした経営を続けてきたために顧客層が減少した
   高齢経営者の方の事業承継には、「限界まで経営」「時代の変化に
   無関心・無反応」という共通点があります。

   ・経営者の感覚だけを中心にマネジメントすると失敗しやすい
    (*これは消費者目線でのダメ押しのチェックが入らないから)

  ●ほとんどの零細企業経営者の方は「予測経営」をしない弱点がある
   大学入試でも調理師試験でも、合格するためには、「傾向と対策」を
   テキストなどで勉強します。

   先行きの見えない飲食業・たべもの業であれば、
   予測を立てることが経営の安全・安心につながります。

   先の予測を立てる→良い予測であれば強力に進める
           →悪い予測であれば、「改善対策」を作って実行!

3,この会社も事業承継アクションをもっと早く行うべき1社でした。
     経営後期や末期でも事業承継という考えが全くない経営を
  してきたために、
  後継者候補が「経営者能力が未熟」のまま事業承継する
  ことになります。
  
  承継後に倒産してしまえば、
  親が残した借金をすべて後継者が背負うことになります。
  結果が出て後悔してももう遅いということになります。

   親の経営者にしても、
   事業承継は「ぶっつけ本番」なので未経験者同士の引継ぎ作業です。

   ですから、
   コンサルなどのサポート役がいないとなかなかうまくゆきません。



ありのまま一つの例を投稿しました。
本当は身近にいっぱいあることと思います。

コンサルに限らず、
着手から解決まで、さらには後継者が引き継いでのち数年間は、
第3者のサポート役がいると、事業承継が安全に進むと思います。


(了)
   

   
   

  

飲食コンサルタント業30年の経験を通じてお知らせしたいこと、感じたこと、知っていること、専門的なことを投稿しています。 ご覧になった方のヒントになったり、少しでも元気を感じて今日一日幸せに過ごせたらいいなと思います!よろしければサポート・サークル参加よろしくお願いします